研究課題/領域番号 |
22K03894
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加藤 寛敬 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30311020)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 巨大ひずみ / ナノグラデーション微細組織 / 摩擦加工 / 滑りバニシング / トライボロジー / ナノ微細組織 / 硬度分布 |
研究開始時の研究の概要 |
極めて大きな塑性ひずみを与えるバルクSPDにより作製可能となったバルクナノメタルは、合金元素に頼らずに高強度であるため次世代の構造材料として注目されている。一方、摩擦加工を受けた表面は、ひずみ勾配をもつ巨大塑性ひずみによりナノ組織が形成され、バルクSPDでは達成できない超微細化が可能である。本研究では、バルクSPDであるHPT加工と表面SPDであるSB加工を組み合わせるという斬新な手法で、バルクナノメタル母材に最適な硬度分布を持つナノグラデーション微細組織表層を生成させ、その表層の摩擦摩耗特性を評価することによりトライボロジー特性に優れた高機能表層を開発する。
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研究実績の概要 |
摩擦加工を受けた表面は、ひずみ勾配をもつ巨大塑性ひずみによりナノ組織が形成され、バルクSPDでは達成できない超微細化が可能である。すなわち、バルクSPDで作製したバルクナノメタルに、摩擦加工(滑りバニシング、SB加工)を行えば、母材から表面にかけて組織が変化したナノグラデーション微細組織が形成され、表面に近くなるほど硬度が上昇し耐摩耗性が飛躍的に向上すると予想される。しかしながら、この硬度分布が材料の摩耗特性に及ぼす影響については明らかにされていない。そこで本年度では、SB加工により生成した微細傾斜組織表層の摩耗の進行について検討した。 SB加工では、回転するS45Cディスク表面にSi3N4ボールをばね力で押し付けながら送りを与えて無潤滑下で加工を行った。摩耗試験は、SB加工した試験片を用いてボールオンディスク方式で行った。 その結果、SB加工の押し付け荷重が高いディスクほど表面硬さは高く、摩耗量は少なくなる傾向にあり、摩耗量は表面硬さの逆数と直線関係にあった。ボールオンディスク摩耗中断試験の未加工材と押し付け荷重100 Nのディスクでは、摩耗の進行が極めて大きい初期摩耗とその後摩耗の進行が緩やかになる定常摩耗がみられた。これは、接触面圧が摩耗の進行とともに低下したためと考えられる。一方、押し付け荷重500 Nのディスクでは、硬くて深い微細組織表層が生成されたため初期摩耗はみられなかった。しかし、試験時間10分で微細組織表層(HV400以上深さ27 μm)が摩耗して消滅してしまうと摩耗量が急増することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
滑りバニシング(SB加工)を行えば、母材から表面にかけて組織が変化したナノグラデーション微細組織が形成され、表面に近くなるほど硬度が上昇する硬度分布がその摩耗の進行に及ぼす影響について、ある程度明らかにすることができた。特に、微細組織表層の初期摩耗は極めて小さいが、摩耗深さがHV400以上深さを超えると摩耗量が急増し、未加工材と摩耗の進行が変わらなくなることを見出したことは大きな成果と言える。 一方、未加工材と100 Nのディスクは試験開始直後、摩耗痕断面積が急激に増加(初期摩耗)し、その後は緩やかに増加(定常摩耗)するというシビア-マイルド摩耗遷移が現れた。これは、接触面圧が摩耗の進行とともに変化したためと考えられ、摩耗が進行しても接触面圧が変化しない試験法を確立する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、ナノグラデーション微細組織表層の硬度分布が摩耗の進行を正確に評価するためには、摩耗が進行しても接触面圧が変化しない試験法を確立する必要がある。その方策として、摩耗試験における相手材形状を変化させることを考えている。具体的には、曲面を持つボールの代わりに平坦な接触面を持つピンを用いて試験を行う計画である。 さらに、SB加工条件を変化させることにより様々な硬度分布を持つ微細傾斜組織表層を作成し、種々の摩擦摩耗試験条件下でのそれらのトライボロジー特性を評価することにより、低摩擦低摩耗を達成する最適な硬度分布を見出し、それを実現する高機能微細傾斜組織表層を開発する。
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