研究課題/領域番号 |
22K04002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
石河 睦生 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (90451864)
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研究分担者 |
田原 麻梨江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60721884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 強力超音波 / 圧電結晶膜 / 水熱合成法 / 高周波 / ナノバブル / 非線形音響 / 超音波 / 圧電膜 / 非鉛 / 圧電薄膜 / キャビテーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究グループは10MHz以上の周波数帯で非線形音響現象が引き起こせるほどの強力超音波を送信できる超音波トランスデューサの開発を行ってきた。今回は試作した各種3D形状のトランスデューサを水中にて高出力動作させた際に観察される音響非線形現象について観察と制御を行い、キャビテーションを伴わないナノバブル生成方法の提案、超局所領域のキャビテーションによる超音波洗浄効果、低周波では困難であった音響化学反応の観察と製膜技術への応用に関して研究開発を行うものである。
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研究実績の概要 |
強力超音波を液体に照射した際、液体中に気泡が生じる現象を音響キャビテーションという。音響キャビテーションの発生は照射する超音波の音圧(負圧)閾値によって決まり、超音波周波数が高くなるに従い音響キャビテーションの発生音圧閾値も高くなる。そのため高周波(数十~数百 MHz)帯域の強力超音波による音響キャビテーション発生の報告例は少ない。本年度の研究では例えば、試作した超音波トランスデューサにより100 MHz 帯域の強力超音波照射によって発生する超音波の波長よりも小さく気泡径が 1μm 以下のウルトラファインバブル(UFB)についての検討を行った。 超音波照射音源として水熱合成法で製膜した KNbO3 圧電薄膜を用いた超音波トランスデューサを使用した。超純水で満たしたガラスセル内に高周波強力超音波(トランスデューサ駆動周波数 160 MHz,入力電圧 101 Vpp)を照射し、動的光散乱法を利用した粒子径測定システム(ELSZ-2000,Otsuka Electronics Co.,Ltd.)を用いて,ガラスセル内に発生した UFBの粒径分布を測定した。最頻値であるモード径が 218 nm(平均径 87 nm)の粒径分布が観測された。R.E.Apfelらの式を基に、100MHz~200MHzに固有振動数を持つバブルのサイズは100nm程度であると予想され、その値に近いものとなった。しかしながら、超音波照射の際に超音波トランスデューサ表面に蒸着された金電極が剥離しセル内に金微粒子として混入している可能性もあるため、UFB 発生の有無については引き続き検討が必要である。 他にも、上記条件に近い20MHz~200MHz帯において、強力超音波照射時に音響流の発生やソノルミネッセンスによる発光現象も確認され、高周波においての強力超音波の発生が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3D形状の収束型超音波トランスデューサを試作し、それを用いて高周波において高音圧の超音波の連続的照射によって発生したキャビテーションと圧壊の確認を行う。ヨウ化カリウム(KI)を用いた酸化反応を利用する。溶液中に超音波を照射したときに生成する活性酸素種(過酸化水素)で酸化されI2となり、ヨウ素イオンを含む溶液では大部分I-3となり、これを分光光度計により測定する。しかし、KI法では空間的なキャビテーション発生に関しては測定が困難であるためソノルミネッセンスを用いて空間的なキャビテーション発生の観察を並行して行う。 試作した超音波トランスデューサを用いて高周波での強力超音波で発生したキャビテーションにより、ラジカルを発生させ、それを用いて化学反応が促進可能かどうかを基礎的に検討する。一例として、Pb(NO3)2とTiO2が混合された水溶液中でPbTiO3が形成されるかの検討である。Pb(NO3)2とTiO2はどちらも水中にて常温常圧では反応しない。そこにエネルギー(強力超音波)を当てることによってPbTiO3になるため化学反応が起こるかを実験により確認する。また、強力超音波でPbTiO3が生成された後、Ti金属基板上に同上の条件で実験を行い、Ti金属上へPbTiO3が製膜されるかを確認する。確認ではX線解析装置や電子顕微鏡を用いる。Ti金属上へPbTiO3が製膜されることが確認された場合、常温常圧において機能性材料の製膜が金属上に可能となり、新しい製膜技術として提案と研究報告されるものである。
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今後の研究の推進方策 |
3D形状の高周波超音波トランデューサの試作例と強力超音波放射の実例を示す。本実験での中心周波数は約20MHz~200MHzであり、その周波数帯ではキャビテーションの発生は非常に困難とされてきたが、圧電結晶膜の改良や新規トランスデューサ構造の提案により、キャビテーション発生の他にも音響流の発生や液滴吐出、ソノルミネッセンスが確認された。今後は定量的な実験結果を示し、報告例が非常にすくない高周波においての非線形音響現象の観察結果をまとめる。また、新領域といえる高周波数帯での応用を検討するまで研究を進める。 応用の検討では、医療や農業、漁業など幅広い分野に活用できる実施例の報告を予定している。また、それらのために必要となる非線形現象を空間的時間的に制御する手法も提案する予定である。
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