研究課題/領域番号 |
22K04059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山田 達司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60392677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 広帯域分圧器 / 電力標準 / 位相誤差 / 比誤差 / 抵抗分圧器 / 誤差補正 / サーマルコンバータ / 分散型電源 / パワエレ機器 |
研究開始時の研究の概要 |
普及が進む分散型電源や安全が最優先である航空機で測定が義務づけられている高調波は、高度化するパワエレ機器によりMHzへと高周波化している。計測にはIECで定められているパワーアナライザが必須であるが、それを校正する電力標準は100 kHz以上の拡張が困難である。最大の障壁は分圧標準であり、既存技術では精度劣化を抑えられず、その解決方法は明らかになっていない。本研究では、位相標準を導入した誤差計測法を発案し、結果から等価回路を構築する手法を模索し、100 kHz以上の分圧標準化への有効性を調べる。サーマルコンバータを導入することで、kV以上の高電圧下で適用可能な広帯域分圧器の開発が期待できる。
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研究実績の概要 |
広帯域抵抗分圧器の開発では、2022年度に製作した広帯域抵抗分圧器に対し、当初設計に基づく基本的スペックを確認した。その実際の方法として、LCRメータと産総研独自の解析手法を利用して、抵抗器の入力側の抵抗成分および浮遊キャパシタンス成分、抵抗器の出力側の抵抗成分および浮遊キャパシタンス成分を正確に計測した。これにより、製作した広帯域抵抗分圧器が当初の設計仕様に従っていることを確認することができた。また、これらの計測値を利用してspice回路シミュレーションソフトで等価回路を構築し、広帯域抵抗分圧器と広帯域バッファアンプとの間に設置する計画となっている周波数特性改善回路の設計に利用した。 分圧誤差評価システムの開発では、2022年度に構築した分圧誤差評価システムの性能評価を確認するために、上位標準で校正された誘導分圧器を参照器として利用して妥当性確認試験を行った。その結果、同評価システムで取得した誘導分圧器の比誤差および位相誤差は、上位標準による校正結果における比誤差および位相誤差を比較して、大きな乖離があることが判明した。この乖離問題を解決するために、同システムの改善を試み、システム内で使用している2台の位相計の誤差補正方法の確立、評価対象の分圧器における出力側ケーブル類で発生する位相遅延誤差の補正方法の確立を行ったことで、上記の乖離問題は飛躍的に抑制された。この結果をIEEE学術誌に投稿して昨年度1件掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、以前に製作・構築した広帯域抵抗分圧器および分圧誤差評価システムの妥当性確認を主に行った。広帯域抵抗分圧器の妥当性確認には、製作に使用したチップ抵抗器の構成状況から想定される入力インピーダンスおよび出力インピーダンスを、LCRメータで計測した。上記の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスはそれぞれ抵抗値成分とキャパシタンス成分で構成されているため、広帯域抵抗分圧器の入出力端子のオープン・ショート配線などで、入力側の抵抗成分およびキャパシタンス成分、出力側の抵抗成分およびキャパシタンス成分を正確に計測し、その妥当性が確認された。また、この計測値を利用し、広帯域抵抗分圧器の等価回路を構築し、抵抗分圧器後段のバッファアンプによる負荷効果を抑制する周波数特性改善回路の設計に利用した。 一方、同広帯域抵抗分圧器の誤差評価を目的として開発してきた分圧誤差評価システムは、2022年度に理論的な評価方法を確立して、位相計、位相標準器、ロックインアンプ、電圧計による構成でシステム構築した。その正確な誤差評価の妥当性確認を行うために、ppmオーダーで校正された誘導分圧器を評価対象の分圧器として使用して、その評価結果と校正結果との比較を行った。当初は、結果に大きな乖離が確認し、その原因が同システム内での位相計誤差が顕著であること、また分圧器とロックインアンプ間のケーブルによる位相遅延も影響していることを特定した。これにより、位相計の誤差補正方法の確立、分圧器における出力側で発生する位相遅延誤差の補正方法の確立を行うことで、上記の乖離問題が大幅に解消された。この研究結果をIEEE学術誌(IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement)に投稿して昨年度掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は以下の通りである。 ①分圧誤差評価システムは誤差補正方法を導入して妥当性確認ができたため、製作した広帯域抵抗分圧器に対応するように改善を行う。実際に広帯域抵抗分圧器を接続して動作確認を行い、評価結果の妥当性等の確認を行う。妥当性確認には、広帯域抵抗分圧器の等価回路から想定される位相誤差および直角相誤差を、spice回路シミュレーションソフトを使用してシミュレーション解析を行う。これにより、周波数範囲において解析される位相誤差および直角相誤差の周波数特性と、分圧誤差評価システムにより取得される広帯域抵抗分圧器の評価結果と比較する。 ②広帯域バッファアンプの開発を行う。以前にも広帯域バッファアンプは製作していたが、期待できる精度が得られなかった。現状として可能な方法は、これまでの広帯域バッファアンプを修理して改善を図るか、もしくは新しい回路設計によるバッファアンプを製作するかに分かれる。このため、この2通りを同時並行で進め、より高精度な広帯域バッファアンプの開発を進めていく。 ③抵抗分圧器とバッファアンプとの周波数特性改善回路を開発する。抵抗分圧器の出力インピーダンスとバッファアンプの入力インピーダンスの影響で比誤差および位相誤差が周波数に応じて大きく変動することが予想される。その対策として、抵抗分圧器とバッファアンプの間にRC並列回路を設置することはよくやられる方法であるが、この回路を広帯域で実現可能なRC並列回路を開発するには、市販の可変抵抗器や可変コンデンサではなく、広帯域で実現可能な抵抗素子、コンデンサ素子、スイッチの選定が重要である。また、事前にバッファアンプの入力インピーダンスを正確に計測し、抵抗分圧器の等価回路から、最適なRC回路の可変抵抗範囲および可変キャパシタンス範囲を把握しておく必要がある。
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