研究課題/領域番号 |
22K03858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
平尾 篤利 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70455111)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 放電加工 / 超音波振動 / 深穴加工 / 超音波アクチュエータ / 高アスペクト |
研究開始時の研究の概要 |
放電加工法は,数+μmの極間で加工が進行する。高アスペクト比(L/D5以上)加工は,狭い極間が長く伸びているため加工屑の排出が難しくなる。加工屑は,製品の形状精度を悪化させる。本研究では,高アスペクト比の加工において工具電極を多自由度に形状制御することで能動的に加工雰囲気(極間雰囲気)の改善を目的とする。本研究では,2つ以上の振動モードを複合して励起される多自由度超音波振動を工具電極に対して適用する。工具電極を多自由度超音波アクチュエータとして動作させることで,高アスペクト比領域の加工雰囲気を改善し,超音波振動が加工特性・形状精度へおよぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は,工具電極に対して超音波振動を援用することで放電加工特性の向上を目的としている。放電加工は,加工の進行によって工具電極が消耗する。金型製造に広く利用されている放電加工において,電極消耗率の改善が大きな課題となっている。これまで,超音波振動を工具電極に付与することで電極消耗率が改善した研究が報告されている。そこで,超音波振動の援用が高アスペクト比の深穴放電加工特性に与える影響を調査する。深穴とは,一般的に穴径に対して加工部の長さが5倍を超える穴(アスペクト比(L/D ≧ 5))と定義する。ここでは,次の2つ内容について実施した。 (1)放電加工における超音波振動の援用が電極消耗へ与える影響:電極消耗率は,被加工物と工具電極との加工量の比率である。超音波振動援用の有無によって,パルス幅と電極消耗率の関係を調査する。 (2)電極速度が気泡および加工屑挙動におよぼす影響の観察:これまで研究成果によって,電極速度が速いほど加工効率の向上が報告されている。これは,電極速度が速いほど気泡および加工屑の排出が促進したものと考えられる。そこで,電極速度が気泡および加工屑の排出におよぼす影響を直接観察によって考察する。また,工具電極に超音波振動を援用した際,その振幅と電極速度のどちらが気泡の排出に大きく影響しているのかを確認する。電極速度 V とは,工具電極の縦振動する平均速さとしている。V は,次式から算出する。V = a×f [μm/s] a:工具電極の振幅[μm],f:振動周波数[kHz]
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,多自由度超音波アクチュエータ工具電極を用いることで,高アスペクト比の深穴加工を実現することである。本年度,超音波振動を工具電極に援用することで,電極消耗率を調査した。超音波振動を援用しない場合,パルス幅が大きくなると,電極消耗率は小さくなる。超音波振動を援用した場合,パルス幅が大きくなると,電極消耗率は小さくなる。また,超音波振動を援用した方が,電極消耗率は小さいことが確認された。 また,超音波振動を工具電極に援用した際,電極速度と加工特性の関係を調査した。これまでの結果から,電極速度が加工速度に与える影響は大きいことが確認されている。そこで,同一電極速度時に,異なる周波数と振幅の条件が加工速度におよぼす影響について調査した。周波数37 [kHz],振幅4 [μm]および8 [μm]の電極速度148[mm/s],296[mm/s]を基準とした。他の条件として,周波数49 [kHz]および67 [kHz]を用いたため,それぞれ電極速度148[mm/s],296[mm/s]にするための振幅を用いた。加工速度は,超音波振動を付与した時の電極速度が速いほど向上した。同一周波数の条件において,加工速度は振幅が大きくなるほど向上した。同一振幅の条件において,加工速度は周波数が大きくなるほど向上した。周波数および電極の振幅の条件が違う場合においても電極速度が同じであれば加工速度に大きな違いはなかった。表面粗さは,電極速度における大きな影響はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
一般的な放電加工法を用いた深穴加工は,パイプ電極を用い,パイプ穴から噴流を流すことで極間の介在物を排出している。しかし,微細穴となれば,市販のパイプ電極が存在しないため噴流を流すことができない。本研究は,多自由度超音波アクチュエータ工具電極を用いることで,極間雰囲気の改善を狙っている。これまで,工具電極に対して超音波振動を付与することで,極間に滞留する気泡および加工屑が効果的に排出されることが確認された。そこで,新たに工具電極に付与する振動を制御することで,極間に介在する気泡および加工屑を直接排出する方法を検討する。これまでの結果から,超音波振動を工具電極に援用することで,加工屑および気泡の排出に効果が得られることが分かっている。そこで,超音波振動を工具電極に対して援用したシミュレーションを構築することで,極間の流体解析を実施する。極間の加工液,気泡および加工屑が,超音波振動の援用によってどのような動きをしているのかを調査する。最終的に,複合振動形の振動シミュレーションを実施し,加工屑および気泡の排出効率のよい振動モード,振動変位を考案する。また,観察システムを用い,シミュレーション結果と加工液,気泡および加工屑の動きとを比較することで,その有効性を検証する。
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