研究課題/領域番号 |
22K04006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 徳山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 厚行 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 教授 (40450142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 超音波振動 / 衝撃軽減 / 衝撃吸収 / 高張力鋼板 / 樹脂 / Blaha効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では人体や精密機器などの保護を目的に、超音波振動を用いた衝撃吸収装置を開発する。これまでの研究では、ボルト締めランジュバン型振動子(BLT)を用いて高張力鋼・アルミニウム合金・炭素繊維強化プラスチック(CFRP)・各種樹脂などを軟化させることにより衝突による衝撃力が軽減することを示してきた。本研究では超音波振動による衝撃吸収性が発現しやすい材料や駆動方法を見出すとともに装置の改良および駆動条件の最適化などにより衝撃吸収性を高め、自動車向けの衝撃吸収装置やヘッドガードのようなウェアラブルな衝撃吸収装置の開発を図る。
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研究実績の概要 |
超音波振動を用いた物体軟化装置として主に樹脂に超音波を印加して溶融させる方式の実験装置を構成し、衝撃力の低減効果などについて検討した。実験装置は主に、超音波振動子部・衝撃印加錘(ダミーヘッド)・試料設置台・圧電型ロードセルから構成され、それぞれは独立してスライドガイドに設置し、上下にスライドさせることができる。直径 50 mmのボルト締めランジュバン型振動子(BLT)にホーンを取り付けた縦振動系の超音波振動子を用いた。共振周波数は約 19.5 kHzである。衝撃印加用錘にはダミーヘッドを用いた。衝撃力は圧電型ロードセルで測定した。圧電型ロードセルは一番したの基台にボルトで固定し、試料設置台の下に貼り付けたゴムが押し付けられるようにした。溶融試料として3種類の樹脂を用いた。使用した樹脂はエチレン・酢酸ビニール樹脂(以降は EVA 樹脂と略す)、アクリル系樹脂の樹脂、ポリオレフィン系の樹脂であり、いずれも直径 11.5 mm の ホットメルト接着剤である。超音波振動子の先端部を溶接試料に接触させ、静圧力を印加させた状態で衝撃力を印加できるようにした。超音波振動子を把持した筐体部の天板に衝撃印加用錘を衝突させて衝撃力を印加した。また、加速度測定も同時に行い頭部損傷値が低減できるか試みた。 超音波の印加によって衝撃力が低減することを示すことができた。例えば、落下高さを150 mm とし、電圧の値を 0 Vrms から 80 Vrms まで 20 Vrms ずつ変化させたときの衝撃吸収特性を測定したところ、80 Vrms で駆動した場合の衝撃力は 785 N から 544Nまで低減し、低減率は30.7%であった。また、超音波の印加によって加速度も低減していたことから超音波の印加によって頭部損傷値が低減する効果も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶融試料としてこれまで測定したことのなかった材料(EVA 樹脂、アクリル系樹脂の樹脂、ポリオレフィン系の樹脂)を用いて衝撃力がどの程度低減するか確認した。超音波振動による衝撃低減効果の大きな材料を見出すための基礎的なデータが得られた。また、過去の研究においてはまだ超音波によって頭部損傷値が低減すると明確に示せていないが、本研究では超音波振動の印加によって衝撃加速度が低減する効果が確かめられ、頭部損傷値も下がっていることが期待できるようになった。また、超音波振動による軟化現象の高速化・高効率化を目指して、直径 15 mm の BLT を用いた超音波振動子を用意し、衝撃力の測定装置を設計・製作した。超音波振動による衝撃吸収特性を明らかにするためのマイコン(Arduino)を用いたシステムも作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
試作した衝撃軽減特性測定装置を用いてより効果的な衝撃軽減方法や条件を探る。特に、これまで用いたことのない樹脂の内、よりその特性が明確な樹脂を用いた実験を行い、超音波による衝撃軽減特性を明確に示していく。また、まだ測定することができていない衝撃吸収特性を測れるシステムを開発するために作成中のプログラムを改良する。衝撃吸収特性測定機も製作する。直径 15 mm の超音波振動子を用いた衝撃軽減装置も試作し、どの程度の小型化が可能か探る。超音波振動子の小型化によって、応答速度は向上することが推測されるが、どの程度の応答速度が得られるか示す。直径 15 mm の超音波振動子でも衝撃力を軽減できるようであれば、さらなる小型化を図り超音波振動を用いたヘッドガードの開発にもつなげたい。ヘッドガードの具体的な構造についても検討する。
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