研究課題/領域番号 |
22K03875
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18030:設計工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 正行 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (60207917)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 太陽光発電 / 太陽熱発電 / 光学多層膜 / ヘリオスタット / 最適配置 / 組合せ最適化 / 輻射熱伝導解析 / 連成解析 / ハイブリッド / 輻射解析 / 遺伝的アルゴリズム / 配置最適化 / 太陽光 / 太陽熱 |
研究開始時の研究の概要 |
タワー集光型太陽熱発電において太陽光を高反射させるためのヘリオスタットの鏡を太陽光発電パネルに置き換え、太陽光と太陽熱の発電を同時に行うハイブリッド化を検討する。パネル表面に貼付した超多層フィルムにより指定波長域に応じて反射と透過を干渉効果により制御する。これにより短波長側による太陽光発電と、長波長側による熱エネルギー利用を実現する。超多層フィルム構造の設計と、多数台のヘリオスタッドの最適配置を同時に求める設計問題を組合せ最適化問題として定式化し、整数型遺伝子を扱う遺伝的アルゴリズムを適用することで最適解を求める。効率的な求解のための遺伝的オペレーターについて検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、太陽光発電と太陽熱発電のハイブリッド化を実現する装置を設計することと、最適配置問題とハイブリッド化のための多層フィルムの構造を求める組合せ最適化問題を効率よく解く手法を提案し、有効性を確認することを目的としている。 2023年度は、2022年度に影がヘリオスタットの配置に影響し、配置位置の解探索における収束性を改善する主要な因子であるという重要な知見が得られたことから、ヘリオスタットの影が後方のヘリオスタットにかかる影とヘリオスタットからタワーへ向かう反射光を別のヘリオスタットが遮るブロッキングの影の2種類の影の影響を目的関数に組み込んだ。影はヘリオスタットの受光量とタワー集光部の受光量それぞれに影響を与えるため、これら2つの目的に関する多目的最適化問題として定式化を行った。 この最適化問題を線形加重和法で解いた。ヘリオスタットの受光量を重視する場合とタワー集光部(レシーバー)の受光量を重視する場合に対してそれぞれ特徴的なヘリオスタット最適配置が得られ、目的関数の定式化が有効であることが確認できた。 また、本研究のハイブリッド化のための重要項目である光学多層膜の設計方法を改良し、より太陽光スペクトルの制御性能を高めることを目指した。パネル裏面に超多層フィルムを貼付して発電波長と太陽熱発電用の波長に分離して利用する実装を目的とした多層構造の設計を行った。入射角が大きい場合のスペクトル制御は困難であることが再確認でき、入射角の影響を強く受けるヘリオスタットにおける受光量とタワー集光部における受光量のトレードオフ関係から入射角範囲を最適化することを研究内容に追加する。 以上の得られた知見をまとめ、学会講演会にて5件の研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最適化パラメータ(ヘリオスタットの配置に関するパラメータ)に対する目的関数の感度を導出し、パラメータの解像度(パラメータは離散値としているためその刻み幅)を決定することで収束性と最適化の精度を向上させる計画であったが、次の理由で行わなかった。目的関数に影の影響を組み込み多目的化して最適化を実施したところ、収束性が向上し2種類の目的に対して特徴的な配置が得られることが分かったためである。 2024年度に実施予定であったタワー集光部における輻射・熱伝導解析を先行して進めた。太陽光のヘリオスタットにおける反射、スペクトル分離、タワー集光部への入射、輻射熱伝導、再輻射、多数枚の鏡からの反射光の分布に対する非定常熱伝導解析を熱物性値の波長依存性に基づいて連成して解析を行う一連の手順と数値モデルを構築した。数枚のヘリオスタットを配置して集光部の非定常温度分布を求め、解析の妥当性を確認する計算を実施できた。この後、実用レベルのヘリオスタット台数に対して連成解析に基づく輻射熱伝導解析を、2024年度の当初計画通り進めることができる見通しが得られた。 以上より、計画した内容はほぼ達成できており、2024年度の研究内容も先行して進めることができていることからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は2022年度、2023年度に得られた知見を活用して、以下の研究内容を推進する。 ・パレート解の導出 太陽熱受光量と太陽光受光量の最大化を目的とする2目的最適化問題を解きパレート解を導出して、施設全体の設計指針を得る。多目的最適化手法の一つであるNSGA-Ⅱを適用して、最適設計された超多層フィルムを貼付した太陽光パネルとレシーバーそれぞれにおける受光量を求め年間のエネルギーを計算することで、太陽エネルギーの利用効率を求める。 ・レシーバ部分の輻射熱伝導解析とレシーバー最適形状 太陽光スペクトルは波長ごとに強度が異なり、地上に到達しているスペクトルを用いた最適化が必要となる。また、ヘリオスタットのレシーバー部分では太陽光の輻射エネルギーを受け、熱伝導により溶融塩などの熱媒体に蓄熱するため、集光部分の形状や集光分布の平滑化を行うために輻射熱伝導解析を実施する。これにより、ハイブリッド発電施設全体で受けることができるエネルギーを見積もることができる数値モデルと一連の解析手順を構築する。
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