研究課題/領域番号 |
22K03924
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田口 智清 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90448168)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | マイクロ流体 / 特性線法 / 運動論方程式 / 希薄気体 / 漸近接続 / ボルツマン方程式 / 流体方程式の特異な解 / 自己駆動粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
表面温度分布の急峻な変化(理論的には不連続的)によって物体周りに生じる気体の流れを解析するための基礎理論を整備し、自己駆動粒子系に展開する。 弱希薄気体の流体解析では、流体力学計算によりボルツマン方程式の近似解を得るすべり流理論が議論され成果が挙げられている。しかし従来理論は境界条件としての入力データの滑らかさを前提とし、そのため、表面状態の不連続的な変化に特徴づけられる特異な物体周りの流体解析に適用できない。本研究では、不連続境界条件に対応したすべり流理論を新たに整備し、さらに表面温度の不連続性によって推進力を得る粒子へ適用することで、基礎理論の確立と応用展開を図る。
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研究実績の概要 |
【実施項目①】円板を過ぎる希薄気体の流れの数値解析を実施した。具体的には、特性線法にもとづく数値解法を、ボルツマン方程式のモデルであるBhatnagar-Gross-Krook (BGK)方程式と拡散反射境界条件に対して実装した。速度分布関数に現れる不連続を捉えるための方法として、従来は差分法と特性曲線法を組み合わせたハイブリッド法が用いられており、空間2次元問題などの比較的単純な問題で成果があげられてきた。しかし円板を過ぎる流れでは、軸対称性を仮定しても独立変数の数が多く(5変数)、既存手法の適用は困難となる。そこで特性線法(積分方程式)を用いることとし、数値計算によりその有効性を確認した。 【実施項目②】気体の振舞いを記述する方程式であるボルツマン方程式は、気体分子の衝突頻度をパラメータにもち、衝突頻度の大きさによってボルツマン方程式の解は流体的な挙動と自由分子流的な挙動を示す。平均衝突頻度が大きい場合は、すべり流理論によって流体の振舞いを効率的に調べることができるが、この理論は境界データが不連続性を持つ場合には適用できない。不連続境界データに対応した適当な「境界条件」を導出し、理論を修正することにより適用可能になると考えられるが、応用上重要な空間3次元問題に対しては拡張できるか明らかでない。そこで軸対称性を仮定したボルツマン方程式に対して理論の拡張が可能かの検討を行った。 【実施項目③】不連続な壁面温度に対するすべり流理論 [S. Taguchi, T. Tsuji, J. Fluid. Mech. (2020)] の適用例として、得られた「境界条件」(以下、湧き出し吸い込み条件と呼ぶ)のもとでストークス方程式を解き、壁面温度の不連続によって2次元流路内で生じる流れを具体的に調べた。とくに流線の様子を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【実施項目①】円板を過ぎる希薄気体の流れは、速度分布関数の不連続の構造が複雑なため、軸対称性を仮定しても従来手法(ハイブリッド法)は実質的に適用不可能である。提案手法では、特性線(分子経路)に沿ったBGK方程式の積分から得られる積分方程式を解析する。これにより積分の手間は増えるが、特性線上での不連続の処理から開放される。本年度は数値解析により特性線法の有効性を実際に確認した。また、円板の縁の近傍での流体の急激な変化や、それをもとにした円板の抵抗が明らかになることで、工学的にも重要な知見が得られており、概ね順調と判断した。 【実施項目②】境界不連続近傍の変化の激しい領域と流体領域の接続の方法を調べるために、ボルツマン方程式の境界値問題の漸近解析を進めた。具体的には、速度分布関数を平均衝突頻度の逆べきで展開することで、ストークス方程式を導いた。第0近似として、円板を過ぎる流れを表すストークス方程式の解析解を求め、続いて円板の縁の近くの流体の漸近的表現を導き、理論構築のための基礎を固めた。 【実施項目③】湧き出し吸い込み条件のもとで空間2次元ストークス方程式の半解析的な解を得ることができ、本研究で構築を進めているすべり流理論の手応えを得た。また、得られた流線などを調べることで、単一の境界データの不連続では流路を通過する正味の流量はゼロにとどまること等が明らかとなり、基礎的知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
【実施項目①に関する今後の推進方策】引き続き円板を過ぎる流れの問題の数値解析を行う。数値解の精度をさらに向上するために、いくつかの工夫を導入する。またスパコンを利用することで、格子点(配列数)を増やすときのメモリの問題に対処する。平均衝突頻度の変化させて計算を行うことで、流れの特徴の全体像を明らかにしていく。 【実施項目②に関する今後の推進方策】引き続き、理論の拡張に取り組む。接続の問題を定式化し、接続条件を求めるための数値計算を実施する。 【実施項目③に関する今後の推進方策】2次元流路内の流れに対してボルツマン方程式のBGKモデルによる数値計算を実施する。湧き出し吸い込み条件のもとで得られたストークス方程式の半解析的な解との比較を行うことで、より詳細な理論の検証を行う。
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