研究課題/領域番号 |
22K03987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
植田 毅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30251185)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | Phononic lens / Point-like scatterers / Ultrasonic wave / Cerebral infarction / Arrangement optimization / Diffraction optics / Alzheimer's disease / Brain stimulation / 点状散乱体 / クロスバースイッチ / 配置最適化 / フォノニックレンズ / 経頭蓋 / 超音波 / 積分方程式法 / 経頭蓋フレネルレンズ / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
急性期の脳梗塞の非侵襲的治療法として、血栓溶解剤の効果を促進するために、投与に加えて閉塞部位に経頭蓋的に超音波を照射する方法が有効とされている。しかし、頭蓋内での超音波の干渉により脳にダメージを与えることが問題となっている。本申請で実施する研究は、必要な部分のみに十分な音場強度を有し、それ以外の部分ではノイズレベルの音場強度となるアダプティブな音響レンズを世界に先駆けて実現しようとするものである。頭部を覆う水とほぼ同じメディアの中にクロスバースイッチを設置し、それにより必要な時、適切な場所に気泡を発生させることにより音響フレネルレンズを構成する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では点状散乱体の配置を最適化して形成した経頭蓋音響レンズを提案している。散乱体の最適な配置は、音場が焦点を除いて頭蓋骨内で消失し、焦点で周囲の領域よりも高くなるように決定した。このレンズは、入射平面波を焦点において入射方向に垂直な(横)方向には回折限界まで集束させることを実現した。しかし、焦点のスポットの伝播方向の幅は横方向の幅の5倍以上になる。 2023年度ではそれを現実的方法で改善するために、点状の散乱体を頭部を部分的に覆うように配置し、さらに層数を増やすことを提案し、その特性を調べた。頭蓋骨の形状はCTデータに基づいてモデル化し、以前の論文よりも現実的なパラメータが使用した。この成果は、国際会議ICMAT2023およびAIP Advances 14, 025339 (2024)に発表した。 アルツハイマー病は従来、神経系の病気と考えられてきたが、近年、脳の毛細血管にアミロイドβが沈着することによる動脈硬化が原因であり、微弱な超音波で脳血管を刺激するとアミロイドβが排出されることが明らかになっている。 東北大学の研究グループは、間もなく、その方法による治療の第3相臨床試験に入ろうとしている。 しかし、他用途の既存の超音波デバイスが脳刺激に使用され、刺激は決して最適化されていない。 そこで、本研究課題の経頭蓋レンズの点状散乱体の配置を、入射した平面波が脳内で均一な強度になるように変更することにより最適な配置を決定した。この成果は第36回計算力学講演会において発表し、また、国際会議WCCM2024において発表予定である さらに、これまでの2次元モデルをMathematicaを用いて数値計算していたが、2023年度では、3次元モデルでの数値計算を計画していた。計画通り、3次元モデルを高速処理できるコンパイラ型言語を用いた数値計算プログラムをコーディングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究方針では、これまで扱ってきた2次元モデルを3次元化し、Mathematicaより高速に実行できるコンパイラ型プログラミング言語への翻訳をプログラミング補助者を雇用し行う予定であった。しかしながら、適当なMathematicaおよびFORTRAN言語の知識を持ち、翻訳を行える補助者をもつけることが困難であり、遅れていたが、2023年度に研究代表者本人が全てを行った。3次元系での数値計算の実行は2024年度の課題であるが、計画通り進捗していると言える。 更に、本研究課題で提案している超音波レンズはフレネル型レンズであるが、その宿命というべき伝播方向への集束幅の広さを克服する方法が2022年度に見いだされ、2023年度に論文にまとめて公開した。 また、本計画では脳血栓を有効に溶かすことを目的として超音波レンズの設計を行っていたが、別の用途として、アルツハイマー病の改善のために脳全体を超音波で刺激する方法への応用について調べた。 これらは当初の計画にはなかったが、本研究課題の派生応用として本研究の有用性を示しており、研究課題の順調な進捗を示していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、微弱な超音波で脳血管を刺激しアミロイドβが排出し、アルツハイマー病を改善する最適な装置の開発のために、経頭蓋で脳内を一様に刺激できるレンズについての研究成果を国際会議WCCM2024において発表予定である。 また、3次元モデルの精密化を行い、様々なパラメーターでの数計算を行い、点状散乱体配置超音波レンズの3次元での特性を調べ、12月の計算数理工学シンポジウムのでの発表を計画している。
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