研究課題/領域番号 |
22K03952
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
|
研究分担者 |
大宮 喜文 東京理科大学, 創域理工学部建築学科, 教授 (10287469)
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 伝熱工学 / 火災安全 / 防災 / 火災 / 熱工学 / 液膜流 / 流体力学 / 建築工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,建築物の延焼防止手法である壁面への散水システムの最適化を背景に,建築部材の表面を流下する液膜が火炎からの輻射を遮蔽する効果を定量的に解明するために,散水システムが噴射する液滴が壁面上で液膜や飛散液滴を形成する過程,および蒸気・飛散液滴・流下液膜それぞれによる輻射遮蔽効果を明らかにすることを目的とする.具体的には,スプレーが平板上で液膜・飛散液滴を形成する様子や液膜内の温度分布を直接計測し,液膜や蒸気,飛散する液滴がどの程度輻射を遮蔽しているかを直接計測する.得られた知見から,散水システム全体の伝熱機構を定量的に示し,堅牢で効率的な散水システムの設計手法を提案する.
|
研究実績の概要 |
本研究は,建築物の延焼防止手法である壁面への散水システムの最適化を背景に,建築部材の表面を流下する液膜が火炎からの輻射を遮蔽する効果を定量的に解明するために,輻射加熱壁面上の流下液膜を対象として,散水システムが噴射する液滴が壁面上で液膜や飛散液滴を形成する過程,および蒸気・飛散液滴・流下液膜それぞれによる輻射遮蔽効果を明らかにすることを目的としている.今年度は,スプレーが平板上で液膜を形成する動的過程を分布的に計測するための光学系移動装置を設計した. 具体的には,PLIF(Planar Laser Induced Fluorescence)法を用いて,PIV粒子および蛍光染料を混合した液体がガラス壁面上に形成する液膜の厚み分布を計測するために,レーザーシート装置とカメラを移動式テーブルに載せ,ステッピングモータによって計測位置を微動させられる実験系を設計した.これにより,PIV解析を用いて液膜内部の流速分布を広い範囲で計測でき,LIF解析によって液膜厚さの空間分布を求めることができるものと考えられる. 次に,PLIFによって正確に液膜厚さを測る方法について検討した.具体的には,レーザー強度のふらつきやレーザービームプロファイルの形状に伴って,撮影される蛍光強度の分布が理想的な条件で仮定されるものと異なっていることが実験的に明らかになったため,蛍光の有無を二値化画像によって二分するのではなく,輝度値のプロファイルを用いて液膜厚さを計測する方法を考案した.キャリブレーションで液膜厚さごとの輝度値プロファイルを取得しておき,実験でのプロファイルをそれら比較することで,二値化の閾値などに依存せず液膜厚さの分布が計測できるものと考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,PLIFによる液膜厚さの計測には前例もあり,年度内の計測を予定していた.しかし,実験室内で用いているダイオードレーザの出力が安定しないために,レーザー強度のふらつきがあり,また,レーザービームプロファイルが想定される形状でなかったため,蛍光強度がある閾値を超える領域幅と液膜厚さが対応しない場合があることが判明した.これにより,計画に比べ遅れが生じた. そこで,蛍光の有無を二値で判断するのではなく,輝度値のプロファイルをキャリブレーション時と比較することで厚みを計測する方法を採用し,計測方法を検討している. また,輻射加熱装置の問題から,液膜が破断する加熱を高い再現度で実現することができておらず,今後の課題となっている.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い,建築部材の表面を流下する液膜が火炎からの輻射を遮蔽する効果を定量的に解明することを目的に,以下の点について研究を推進する. 1) 散水システムが噴射する液滴が壁面上で液膜や飛散液滴を形成する過程の観察:設計した移動式光学系を実際に制作し,壁面に噴射されたスプレーが液膜になっていく過程を計測する.具体的には,さまざまな液滴径,流量でガラス壁面に蛍光染料水溶液をスプレー噴射し,レーザーによって誘起された蛍光をカメラで取得することで液膜厚さの三次元形状を計測する.スキャンによる三次元計測のため,同時刻性は持たないが,同位置での時間変化を計測することで,液膜の不安定性を誘起する液膜厚さの揺らぎを定量的に捉えることができる. 2)蒸気・飛散液滴・流下液膜それぞれによる輻射遮蔽効果の解明:輻射加熱された液膜を透過する赤外線を分光装置によって「水に吸収される波長域」と「水を透過する波長域」に分解することで,液膜厚さ分布および輻射強度分布を計測する.また,蒸気発生装置で薄い水槽を蒸気で充満させ,蒸気による輻射の遮蔽効果も同様に見積もる.計測系を構築し,計測精度が評価できた後に1)の装置に組み込み,実際のスプレー噴霧によって形成された液膜について,同様の計測を実施する.
|