研究課題/領域番号 |
22K03881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
風間 俊治 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (20211154)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | バルブ / 温度 / 液体 / 物性値 / フルードパワー / 粘度 |
研究開始時の研究の概要 |
医薬品や電子部品の製造工程には、水や薬品、油や溶液が必然的に介在するために、液体の管路が構成される。その流れは多様なバルブで制御される。 バルブには流路を開閉する部分(弁体)が存在する。そこでは固体同士が擦れ合うために摩耗粉が生じる。これが液体の汚染ならびに装置の故障の要因となる。 本研究では、使用液体の相変化や粘度特性を利用して流れを制御する装置を考案し、試作と実験によりこれを検証しつつ、新たなバルブの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
我々の身の回りを見渡すと、多岐に亘り様々な配管が巡らされており、至るところに数々のバルブが使用されていることに気づく。バルブの主な機能は、流量、方向、圧力の制御といえる。それら諸量の調節は、流路の開閉や断面積変化により実現できる。その操作には、基本的に弁体の動作を要する。つまり、固体接触を伴う摺動部が形成されて、微少ながらも必然的に摩耗の発生を誘引する。液体の場合は、流路の縮流部において、しばしばキャビテーションが引き起こされる。前者に基因して摩耗粉が、後者に起因して壊食粉が生じる。摩耗粉や壊食粉が流体に混入すると、高精度装置内における液体汚染、隙間部への噛み込み、ひいては生産・製造ラインにおける漏れや故障をはじめとするトラブルの重大要因となる。根本的な対策案のひとつとしては、摺動する可動部を設けない、特殊な液体を用いない、固体の弁体を持たないとするアイデアが思いつく。本研究は、この新たな着想によるバルブの開発を目的としてスタートさせた。 研究内容のコアは、摺動部のない液体用制御弁を実現することにある。本取組みでは、流路を局所的に冷却・加熱することにより、条件によっては止水までをも含めて、流れを制御するバルブの開発を3年間で目指す計画を立案した。第1年度は、供試バルブの設計・製作、温度制御や流量計測法の構築、現象確認と予備実験などを計画し、実施した。試験装置を製作するに当たり、冷熱プレートとその制御装置およびセンサ類、ならびに各種部品の選定・手配等を行った。第2年度は、作動油と水道水を対象として、流速や圧力、液温や流路などをパラメータとした試行実験を重ね、課題や問題点を洗い出しつつ検証を深めた。第3年度は、更なる発展を目指しつつ、実験および理論的考察などを進め、本研究を総括する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度は、供試液体として作動油ならびに水道水の両液体を対象に、実験を中心に据えて進めた。供試バルブ、タンク、管路、調整バルブ、流量計、温度計、圧力計などにより構成した試作第1号機を活用しつつ、安全点検や確認試験などを十分に経た上で、予備実験により得られた、実施可能なヘッドや流量あるいは温度制御範囲などの条件に基づいて本実験を行った。その過程で、流路径ならびに流路形状の異なる3種類の供試バルブを用意して、実験パラメータに追加した。そこで得られたデータに基づき、水道水の場合は凝固による停止までの冷却時間および融解による再開までの加熱時間などの、作動油の場合は温度制御に基づく粘度変化による流量変化などの計測を重点的に実施した。なお、作動油と水道水の混合の影響を回避するために、液体が接する流路部分については、2組の同一形状・寸法の部品を用意することとした。その際、液体の混合の影響を受けない計測器類については、互いに転用することにより、経費の有効活用に努めた。 第2年度の主な成果としては、作動油を用いた実験ならびに水道水を用いた再実験を行ったこと、作動油ならびに水道水の両液体について、供試バルブの冷却と加熱の反復操作により流れの停止と流出の繰り返し実現したこと、これらの結果から弁体を有しない機構でOn/Offのバルブ作用を実現できることを実験的に確認した。
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今後の研究の推進方策 |
第1年度に、私家版の供試バルブに液体を流した予備実験において、バルブ本体の冷却と加熱により流れの減少や停止および増加や再開を確認することができた。なお、回路の設計や機材の選択に当たっては、簡易的な数理モデルや計算により仕様や寸法などを見積もった。 第2年度は、これを受けて、水道水および作動油を用いて本格的に実験を進めることにより、複数の液体に対するバルブ作用の有効性について吟味した。なお、水道水では氷点下で凝固する相変化の現象を利用した一方で、温度による粘度の変化が齎す流量の変化は明確に把握できなかった。対照的に、作動油では液相から固相への変化は望めない一方で、温度の低下に伴う粘度の増加に基づく流動抵抗の変化を見出した。これらの結果を得るためには、実験の条件や方法の再検討や試行錯誤を繰り返した。当然のことながら、両液体の混合は回避すべきことから、作動油用の試験装置は水道水用の装置とは分けることとした。個別に設計、試作するに当たっては、寸法や材料の変更を余儀なくされる可能性が示唆された。しかし、作動油用の回路の材料に水道水用の材料を採用することなどにより、基本的に同一材料、同一寸法で2回路を設計、製作した。なお、この方法により、液体の種類の差異が温度や流れの変化ならびにバルブの制御性や応答性に及ぼす影響の評価や効果の比較なども可能となった。 第3年度は、最終年度となるので、それまでに得られた実験結果を振り返り、新たな制御方式や検証パラメータなどをも模索しつつ、必要に応じて追実験を行い、試行実験の結果と理論的な考察等との比較を通して、実験と理論の両面からこの仮説を実証するとともに全体を総括する予定である。
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