研究課題/領域番号 |
22K04033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安藝 雅彦 日本大学, 理工学部, 准教授 (60560480)
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研究分担者 |
堀内 伸一郎 日本大学, 理工学部, 特任教授 (30181522)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 予防安全 / タイヤバースト / 運転支援システム / 人間-機械系 / ドライバモデル / 人間機械システム |
研究開始時の研究の概要 |
人間-機械系の支援システムを考える上で制御対象の動特性の急変は人間オペレータと機械システムの間にミスコミュニケーションを生み出し,人間オペレータの認知・判断・操作を誤らせて事故を引き起こす危険性がある.高速道路走行中にタイヤがバーストすると,車両動特性が急変しドライバが車両を正しく認知・判断・操作することは困難となり,タイヤバースト時の安全性向上とドライバの負担軽減のため車線維持支援システム(LKAS)の研究開発が必要である.本研究ではドライビングシミュレータ実験によりバースト後のドライバ操舵行動モデルのパラメータ推定を行い,そのドライバモデルに基づくLKASの設計指針の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究ではタイヤバースト発生時の操舵トルク方式による車線維持支援システムを実現するために,タイヤバースト後の左右輪径差による車両の旋回を表現しうる車両モデルに基づく運動方程式および状態空間表現を導いた.さらにLQ制御理論に基づく状態フィードバックにより支援トルクを算出し,ドライバの操舵トルクと支援トルクの協調性を考慮したLKASを提案した. 提案するLKASの有効性を検証するために定置型ドライビングシミュレータを用いた評価試験を実施した.この実験では20名の実験参加者を対象にタイヤバースト発生時にLKASによる制御の有無によって車両軌跡,ハンドル角,視線計測装置によるドライバの注視点の変化などの客観的評価またアンケートによる主観的評価を実施した.LKASを使用した方が客観的評価値の変動が小さくなり,提案するLKASの効果が確認された.しかしドライバの操舵トルクと支援トルクとの間で競合が発生し,タイヤバースト直後の車線逸脱を回避しても1Hz程度の修正操舵が持続する可能性があることが確認された. そこで提案するタイヤバースト発生時のLKASに競合低減用シェアードコントローラを組み込み,タイヤバースト発生時のLKASを改良した.その改良型のLKASの有効性を検証するために再度定置型ドライビングシミュレータを用いた評価試験を実施した.この実験では10名の実験参加者を対象にタイヤバースト発生時に競合低減用シェアードコントローラを組み込んだLKASによる制御の有無などによる車両軌跡,ハンドル角,視線計測装置によるドライバの注視点の変化などによる客観的評価,またアンケートによる主観的評価を実施した.その結果,競合低減用シェアードコントローラを組み込むことで1Hz程度の修正操舵は減り,タイヤバースト時のLKASにドライバの操舵トルクと支援トルクとの間の競合は低減されることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題Ⅰ(制御対象の動特性突変時のドライバモデル構築)に関して,視線計測装置の準備,ドライビングシミュレータ実験はおおむね予定通り研究が進んでいる.ただしドライバ行動分析は,タイヤバースト発生時のドライバ運転行動はドライバの運転歴や運転スタイルによっても傾向が異なり,定性的な特徴の把握にとどまっている. 課題Ⅱ(バースト車両のLKAS設計指針の提案)に関して,操舵トルク方式LKASの制御システム構造の検討は予定より進んでおり,LQ制御理論に基づく状態フィードバックにより支援トルクを算出し,ドライバの操舵トルクと支援トルクの協調性を考慮したLKASを提案した.課題Ⅲ(ドライビングシミュレータによるバースト車両のLKAS評価)に関して,本年度は実施予定になかったが,課題Ⅱが予定より早く進んだため,操舵トルク方式LKASの制御システムをドライビングシミュレータに実装し,ドライビングシミュレータ実験を2つの時期に分けて実施した.1つ目の実験では提案する運転支援システムが有効であることを確認したが,当初の検討では考慮されていなかったドライバ操舵トルクと支援トルク間の競合が発生することが確認された.その知見をもとに課題Ⅱにおいて提案するタイヤバースト発生時のLKASに競合低減用シェアードコントローラを組み込み,タイヤバースト発生時のLKASを改良した.その改良型LKASをドライビングシミュレータに実装し,課題Ⅲにおける2つ目の実験を実施した.現在提案する競合低減用シェアードコントローラを用いることでドライバの操舵トルクと支援トルク間の競合は低減されたものの,その競合低減効果には改善の余地があり,さらなるLKAS設計指針の改良が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
課題Ⅰ(制御対象の動特性突変時のドライバモデル構築)に関して,タイヤバースト発生時のドライバ運転特性は定性的な特徴の把握にとどまっている.これはタイヤバースト発生時のドライバ運転特性を正しく計測できるのが初回実験時のみのために実験回数が足りなかったことが原因であった.そこで,実験協力者数を増やして追加実験を実施し,個々のドライバモデル構築ができるように追加実験を行う.これによって得られた個々のドライバモデルを用い,ハイブリッドシステムによるドライバモデルの検討を行う. 課題Ⅱ(バースト車両のLKAS設計指針の提案)に関して,研究計画作成当初はドライバの操舵トルクと支援トルク間の競合について考慮していなかったが,今年度の実験によってドライバの操舵トルクと支援トルクとの間で競合が発生し,タイヤバースト直後の車線逸脱を回避しても1Hz程度の修正操舵が持続する可能性があることが確認されたため,この点についても解決しうるLKAS設計指針を提案する.今年度も競合低減用シェアードコントローラを提案し,それを用いることでドライバの操舵トルクと支援トルク間の競合は低減されたものの,その低減率には改善の余地があるため,ドライバの操舵トルクと支援トルク間の競合低減アルゴリズムの改良を行う.
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