研究課題/領域番号 |
22K03933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石川 仁 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (90311521)
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研究分担者 |
近藤 行成 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (70277276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 流れの制御 / 粘性 / 摩擦抵抗低減 / 非接触制御 / 乱流 / 流体工学 / 粘性変化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,紫外光(UV光)と可視光の交互照射により粘性が可逆的に変化する界面活性剤を利用した,摩擦抵抗を非接触で自在にコントロールできる流れ制御手法を開発するものである.この界面活性剤はUV光の照射で粘性が増加,可視光の照射で粘性が減少する性質をもつカチオン/アニオン性界面活性剤(CTAB/C4AzoNa)であり,研究分担者の近藤が開発した.その粘性変化の範囲はゼロシア粘度で 0.1~10 [Pa・s] 程度であるので,摩擦抵抗の大きさも100倍程度の増減が期待できる.本研究では,管路実験や水路実験の実施により,このCTAB/C4AzoNa水溶液を用いた新しい制御手法の検証と実用化をめざす.
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研究実績の概要 |
本研究は,紫外光(UV光)と可視光の交互照射により粘性が可逆的に変化する界面活性剤を利用し,粘性由来の摩擦抵抗を非接触で自在にコントロールできる流れ制御手法を開発するものである.界面活性剤はUV光の照射で粘性が増加,可視光の照射で粘性が減少する性質をもつカチオン/アニオン性界面活性剤(CTAB/C4AzoNa)である. 本年度は,まず始めに,静止した溶液に光を照射して局所的に粘性を変化させることができるかを調べる実験を行った.光源にはUV光に波長が近いブルーレーザーを用い,それをシート光にしたものを容器内に薄くはったCTAB/C4AzoNa溶液に照射した.その結果,シート光と同じ範囲に溶液色の変色(赤褐色化)がみられ,粘性を局所的に増加させられることを確かめた. 次に流路を想定した同心回転二重円筒装置を製作して,円筒間に形成されるせん断の強いクエット流れ中の溶液にUV光を局所照射して,流動場中でも局所な粘性変化を起こせるかと,またその際に内円筒に与える摩擦で生じるトルク変化を調べた.まずUV光を局所照射した場合の粘度変化の様子として,UV照射部分から赤褐色化した高粘性の溶液が,クエット流れに沿って流動する様子が確認できた.このことから,UV光を局所的に照射することで流動場中の溶液の粘性を局所的に増加できることがわかった.溶液にUV光を120分局所照射することでトルクを照射前から約5倍以上増加でき,その後連続して可視光を全体照射することでトルクが減少し,流動場中でも粘性の可逆的制御が達成できた.また溶液にUV光を120分,今度は全体に照射するとトルク変化は約3倍にとどまり,UV光を全体照射した場合よりも局所照射した場合がトルクをより大きく増加できる結果が得られた.このことは光の照射強度と照射方法が溶液の粘性変化の程度に大きく影響することを示唆するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,流路として同心回転二重円筒装置を作成した.回転が安定し層流状態の流動場を形成できるかどうかはフレーク(雲母片)を用いた可視化により確かめた.この装置にトルク計測装置を取り付けたことで,CTAB/C4AzoNa水溶液の粘度変化の様子の可視化と摩擦の増減によるトルク計測の同時測定を可能となった.照射時間とともに増加するトルクの変化量を定量的に明らかにできたことは大きな成果である.今後も,この同心回転二重円筒装置を使って実験を行う. CTAB/C4AzoNaの精製については,実験に必要な量の精製を行うことができた. 局所的に粘性を変化させた際の摩擦トルクの値を,粘性変化の有無の領域に分けて理論式で求めることを試みたが,その結果は実測値を大きく異なる結果となった.変化後の粘性の値を正確に見積もるか,流れに垂直な方向の速度勾配を考慮した新たなトルク予測モデルを構築する予定である. 以上のことより,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
実験を行うレイノルズ数をより高い範囲に拡張し,乱流場でも同様な粘度変化による摩擦低減が可能かを調べる.同心回転二重円筒装置のトルク計測が可能になったので,当初の計画通り,摩擦係数とエネルギー損失の算出を行う.得られた結果の検証は,新たに構築する局所的な粘度変化を考慮したトルク予測モデルから算出される値との比較で行う. また本年度の成果である,流れ場,とくに渦が形成されやすいせん断の強い流れ場でも局所的な粘度変化が可能となったことから,粘度変化の界面で流動現象は大変興味深い対象である.よって,粘度変化界面付近の流れ場計測を行う予定である.手法としては,粒子画像計測法(PIV)を用いる予定である.粒子画像計測法の実施には,溶液は色がない方が好都合なので,無色化あるいは薄色化を検討する.無色化ができない場合には,粒子の反射光強度を向上させるか,透過光の抽出方法を工夫する. また粘度変化は温度に依存するので,回転同軸二重円筒管内に溶液を満たした際の温度を実測するために,熱電対等の導入を検討する.
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