研究課題/領域番号 |
22K03906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中井 唱 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80452548)
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研究分担者 |
後藤 知伸 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00260654)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 細菌 / 走化性 / べん毛 / 方向転換 / 誘引物質 / マイクロ流体 |
研究開始時の研究の概要 |
細菌は螺旋型のべん毛を回転させて泳ぎ、好ましい化学物質(誘引物質)を検知し遊泳方向を転換することで、誘引物質が高濃度の領域に集まる性質を持つ。本研究では走化性による細菌の集積度合の正確な予測を目指した計測および数値解析を行う。これまでの知見「誘引物質への応答は遊泳方向転換の頻度だけでなく、方向転換の角度にも表れる」「誘引物質や細菌の種類による走化性の違いの定量化」を基に、本研究では下記を実施する。 ①誘引物質濃度場の可視化および細菌による誘引物質の消費量の計測 ②細菌の遊泳方向転換の頻度および角度と誘引物質濃度勾配との関係調査 ③誘引物質の消費を考慮した細菌集積の数値計算および観察との比較
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研究実績の概要 |
A.周毛性細菌の走化性における方向転換角度分布の偏り 細菌は好ましい化学物質を検知し遊泳方向を変えることで、より高濃度の領域に集まる性質(走化性)を持つ。細菌はべん毛モーターを用いてらせん型のべん毛を回転させることで遊泳し、回転方向を切り替えることで方向転換を行うが、好ましい環境に近づくときにモーターの回転方向の切替頻度が低くなることが報告されている。菌体の周りに複数のべん毛を持つ周毛性細菌では、誘引物質に近づく時に遊泳方向転換の頻度が下がるだけではなく、方向転換角度が小さくなることが報告されており、様々な種類の周毛性細菌について、この事を調査した。大腸菌E.coli K12, サルモネラ菌S.typhimurium SJW1103どちらも、方向転換の頻度の低下および方向転換角度の現象が見られた。
B.誘引物質の濃度勾配による走化性の差異 誘引物質の濃度勾配により、細菌の走化性(誘引物質への集まり方)がどのように異なるかを調査した。上記A.の毛細管を用いた手法では、先端の内径は1μm程度(細菌サイズとほぼ同じ)であり、空間の1点から誘引物質が3次元的に拡散する濃度勾配が形成される。これに対し、寒天入りの誘引物質溶液を加熱して数μLガラス上に滴下して固めると、数mmサイズの壁状の誘引物質が、空間内を1方向に拡散する濃度勾配が形成される(agar-drop法)。agar-drop法では、「壁」のどこからでも誘引物質が拡散するので、濃度勾配は毛細管法に比べて非常に小さい。単毛性細菌V.alginolyticus YM4のL-セリンとL-アラニンに対する走化性を、上記2種類の方法で計測した。毛細管法ではセリンの方がアラニンより集まりやすかったが、agar-drop法ではアラニンの方が集まりやすい結果となり、誘引物質の種類によって細菌の感度が良い濃度域が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は2022-2024年度の3年間で下記①②③を実施する予定であった。 ①誘引物質濃度場の可視化および細菌による消費の計測/②細菌の遊泳方向転換の頻度および角度と誘引物質濃度勾配との関係調査:誘引物質存在下での細菌の方向転換頻度・角度を詳細に計測。誘引物質や細菌の種類を変え、挙動の違いを明らかにする。/③誘引物質の消費を考慮した細菌集積の数値計算および観察との比較:従来の数理モデルを基に、①②で得られた各条件での細菌の挙動から数理モデルを再構築し、細菌の集積具合を観察と比較する。
①については、誘引物質の染色についての情報収集中であり進捗は鈍いが、同一の誘引物質でも濃度場により走化性が大きく異なる事がわかり、今後の展望が見込まれる。②については着実にデータが集まっており、進捗は十分と言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず上記「研究実績の概要」A.に関する課題の解決を目指す。毛細管法、agar-drop法それぞれで濃度場を蛍光色素を用いて可視化し、濃度の絶対値と走化性との関係を調査する。合わせて継続中である誘引物質(アミノ酸)の蛍光染色にも挑戦する。また、当初の実施項目③については、関連する論文など、数理モデルの調査を開始する。
毛細管を用いた走化性計測(研究実績の概要の項目A)では、毛細管先端に1MのL-セリンを充填した実験を行ったが、毛細管先端付近での方向転換は少なく、先端から50μm離れた位置での方向転換が多く見られる結果となった。この事は、誘引物質の濃度勾配の大小によって細菌の走化性が異なることを示唆しており、L-セリンの濃度を変化させて計測を行う予定である。
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