研究課題/領域番号 |
22K03843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐竹 うらら 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70828409)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 軟質材料 / 切断加工 / 生体組織 |
研究開始時の研究の概要 |
生体軟組織のような柔軟物の切断では,刃が押し込まれてから切断が開始するまでに切断対象が大きく変形する.しかし脳や心臓の手術における血管壁や硬膜の切断では,それら組織が押しつぶされて変形すると,挫滅や菲薄化といった問題が起こる.そのため,これら生体軟組織の切断では,いかに変形させずに切断するかが重要な課題である.本研究では,柔軟物の切断理論の基礎となる“切断の開始しやすさ”の決定機序を解明し,生体軟組織の切断において,組織に生じる変形を抑制可能なメスの開発を行う.
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研究実績の概要 |
外科手術で行われる生体軟組織の切断は,特に脳神経外科や心臓血管外科の手術においては非常に重要な操作であるが,生体軟組織は非常に変形しやすいため,切断の際,刃が押し込まれてから切断が開始するまでに押しつぶされて大きく変形する.そのため,生体軟組織の切断では,いかに変形させずに切断するかが重要な課題である.本研究は,切断理論の基礎となる “切断の開始しやすさ”の決定機序を解明し,切断開始までの変形を抑制することを目的とする. 昨年度は,“切断の開始しやすさ”の決定機序を解明するうえで不可欠となる,刃先直下の引張応力に対する“切断対象表面の追従挙動”の影響を明らかにし,刃先形状,刃厚,刃の進入角度,切断対象に加える把持力といった各種切断条件が追従挙動に対して及ぼす影響を明らかにした.今年度は,刃と切断対象の接触面における摩擦状態,切断対象に対して刃を動かす方向,およびそれらの相互作用に着目し,それらが及ぼす影響について検討した.応力解析によりそれらが刃先周辺の応力分布に及ぼす影響を調べるとともに,切断実験により,実際に切断開始に要する押し込み量に及ぼす影響を調べた.また,これまでに,追従挙動を実験的に評価するための手法として高速度カメラを用いたものを構築しているが,刃と切断対象の接触面のうち,刃先直下により近い範囲を詳細に評価するため,新たに,押し込み試験を模擬した評価装置を製作した.応力解析,切断実験,および押し込み試験による追従挙動の評価により得られた結果を,微小変形を想定した弾性接触理論にもとづき考察することで,微小変形の想定が成り立たないという柔軟物の切断加工がもつ特徴が,追従挙動および応力分布にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
切断の開始しやすさの決定機序に関して,当初着目していた刃先形状よりも,刃表面の摩擦係数や刃を動かす方向が強い影響をもつという重要な知見が得られ,刃先直下の引張応力を効果的に高められるメスの開発に向けた指針獲得をさらに進めることができたため.また,刃の具体的な設計にも着手することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られている知見にもとづき刃の具体的な設計をさらに進め,設計した刃を用いた切断実験および押し込み試験による追従挙動の評価を行うことにより,効果を検証する.また,刃の動かし方が及ぼす影響についてさらなる検討を行い,切断開始までの変形を抑制するために効果的な刃の動かし方(刃先の軌道)の設計指針を獲得し,それを具現化するデバイスの製作と効果の検証を行う.設計した刃と刃先軌道を組み合わせることで,切断開始までの変形抑制を目指す.
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