研究課題/領域番号 |
22K03819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
豊川 秀訓 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 放射光利用研究基盤センター, 特別嘱託研究職員 (60344397)
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研究分担者 |
鈴木 賢治 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (30154537)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | X線応力測定 / 2次元検出器 / 溶接配管残留応力 / 二重露光法 / 応力測定 / X線回折 |
研究開始時の研究の概要 |
耐熱合金の融点を超える燃焼温度はセラミックスの遮熱コーティングにより実現されているが,信頼性や強度に直接関わる基本問題は,トップコート,ボンドコートおよび基材の線膨張係数の差に起因する熱ひずみであり,非定常熱応力のその場測定による評価,解析法の実現が課題となっている.本研究では,X線画像検出器と回転スリットを利用することで,測定時間を高速化することでこの問題を解決する.コーティング層の熱サイクル過程での実応力の変化・経路の動的変化の測定を世界で初めて実現し,最重要課題であるトップコートの熱サイクル損傷によるはく離のメカニズムを解明し,より信頼性の高い材料の実現を目指す.
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研究実績の概要 |
高エネルギーX線に適したCdTeピクセル検出器と二重露光法に適用することで,これまで困難とされていた粗大粒・溶接金属の残留応力測定に挑戦すること技術的問題が解決できた.沸騰水型原子炉と異なり,応力腐食割れが発生しないと思われていた加圧水型原子炉の加圧スプレイラインに応力腐食割れが発生した.この小口径突合せ溶接配管においては,これまでシミュレーションにより溶接残留応力を解析してきたが,残留応力を測定されていない.ことから,令和5年度は本研究における測定手法をそれに適用することを試みた.その結果,溶接材においては,粗大粒による回折斑点,溶接の熱応力による塑性変形からの回折環および溶接金属の集合組織からの回折が混在した回折パターンとなる.この複雑な回折パターンに対して関数近似を適用することは,場合によっては無理もあり,測定精度に直接影響していた.その解決方法について検討した結果,不規則かつ複雑な回折波形を解析的に取り扱うことをしないで,P1とP2で得られた回折曲線の一致を統計的手法で求めることを試みた.具体的にはP1とP2の回折曲線の相互相関アルゴリズムを用いて回折角度を決定することを試みたところ,非常に良い結果を得た.本方法を用いることで,溶接配管の残留応力を測定することに目処がついた.さらに,中性子回折と放射光による二重露光法を組み合わせて,三軸応力状態の残留応力を評価することも可能となった. 相互相関アルゴリズムを用いた回折角度を決定は,遮熱コーティングに使用される正方晶ジルコニアのように回折波形が複雑な回折環に対しても利用できるので,今後の研究に活かしたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで溶接材の複雑な回折像から回折ピークを決める方法が確立つしておらず,測定精度の大きな課題であった.本年度の研究によりこの課題を相互相関アルゴリズムにより解決したことは大きな成果であることから判断した. また,二重露光法による応力評価法が相互相関アルゴリズムにより精度と効率が飛躍的に改善されたことで,コーテイング膜の応力評価にも役立っている.
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今後の研究の推進方策 |
二重露光法とCdTeピクセル検出器を組み合わせ,溶接残留応力の測定することはほぼ確立した.二重露光法を遮熱コーティングに適用する予備測定から,より優れたコーティング膜の残留応力評価の可能性が見えてきた.初年度に実施したsin自乗Ψ法よりも高速で内面の応力を評価できる方法を提案する.すなわち,コーティング材の界面に沿って透過ビームを入射し,二重露光法で測定することで,コーテイング材の膜深さ方向の材料分布や残留応力分布を計測することに挑戦する.本方法が達成できれば,複合膜や界面の分析と残留応力などの新たな評価方法として期待できる. さらに,コーテイング膜の回折が斑点状を呈する場合は,研究実績の概要の最後で述べたように,コーティング面内の材料および残留応力の分布なども解析できる可能性がある.そして,それを面内から深さ方向にも走査すれば,コーテイング膜の3次元のマップを作成できる. また,経年劣化などの現象による材料の評価にも利用できることから,前述の手法を高温酸化させたコーティング膜に適用し,コーティング膜の高温酸化による残留応力の挙動を捉えることにも挑戦する.
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