研究課題/領域番号 |
22K03854
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
三木 寛之 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (80325943)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 粉末プロセス / 材料設計 / 表面・界面物性 / 構造・機能材料 / 機械材料・材料力学 |
研究開始時の研究の概要 |
工業製品の製造工程における省資源・省エネルギー化の需要が年々増加しているが、材料生産には性能と品質を確保するための複雑なプロセスが必須であるため、単純な効率化は期待できない。この課題に対し、本研究では常温から300℃程度の中温域で塑性変形させた粉末原料を溶解せずに接合(固相接合)することによって、金属粉末原料から固化成形体(純金属、合金ならびに複合材料)を作製することが可能な材料プロセス(圧縮せん断法)について技術開発を行う。
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研究実績の概要 |
粉末冶金法に代表される金属粉末を原料にして目的形状へ成形する手法は、素材の無駄を生じないことから、製造工程の省エネルギー化に向けた有効な造形プロセスとして注目されている。本研究ではこの手法を構造材や機械部品の製造に適用するための試みとして、圧縮せん断法による多軸応力を利用した新たな粉末成形手法の確立を目指している。金属素粉末を摩擦固相接合する圧縮せん断法は、原料となる金属粉末を高温で溶融することなく固相状態のままで成形する手法であり、素粉末を原料とした合金材料成形や異材コーティング、三次元構造造形を可能とする技術要素である。成形プロセスは金型板間に粉末を充填し圧縮力を加えながら金型をせん断方向に移動させる単純なものであるが、粒子が互いに強く擦れ合うことにより塑性変形した原料粉末が接合(摩擦固相接合)し、微細な結晶粒を有する薄板が作製される。ここでは、純金属あるいは合金の標準的な機械的特性(硬度、強度)と同等あるいはそれ以上の特性を示す材料を粉末から直接成形する手法を開発するとともに、実用的な構造部材や機構部品に適用を目的として、混合素粉末の合金化、添加物や化合物の分散(強化)、複合化などの材料特性の向上に取り組む。研究初年度は加熱可能な金型を用いた温間成形手法で純金属の固化成形を行い,成形温度による成形性や成形体の材料特性の変化から、粒子間に形成される酸化物の量と分散性に加えて、せん断変形量の違いによって生じる粒子間接合状態の差異と機械的特性の相関について明らかにした。研究2年度には粒子の接合性を他の塑性加工技術と比較するために、塑性流動の導入手法として押出成形技術を用いる試みを行った。その結果、融点以下のアルミニウム粉末押出成形プロセスにおいて、従来手法に比べて約4倍の板厚となる1㎜厚の成形に成功し、多段階成形と厚みのある成形体作製への可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は常温から300℃程度の中温域で塑性変形させた粉末材料を固相接合することによって、純金属粉末原料から合金ならびに複合材料を作製することが可能となる材料プロセス(圧縮せん断法)の開発に関する研究である。具体的には、混合素粉末の合金化、添加物や化合物の分散(強化)、複合化についてその技術的な可能性を明らかにして、純金属あるいは合金の標準的な機械的特性(硬度、強度)と同等あるいはそれ以上の特性を示す材料を粉末から直接成形する手法の確立を目指している。本研究では純金属ならびに複合(混合)粉末について、室温-300℃の温度条件下で圧縮せん断法による粉末の固化を行い、成型条件と成形材の微細構造分析によって、成形材の機械的特性を向上する条件を見出すとともに、異種金属粉末を用いた加工による素粉末の直接合金化を試みる。初年度には、①圧縮せん断用温間金型を用いた試料作製、②加熱温度と材料(微細)組織の関係性評価(成形条件および固化条件の定量化、粒子間の変形、接合挙動モデルの検討)を実施し、金型を200℃-300℃程度に加熱し粉末成形することによる有効性と成形条件による材料特性の違いを明らかにするとともに、常温での成形が困難な金属種においても加熱等の手法でせん断ひずみを有効に導入することで固化成形が可能となることを示した。また、機械的特性に影響を与える加熱成形条件から粒子間接合のモデルの特性パラメータを得ることが出来た。研究2年度には研究内容を継続するともに、固化プロセスの異なる成形体について③微細組織観察による粒子間接合と原子の拡散状態への導入ひずみの状態と加熱の影響を調査した。その結果、ある種の粉末押出加工プロセスを用いることで粉末の流動状態を変化させることに成功し、せん断塑性変形による金属微細組織材の厚み方向制御が可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度~2年度の研究実施により、先行研究や関連する研究によって示されていた成形時加熱の有効性を確認し、安定した成形が可能な制御条件ならびに導入ひずみと微細組織形成の相関について見出すことができた。成形性は加工条件と明らかな相関があり、粉末の流動特性や成形プロセスの温度依存性を調べることで、塑性変形を伴う粒子接合における最適な温度やせん断応力との相関を明らかにすることができる。今後は初年度~2年度の研究内容を継続し、①異種材料間での原子の拡散状態の調査(電子顕微鏡観察,元素分析,構造解析)、②金型の改良、および複合材料・合金試料作製、③微細組織観察による粒子間接合と原子の拡散状態への加熱の影響調査に加えて、④温度を含む加工パラメータによる多軸応力成形あるいは多段階成形による粒子間の接合状態の変化、温度と付加する応力の両者を変化させた各種試験片について組織観察、組成分析および構造解析を行うことで加熱や圧力が界面原子の拡散に与える影響を明らかにし、粉末固化の現象論モデルを検討する。
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