研究課題/領域番号 |
22K03910
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 恭史 関西大学, システム理工学部, 教授 (90330175)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 流体工学 / 電気流体力学 / 境界要素法 / 積分公式 / 表面張力 / 微小スケール |
研究開始時の研究の概要 |
マイクロ流体素子というとても小さい寸法の装置が,いろいろな分野で利用されています.寸法が小さくなると,長さの3乗で影響するような重力や,長さの2乗で影響する圧力・粘性力より,長さ1乗で影響する表面張力が大事になります.さらに,液体表面が固体表面と接する状態となる場合には,表面張力の固体表面での作用である「濡れ性」を制御できるかどうかが,装置設計の重要な事項となります.また濡れ性は電圧を印加することで変化します.ただし,その電圧による濡れ性変化は電圧の大きい時には理論的に説明できていません.本研究は,固体を含む電気流体力学現象を再現するシミュレーターを構築し,電気流体力学現象の解明を目指します.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,界面を含む電気流体力学のための新しい数値解析手法を提案し,これまで経験的にしか扱われてこなかった現象について,モデルを用いない直接数値解析により,物理の解明を目的とする.具体的には,界面を含む混相流体の数値解析手法であるFront-tracking法と,電場解析に境界要素法を組み合わせることで,これまでにない高精度に界面近傍の電気力を表せる,数値解析手法を開発することである. 本研究で行うことの1つ目は,電場を境界要素法で扱うこと(Electric Boundary Element Method)と,混相流をFront-tracking法で扱うこと(Multiphase Front-tracking Method)を合体した,新しいシミュレーター(EBE-MFT simulator)の開発である. 初年度はこのオリジナルの電気流体力学シミュレーターの開発に注力した.境界要素法による解と発散定理による厚みの無い面での情報,それを流体計算に反映させる方法など,数学的・物理的に本質を表現し得る手法を検討し,コードを作成した.特に,境界要素法で必要な特異点を含む積分について,精度の悪い数値積分ではなく,発散定理などを利用して解析的に積分できる公式を導出し,高精度な計算を理論上可能にした. 混相流シミュレーターの改良のために,テイラー気泡のシミュレーションの検証,濡れモデルの検証,マランゴニ対流の検証,シャープな界面の取り扱いについて検証した. 開発したシミュレーターで電場中の液滴の挙動(理論解のあるシンプルな系)を計算し,液滴の形状変化の縦横比,内部循環流動などが再現できるかを検証した.残念ながら,理論と一致すべき点(液滴が真球形を保つ条件)が一致しておらず,数式とコードを再検証中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり,積分公式を自分で導出を行ったが,条件により符号が変化するかしないかなど,非常に難解な幾何学を含むため,数学的な思考に時間を要している. EBE-MFT simulatorの枠組みのほとんどは完成しているので,現時点で問題があると考えている部分が改善できれば,後は予定通り進むことが出来ると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
上述の積分公式の,数式とコードを見直し,理論と一致すべき点が一致するように改善する. 電場中の液滴の挙動について,さらに他者の実験や計算との比較を行い,本シミュレーターが電気流体力学現象の物理を再現できることを確認する. その次は,エレクトロウェッティング現象を,モデルを用いない数値解析により再現するため,開発されたシミュレーターに,絶縁層と電極で構成される固体層の表現を追加する.エレクトロウェッティング現象のシミュレーションを行い,低電圧時のヤング・リップマン式の再現,高電圧時のヤング・リップマン式の破綻,それらのメカニズムについての考察を目指す.
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