研究課題/領域番号 |
22K04025
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
東郷 俊太 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30751523)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 人体模倣 / ロボットハンド / ロボットフィンガー / 手首 / 生物模倣 / ワイヤ牽引機構 / 関節包 / 肩関節 / 劣駆動機構 / リーダー・フォロワー制御 / 人体模倣ロボット / 筋骨格系 / 把持 / 人間化ロボティクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ヒトの手指骨格形状を模倣したロボットハンドを開発し,機構パラメータの異なる2つのロボットハンドの把持能力を比較することで,本来のヒトの骨格がもつ機能的役割を明らかにする.着目したのは,ヒトの手の4指長比がもつ機能的役割,および手首の手根骨の緩結合形態がもつ機能的役割である.それぞれ,ヒトを使った実験ではアプローチが困難であるが,人体模倣ロボットであれば,形態学的パラメータを変更することは容易である.そこで,本来のヒトの形状を模倣したロボットハンドと,一つの骨格形状パラメータのみを変更したロボットハンドをそれぞれ用意し,比較実験を行うことで,把持能力の差の定量的な評価を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒトの手指骨格形状そのものが物体の把持能力向上に寄与していることを明らかにすることであり,そのために人体模倣ロボットハンドを開発する.今年度は,前年度に開発した人体模倣ロボットハンドを,手首・前腕機構を含んだ人体模倣ロボット前腕に拡張した.3Dプリントした骨,鎖編みPEワイヤによる靱帯,PEワイヤと小型サーボモータから成る筋腱機構を用い,前年度に模倣した5指に加え,8つの手根骨および尺骨と橈骨を再現した.PTFEチューブによって筋を解剖学的な起始点と停止点に付与し,20個のサーボモータで手指と手首を駆動させる人体模倣ロボット前腕を作成した.トルク制御に基づいたティーチング・プレイバック法により,所望の姿勢間推移を行った.モーションキャプチャとゴニオメータによる関節可動域の評価実験の結果,開発した人体模倣ロボット前腕はヒトと同等の可動域を有することを示した.次年度以降は,開発した人体模倣手首の動的安定性などの評価,ヒトとの比較実験を行う予定である.また,ヒトの関節包構造の再現も行った.指のMP関節を対象に,ポリウレタンフィルムを複数回関節に巻き付け,Oリングで固定することで関節包を再現した.また,ヒアルロン酸水溶液を注入することで,関節包内の滑液を再現した.評価実験の結果,滑液を封入することで関節の摩擦が低減することを確認した.また,ポリウレタンフィルムの巻数を増減させることで関節の弾性力を,ヒアルロン酸水溶液の注入量を調整することで,関節の粘性を設計できることがわかった.さらに,人体模倣技術を肩関節部分に適用することで,人体模倣肩関節を作成した.上腕骨と肩甲骨をPEワイヤのみで拘束することで,従来のゴム膜で固定する方法と比較して反力を小さく押さえながらも脱臼を防ぐことができることを示した.次年度以降は,肩甲骨自体の可動の再現や,前腕との統合を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,次年度実施予定の人体模倣手首関節の開発を先行して行うことができた.昨年度までに確立した指の模倣方法を手首に応用することで,世界で最も人体の手首構造に近いロボット手首を開発した.3次元モーションキャプチャとゴニオメータによる関節最大可動域の評価実験の結果,人体の手首の3自由度の可動域,すなわち掌屈・背屈,橈屈・尺屈,回内・回外の可動域と同等の可動域を有することを示した.また,人体模倣指と手首を組み合わせることで,精密把持,握力把持,側面把持の3種類の把持姿勢を取らせることもできた.また,人体の指構造のさらなる模倣として,関節包および滑液を模倣することで,関節の弾性および粘性を付与できることを示した.また,模倣部位の拡張として,肩関節構造を模倣することで,PEワイヤによる靱帯のみで肩関節の可動域を保持しながら低反力で脱臼を防止できることを示した.以上より,本年度の研究計画は当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,開発した人体模倣手首関節の評価実験を中心に行う.特に手根骨を意図的に固定した場合や,損傷した場合の把持の動的安定性の比較を行う.関節可動域などのキネマティクスだけでなく,粘弾性や把持エネルギーなどのダイナミクスを評価する.また,重量物を握力把持した場合や落下物を受け止めた場合の骨にかかる圧力や,衝撃力など人体で計測することが困難な情報を圧力センサやひずみゲージを使って定量的に評価する.最終的に,手根骨の緩結合が,把持の動的安定性に果たす役割を明らかにすることを目指す.また関節包の模倣に関しては,関節包用のポリウレタンフィルムの巻数と弾性係数の関係および滑液の注入量と粘性係数の関係を定量的に明らかにする.また,関節包内を陰圧にした場合の粘弾性の変化も調べる.肩関節の模倣に関しては,省略している筋を配置することで,さらなる可動域の拡充と,肩甲骨の可動部位の模倣を組み込むことで,肩関節の可動域の模倣を目指す.
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