研究課題/領域番号 |
22K03915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 泰彦 佐世保工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (10512692)
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研究分担者 |
城野 祐生 佐世保工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (80353233)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ファインバブル / マイクロバブル / マイクロガストランスポーター / ガス収納とガス放出 / バブル安定化 / バブル機能化 / バブル発生の検出 / 分子吸着 / 分子膜被覆 |
研究開始時の研究の概要 |
ファインバブルの表面を有機分子で被覆すると、バブルが安定化して液中に長時間存在し続ける。この安定化機構の解明が進めば、バブルの安定・不安定性を化学的に制御した新機能を付与することが可能となる。本研究では、バブル内部に収納したガスを目的部位で放出させる仕組みを有する機能化ファインバブルの創製に挑む。具体的には、バブル表面の分子吸着特性を利用し、分子膜をバブル表面に形成し、この膜被覆でバブルを安定化する。被覆する膜中に被覆膜崩壊を引き起こすトリガー応答性分子を組み込み、安定であったバブルを意図的に崩壊させ、バブル内部に収納したガスを放出する機構の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
ファインバブルの分子吸着特性を利用して,バブル表面でイオンコンプレックス膜を形成することが可能な分子の組み合わせを探索し,ファインバブルの膜被覆形成条を調査した。具体的には,1層目に,バブル表面と相互作用する疎水基と正電荷をあわせ持つ有機分子,2層目に,先に吸着させた分子の電荷と反対の負電荷を持つ高分子をバブル含有水へ順番に添加し,溶液中に生成する球状の構造体をデジタル顕微鏡により観察した。観測される球状構造体が膜被覆ファインバブルであるため,この球状構造体の有無により膜被覆を判定した。今回,1層目分子としてジアルキルビピリジニウム塩(アルキルビオロゲン)と,2層目分子としてポリスチレンスルホン酸を添加した場合を精査した。その結果,1層目分子および2層目分子の添加時の溶液濃度が被覆膜形成に影響していることを示唆するデータが得られた。1層目分子の添加濃度は,バブル表面への1層目分子の疎水基が,バブル表面(疎水場)へ吸着する方向へ平衡がシフトすると予想される,飽和濃度に近いほど膜被覆に好まし条件であることが分かった。しかし,飽和濃度を超えた過飽和溶液を添加すると,添加分子が未解離のままバブル表面に吸着し,不安定な被覆膜を形成し,凝集性の高い構造体を形成し,沈殿する傾向がみられた。また,2層目分子の場合,1層目分子の添加濃度と連動して添加濃度の適正値が変化する傾向がみられた。さらに,2層目分子添加濃度を高くしていくと,観測された球状構造体が観測されなくなる事が分かり,この現象はバブル表面上で形成されているイオンコンプレックス膜のバブル表面上での吸着状態が,2層目分子の過剰添加により,水中バルクへ脱着する方向へシフトを示していると考えられる。すなわち今回得られた結果は,本研究で明らかにしたい一つの目標であるバブルを意図的に崩壊されるトリガーとなりうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファインバブルを膜被覆する形成条件を網羅するために,バブル表面でイオンコンプレックス膜を形成することが可能な分子の組み合わせを探索した。これまでに,2層目分子はポリスチレンスルホン酸ナトリウムに固定し,1層目添加分子として以下の(ア)~(ウ)について調べた,(ア)ジアルキルビピリジニウム塩(アルキルビオロゲン),(イ)アルキルビオロゲンの分子構造をちょうど半分にした様な構造を持つモノアルキルピリジニウム塩,(ウ)ピリジニウム塩から環構造を除いた長鎖アルキル基を持つ四級アンモニウム塩。これら1層目添加分子として用いた場合,分子膜被覆ファインバブル,すなわち球状構造体を観察溶液の中に観測できることが分かった。これらの結果から,バブルの膜被覆条件として,吸着分子の疎水基,環構造が影響している予想される。また,分子種を変えた実験では,顕微鏡観察による球状構造体の有無により,ファインバブルの分子膜被覆を推定しているのみであるため,定性性を確実に示す手法について今後も検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り,トリガー応答性分子として酸化還元能を有する分子を被覆分子として用いて,化学的もしくは電気化学的な酸化還元を引き金として,吸着分子膜に摂動を与え,分子膜の脱着の誘発の可能性を探る。それと平行して次の計画も新たに行う。今回行ってきた実験で観測された2層目分子であるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの添加濃度を高くしていくと,観測された球状構造体が観測されなくなる事象は,本研究課題で明らかにしたいバブルを意図的に崩壊されるトリガーである可能性がある。2層目添加分子の添加濃度(添加量)による吸着膜の脱着についてその詳細を調べ,バブルを意図的に崩壊させる(ガス放出)機構の可能性を探っていく。 膜被覆されたバブルの安定性の評価測定については,当研究グループが所属する機関の共同利用機器であるレーザー回折式粒度分布測定装置で計測しているバブル直径が,小さい直径ものについても精確に捉えられているのかどうかという指摘を学会発表の質疑にて受けたこともあり,現有装置のみではなく,他機関での装置を用いての測定などを計画に組み込み,バブル計測の定性・定量性を担保していく。
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