研究課題/領域番号 |
22K03815
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中野 人志 近畿大学, 理工学部, 教授 (20257968)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | レーザピーニング / 空間光位相変調 / SLM / マルチ集光 / 圧縮残留応力 / 空間光変調 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では空間光変調レーザ光を用いて金属の深層レーザピーニング処理に挑戦する。レーザ光を空間的に分割してマルチビーム化し、マルチ集光スポットでのレーザピーニングを実施する。衝撃波源の大きさをビーム分割数で制御することにより、深層レーザピーニングに必要な条件を実験的に明らかにする。また、レーザ照射前金属材料の残留応力分布等を熱処理によって制御し、金属の多様な状態とレーザピーニング処理深さとの関係をも調べる。
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研究実績の概要 |
本研究では空間光位相変調レーザ光を用いた金属の深層レーザピーニング処理実現を目的としている。レーザ光を空間的に分割してマルチビーム化し、マルチ集光スポット照射でのレーザピーニングを実現する。 2022年度はレーザ照射光学系の光学設計、光学配置確定を中心に研究活動を行った。結果として、マルチ集光スポットレーザ照射が可能な光学配置を設計・確定し、光学系を組み、種々の実験パラメータに対応可能な実験システムを構築した。 空間位相変調器(SLM)を高い変調能で動作させるには消光比の高い直線偏光が必要となる。また、SLMはパルスレーザ使用においては、レーザ損傷しきい値が低いので、単位面積当たりのレーザ強度を低くして動作させる必要がある。そのため、複数枚の偏光子およびビーム径を拡大するための光学系を光路に導入した。その際、ターゲット材料への集光光学系も含めた光軸調整技術の確立が課題となった。CCDカメラによるレーザビーム近視野像および遠視野像モニターを設置し、光軸調整技術を確立した。 半導体レーザ光をプローブ光として、マルチ集光ビームの発生を確認した。集光スポット間隔、スポット径の測定が行えるように別途モニターを設置して、多様なパラメータ変化に対応できる環境を整えた。 集光スポット数が4、集光スポット間隔40 um、集光径100 umのマルチビームを形成させ、ステンレス鋼(SUS316L)に対してレーザピーニング処理を試行した。レーザピーニング効果の指標として、ビッカス表面硬さならびに圧縮残留応力値を採用した。表面硬度、圧縮残留応力の評価結果はシングル集光スポット照射と比べて著しい変化を示さなかった。2023年度以降、種々の集光条件でレーザピーニング処理実験を行い、深層レーザピーニングに適切なパラメータを考察していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主に空間位相変調器(SLM)をレーザシステムに導入して光学配置を確定すること、多数回のレーザピーニング処理を可能とするために光軸調整技術を確立すること、マルチ集光スポットでのレーザピーニング実験を開始することを主目的とした。概ね、順調に進展している。 先ず、光学配置の確定を行った。レーザー発振器と集光光学系を直線配置した後、部分反射ミラーでレーザ光を取り出し、SLMの光路を確保した。SLMの変調効率を向上させるには直線偏光における消光比の向上およびレーザ損傷を避けるためのビーム径拡大が必須となる。光学系にビームエクスパンダー、偏光子をそれぞれ導入した。また、ビームセンタリングおよびポインティングモニターを設置することによって、光学調整手法を確立し、マルチ集光スポットでのレーザピーニング処理実験が可能な光学系を実現した。 衝撃波が発生する程度の高密度プラズマを形成させるにはGW/cm2オーダのレーザ集光強度が必要である。レーザピーニング処理に十分なレーザ強度が保たれた状態でのSLMの安定動作を確認した。 集光スポット数が4、集光スポット間隔40 um、集光径100 umのマルチビームを形成させ、ステンレス鋼(SUS316L)に対してレーザピーニング処理を試行した。表面硬度ならびに圧縮残留応力の測定結果はシングル集光スポット照射と比べて著しい変化を示さなかった。2023年度以降、集光スポット数、スポット間隔、レーザエネルギー、重ね打ち率、Fナンバー等、レーザピーニングに関わるパラメータを多様に変化させ、レーザピーニング処理実験を行い、深層レーザピーニングに適切なパラメータを考察する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にマルチ集光スポットでのレーザピーニング実験が可能な光学系を確立し、試行実験も終了した。2023年度以降は、当初の計画通り、種々の実験パラメータにおけるレーザピーニング処理実験、ストレスゲージによるレーザ誘起衝撃圧力の測定、高速度カメラによる衝撃波源の大きさ測定を進めていく。 2022年度に実施した4つの集光スポット数、スポット間隔40 umにおけるレーザピーニング処理実験では単一集光の場合と比べてレーザピーニングの効果に著しい変化が観られないことが判った。2023年度以降においては空間位相変調器(SLM)によって集光スポット数、スポット間隔を任意に変化させ、深層レーザピーニングに望ましい条件を見出していく。 液体をプラズマ閉じ込め層としたレーザピーニングではプラズマ閉じ込めに起因した衝撃波とキャビテーションバブル崩壊に伴う衝撃波の2通りの圧力波が発生する。SLMで制御された様々な集光パターン(集光スポット数、集光間隔、集光形状等)でのレーザピーニング実験において、ピエゾストレスゲージを用いて、レーザ誘起衝撃波の圧力を測定する。衝撃波圧力の大きさと集光条件との相関関係を実験的に明らかにした後、表面硬度および圧縮残留応力値を測定する。また、高速度カメラを用いてプラズマ閉じ込め層内に発生するキャビテーションバブルの大きさ、崩壊時間をも測定する。これらの結果をレーザパラメータ(レーザエネルギー、重ね打ち率、Fナンバー等)設定にフィードバックし、多数回のレーザピーニング処理実験を継続して行い、圧縮残留応力層の深層化に適した条件を考察する。 また、試料を真空電気炉内で熱処理(アニーリング)し、初期硬度、残留応力を制御してレーザピーニング処理を行う。金属の多様な状態と圧縮残留応力深さとの関係について考察する。
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