研究課題/領域番号 |
22K03911
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
江頭 竜 福岡工業大学, 工学部, 教授 (60455102)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | キャビテーション / 気泡 / 並進運動 / 非平衡蒸発 / 管内流れ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,高速の乱流水中で気泡核が水とは異なる速度で並進運動をしながら気泡壁面で非平衡蒸発が発生している状況で,気泡核がキャビテーション初生に至る機構と条件を理論・実験の両面から解明することを目的としている.理論では,乱流場で単一あるいは複数の気泡核の並進運動をラグランジュ的に追跡し,気泡力学のReyleigh-Plesset方程式(気泡成長の式)に多原子分子としての水-水蒸気系に対する気液境界条件に基づく非平衡蒸発速度の効果を組み入れる.並進運動は,直円管内の一次元層流,テーパ状の円管(拡大管あるいは縮小管)内の準一次元層流,さらに三次元乱流へと,順次,実際の流れに近づける.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,高速乱流の水中(最大流速50m/s)で気泡核が水とは異なる速度で並進 運動をしながら気泡壁面で非平衡蒸発が発生している状況において,気泡核がキャビテーション初生に至る機構と条件を理論と実験の両面から解明することである.昨年度は,まず,気泡が並進運動する場合の最も単純な流れ場の形態である,直円管内とテーパ円管内の管軸上の水流に単一球形気泡核を流したときの気泡の運動の理論解析と数値解析を行い,両者の解析結果を比較した. 本年度は,単一の球形気泡核がキャビテーションタンネル内の1本の流線上を水とは異なる速度で並進運動しながら成長する場合について気泡力学解析を行い,気泡初期半径が気泡の成長に及ぼす影響について調べた.具体的には以下のとおりである.矩形管路に管路方向と垂直に円柱を設置し,その円柱表面と管路壁との間に0.7 mmの微小な隙間をのど部として設ける.本解析では,最初に,CFDで水のみの場合の流れ場を解析し,流速成分,圧力分布を取得しておく.気泡の並進運動は,気泡に働く力として水の大域的な圧力勾配による力,水の粘性による抵抗力を,付加質量による抵抗力,抗力を考慮した気泡の並進運動方程式を解いて解析した.水に関する量は先述した水に関するCFD解析の結果を用いた.同時に,気泡の成長は,気泡壁での非平衡蒸発・凝縮,熱伝導,並進減圧を考慮したRayleigh-Plessetの式を解いて解析した.様々な気泡初期半径を与えて解析した結果,気泡初期半径が約1.3282マイクロメートル以下のときには気泡はほぼ成長しないが,約1.3283マイクロメートル以上のときには気泡が際限なく成長することが明らかになった.これの境界となる気泡初期半径はBlakeの閾値理論とよく一致した.この研究成果は2024年度の日本機械学会年次大会で発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,初年度から2年目の前半にかけて,直円管内の一次元流れ,テーパ円管内の準一次元流れ,ベンチュリ管内の準一次元の流れに対する解析を行う予定であった.2年目が終わって,今のところ,直円管内の一次元流れとテーパ円管内の準一次元流れに対する解析はすでに完了した.2年目からベンチュリ管内の流れに対する解析を行う予定であったが,それよりも先に,より複雑なキャビテーションタンネル内の2次元流れに対する解析の目途がたったために,その解析を優先した.具体的な計算内容は「研究実績の概要」で述べたとおりである.計算結果については,気泡が際限なく成長するかしないかの境となる気泡初期半径が存在し,それがBlakeの閾値理論で予測できること,ほぼ成長しない場合には気泡内の空気の圧力と表面張力が支配的であるが,一方で,際限なく成長する場合には気泡がほぼ成長していない時間帯では気泡内の空気の圧力と表面張力が支配的で,気泡が急激に成長している時間帯では並進減圧と非線形項が支配的であることが明らかになった.以上により,キャビテーション初生に及ぼす気泡初期半径の詳細が明らかになった. ただ,実験においては,ベンチュリーノズル内のボイド率の測定法に苦戦しており,現在,定電流法を用いたボイド率測定法の確立を目指して試行錯誤を繰り返している.
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今後の研究の推進方策 |
現在,理論解析と数値解析はほぼ研究計画通りに進んでいる.今後はベンチュリー管内の流れに対して,まずは水だけのCFD解析で管軸上の水の圧力と流速のデータ取得を行い,それを用いて,管軸上の水流に単一球形気泡核を流したときの気泡の運動の理論解析と数値解析を行う.また,実験においては,定電流法を用いたボイド率測定法を確立し,ベンチュリー管内の流れの実験を行って,理論解析と数値解析の結果を検証する.
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