研究課題/領域番号 |
22K03931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
西尾 悠 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70712743)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 流体工学 / 非定常空気力 / 超小型航空機 / 突風応答 / 非定常空力特性 / 渦 |
研究開始時の研究の概要 |
災害現場などへ応用が期待されている超小型無人航空機は,火災や複雑な地形によって発生する時間的かつ空間的に気流が変化する中を飛行する必要がある。しかし,このような環境下において航空機の翼に働く空気力については十分に調査されているとは言い難い。そこで本研究課題では,気流が時間的にも空間的にも様々に変化する環境を作り出せる風洞による実験と同様の条件を模した数値流体解析を行い,この気流に晒された翼に働く空気力の解明を目指す。気流を空間的・時間的に変化させる原因は主流に含まれる渦であるが,その渦の大きさおよび強さをパラメータとして,翼に働く空気力と翼周りの流れ場の特徴的な現象とを関連付けて観察する。
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研究実績の概要 |
超小型航空機向けの翼に働く非定常空気力の解明に向けて風洞実験および数値シミュレーションを行った。マルチファンとシャッター機構を持つ風洞について,シャッターの開閉角度やファンの出力を様々に変化させ,速度勾配を持つ流れや非定常に加減速する主流を作り出した。得られた速度勾配の強さは過去の数値研究と比べても十分強い渦を発生させられるものであることが明らかとなった。シャッター機構を開閉することでその速度勾配の正負を瞬時に入れ替え,大規模な渦を形成することを試みたが,シャッター機構を開閉する瞬間にわずかに主流全体の速度が低下するタイミングが存在し,一般的に想定されるカルマン渦列のような整列した円筒状の渦は形成されないことがわかった。この点は来年度に向けた改善課題であり,引き続ききれいな円筒状の渦を作成するための工夫が必要である。一方,数値シミュレーションにおいては,突風にさらされた翼型に対して境界条件として突風を与え,流れ場に与える影響を調べた。シミュレーションによれば,突風の変動が大きくなるにつれて,はく離渦が2次元的に揃う現象が確認された。また,突風にさらされることにより,翼面上にはく離・再付着する流れが形成され,この挙動がピッチングモーメントの変化に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。加えて,突風が完了した後も過渡応答を示し,そのときの空気力の変化の程度は突風に晒されている時刻の空気力の変化よりも大きくなる可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,大規模渦に対する超小型航空機翼の空力応答の解明を目的として風洞実験および数値シミュレーションを遂行している。シャッター機構とマルチファンを有する風洞を用いた実験はカルマン渦列のような整列した渦を風洞測定部内に作りだすことができていないためやや遅れている。ただし,主流の急加速,急減速およびせん断流の形成はできているため,シャッター機構を用いて引き続き整列した渦の形成を目指すとともに他のアプローチにて渦度変動を作る手段も検討する。数値シミュレーションについては,コード検証や格子解像度に対する数値解の依存性は把握・検証が完了しており,パラメトリックにシミュレーションを進める準備は整っている。加えて今年度予算で購入した計算機により当初の想定よりも多くのパラメータに対して調査が可能になった。そのため,想定よりも広いパラメータ範囲で詳細な検証が可能であると考えている。また,はく離泡の挙動や過渡応答など興味深い現象が明らかになり,次年度以降の研究方針に影響を与える知見が得られたことは大きな成果と考えている。実験および数値シミュレーションの成果の一部は国内学会にて発表され,また,風洞実験装置に関連する予備的な調査の内容についても英文雑誌論文の一部として発表された。これらから本研究課題の進捗としてはおおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたはく離泡や過渡応答に関する知見をまとめ英文雑誌論文として広く公表する。また,研究会や国際会議にも積極的に参加し,情報交換および成果の公表に努める。引き続き風洞実験および数値シミュレーションに取り組み,翼のスケールよりも大規模な渦を含む突風に対して,空気力や流れ場がどのように変化するのかを観察してゆく。初年度に明らかとなったはく離泡(翼面上のはく離・再付着流れ)の形成とその崩壊および渦の放出タイミングの挙動や突風完了後の過渡応答が大きくなる条件やその時の流れ場について着目し,より深い考察ができるよう実験および解析を進めてゆく。これらのアプローチからはく離泡の有無で非定常空気力がどのように変化しているのかを明らかにすれば,流れの制御につながると考えている。また,渦のスケールや強さ,衝突位置を変え,翼の空力応答が大きく変化しやすい渦の条件や航空機の姿勢を明らかにする。
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