研究課題/領域番号 |
22K03865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
神 雅彦 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (80265371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 超音波振動 / 摩擦 / 切削 / 研磨 / 搬送 |
研究開始時の研究の概要 |
超精密加工および微小部品搬送に関する分野において,それぞれ,微細な切りくずによる加工面損傷,および部品同士や搬送機への付着が問題となっている.本研究では,その課題解決のために,要因となっている微小摩擦現象を正確に測定し,その摩擦を防止したり制御する手法を提案する. 摩擦の測定および防止や制御の手法として,切削面や搬送界面に超音波振動を導入することを試みる.摩擦測定においては,超音波振動を利用して微小摩擦特有の液架橋力などの各種微小力を同定する.摩擦の制御に関しては,超音波振動により,摩擦を精密にリアルタイムに制御する技術を開発する.
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研究実績の概要 |
超精密加工および微小部品搬送に関する分野において,それぞれ,微細な切りくずによる加工面損傷,および部品同士や搬送機への付着が問題となっている.本研究では,その課題解決のために,要因となっている微小摩擦現象を正確に測定し,その摩擦を防止したり制御したりする手法を提案する. 摩擦の測定および防止や制御の手法として,切削面や搬送界面に超音波振動を導入する.摩擦の測定においては,超音波振動を利用して微小摩擦特有の液架橋力などの各種微小力を同定する.摩擦の制御に関しては,超音波振動により,摩擦を精密にリアルタイムに制御する技術を開発する. 研究初年度の実績として,実験装置の構築に関しては,摺動面には直径80mmのものを設計,製作した.超音波振動数は20kHzとし,振幅は0.05~0.2μmの範囲とした.微小な試験片には,最大のもので重量1.4g(1.0×0.5×0.5mm),最小のもので重量0.022g(0.25×0.125×0.125mm)のセラミックコンデンサーのチップを使用した. 研究成果に関しては,はじめに,通常の条件において,実験した最大の試験片では最大静止摩擦係数が0.41であったものが,最小の試験片では,それが0.96に上昇することを確認した.つぎに,摩擦面に超音波振動を導入することで,試験片の大きさに係わらず,摩擦係数が0.1以下に低減することを明らかにした. 当年度の研究により,第一に,微小試験片においては,重力以外の付着力が摩擦係数に大きく影響していることを同定することができた.第二に,摺動面に振幅50nm程度の微小な超音波振動を導入することで,付着力の影響をキャンセルすることができ,物体の大きさにかかわらず一定の摩擦係数とすることが可能となることがわかった.すなわち,超音波振動の振幅を調整することで,摩擦係数をリアルタイムにコントロールすることができる可能性を明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の構築に関しては,摺動面が振動数20kHzで超音波振動する装置の構築を進めた.その結果,摺動面直径が80mmで,その振幅は0.05~0.2μmの範囲で制御できる装置を設計・製作することができた.実験装置の設計・製作にあたっては,直径80mmの摺動面全面が一様な振幅で振動するする必要がある.その方策として,摺動面となる超音波振動ホーン形状を鼓型に設計した.鼓型の円弧の大きさはFEMシミュレーションによる試行錯誤により最良の円弧形状を得ることができた.一方,研究準備段階として,高周波数型の超音波発振器の導入を進めた,仕様を検討し周波数250kHz~500kHzの超音波発振器を導入した.並行して高周波数超音波振動を発生することができる超音波振動子および摺動面の設計を進めた. 実験に供する微小な試験片の選定を進めた.実験精度を高めるためには,大きさと重量が揃っていて,表面状態が一定の試験片が望ましい.その条件を満たすものとしてセラミックコンデンサーの基体(電極塗布前のもの)を利用することとした. 実験においては,はじめに,通常条件下で最大の試験片において,最大静止摩擦係数0.41であるものが,最小の試験片では,それが0.96に上昇することを確認した.つぎに,摩擦面に超音波振動を導入することで,すべての試験片において摩擦係数が0.1以下に低減することを明らかにした.この実験結果より,微小試験片においては,重力以外の付着力が摩擦係数に大きく影響していることを同定することができた. 当年度における研究成果を総括すると,摺動面に振幅0.05μm程度の極微小な超音波振動を導入することで,微小物体時に発生する付着力の影響をキャンセルすることができ,物体の大きさにかかわらず一定の摩擦係数に制御することが可能になることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
研究二年度においては,超音波振動の振幅を制御することで,摩擦係数をほぼゼロ~0.1程度の範囲でリアルタイムにコントロールすることができることを明らかにする.この発見,および,それの利用技術に関する検討は本研究の根幹をなすものである.現象を実験によりとらえるとともに,理論解明をも進めていきたい. 超音波振動の摺動面への導入による摩擦係数の制御に関する研究では,超音波振動の周波数を高周波数化した場合の摩擦挙動に関して検討を進めていく.具体的には,研究初年度において準備した,周波数120kHzおよび250kHzの場合について検討を進める.周波数120kHzについては,既存の超音波発振器および振動子を利用することができる.一方,周波数250kHz以上では既存の超音波振動子が存在しないため超音波振動子の開発からスタートして,それぞれ超音波振動する摺動面を設計・製作し,摩擦挙動の違いについて調べて,超音波振動の周波数が摩擦特性に与える影響について明らかにする. 超精密加工における切りくず制御への応用に関する研究では,空中超音波を用いて,切りくずが超精密切削面に付着することを防止する技術を開発することを目指す.切りくず除去に関する従来技術は,エアブローやオイルミストによる方法が中心であるが,その方法では,切りくずと切削面間との静電気力や表面張力による再付着が問題となっている.それに対し本研究では,これまでに明らかにした超音波振動による付着力キャンセルの手法を応用することで従来の課題を解決することができるものと考える.実験装置の構築においては,無酸素銅およびNi-P合金の単結晶ダイヤモンド切削において空中強力超音波による切りくず付着防止に関する実験システムを目指す.
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