研究課題/領域番号 |
22K03832
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 達也 同志社大学, 理工学部, 教授 (70434678)
|
研究分担者 |
宮本 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (10298698)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 超微細結晶材料 / 銅合金 / 強ひずみ加工 / 強度 / 短距離秩序 / 転位密度 / 延性 / 局部延性 / 超微細結晶粒材料 / 加工性 / 加工硬化 |
研究開始時の研究の概要 |
強ひずみ加工法により形成した超微細結晶粒組織は一般粗粒材とは異なる。転位が粒界で形成・消滅する粒界誘起塑性が考えられている。これに起因して、変形中は転位密度の増加や転位組織の発展など組織変化が小さく、そのため加工硬化能が低い。したがって引張試験では変形早期にくびれが生じて全伸びが低い。一方、くびれ発生後の局部延性は粗粒材に比べて高くなる場合が多く、活性な非平衡粒界による近傍の応力緩和によりボイド形成が抑制されたためと考えられる。これまで延性は加工硬化による全域的なひずみ分配能を高めることが重視されてきた。本研究ではUFG材料の特異な変形挙動により本質的に持つであろう局部延性に着目した。
|
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きECAP加工における結晶組織の変化に及ぼすMn添加の影響を調査した。 昨年度は、Mnの量が増加するにつれて、硬度と引張強度が増加した。特にMn含有量の高い試料では、ECAPの限界である8パス後も加工硬化が継続した。銅へのMn添加は積層欠陥エネルギーを変化させないため、微細化の効果は固溶体効果(剛性率効果)によると考えられる。一方、Cu中のMnは短距離秩序(SRO)を形成することが知られているため、その点についても確認する必要がある。そこで、Cu-Mn合金の微細化と機械的性質に及ぼす短距離秩序(SRO)の形成の影響を調べた.使用した試験片はCu-10%Mnである.試験片は時効処理したものとしていないものを用意した.SROの形成を目的に543Kで48時間時効処理したCu-Mnについては、熱処理後に水冷した.それらの試料に圧延加工を施し,それぞれ圧延率0%,20%,40%,60%に加工した.これらの試料について,ビッカース硬さ試験,引張試験を行った.ビッカース硬さに関しては時効処理無し,時効処理有りともに圧延率の増加に伴いビッカース硬さも増加していることを確認した.引張試験では,各圧延率で比較すると0%,20%ではほとんど違いが見られないものの,圧延率40%では時効処理有りの試料の方が時効処理無しの試料より引張強さが2.5%,圧延率60%では時効処理有りの試料の方が時効処理無しの試料より引張強さが4.1%増加した.加工硬化率の変化では,圧延率40%と圧延率60%の時効処理有りのCu-MnではステージⅡからステージⅢへの移行が遅れていることが明らかになった. SROの形成が圧延後の加工組織において動的回復が遅れ転位の蓄積を促進したことが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅へのMn添加は他のAlやZnなど他の合金元素に比べて、積層欠陥エネルギーの変化が小さい。ECAPによる微細化に及ぼすMn添加の効果はAlに比べて小さいが、高ひずみ域(高パス数)においても持続傾向があることが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
ECAP加工による微細化に及ぼすMn添加の影響は固溶体効果(原子サイズ効果と剛性率効果)と短距離秩序の形成による効果の二つ可能性から検討する。短距離秩序の形成は積層欠陥の減少と同様に転位の交差すべりを抑制するため、動的回復の抑制と微細化促進の効果があると考えられる。引続き、時効処理による短距離秩序を形成させるとともに、電子顕微鏡による回折現象や機械的性質からその形成を確認していく。そのうえでSROの形成が結晶粒微細化に及ぼす影響を明らかにする。
|