研究課題/領域番号 |
22K04060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
研究代表者 |
山本 修 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 教授 (00648925)
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研究分担者 |
平原 英明 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 准教授 (50649209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 誘導電動機 / 永久磁石同期電動機 / 軸トルク推定 / エアギャップトルク演算 / 故障診断 / インバータ / 高調波 / トルク推定 / 漂遊負荷損 / 固定子鎖交磁束 / トルク監視 |
研究開始時の研究の概要 |
電動機の実用的な状態監視技術は、人的な負担を増加させずに電動機の異常を自動かつ早期に検知するうえで必要不可欠である。一般的な電動機の状態監視は電流波形の周波数解析に基づいている。しかし、インバータ駆動時は観測電流に含まれるノイズの影響を無視できない欠点を有する。 本研究では、ノイズ耐力の高い手段として、運転中の交流電動機端子間の電圧と電流の波形計測情報から電動機のトルクを推定する方法を発展させ、高精度な常時トルク監視のみならず、推定したトルク波形の情報から電動機に発生する各種の故障を検知できる手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、トルク検出器を用いることなく、運転中の交流電動機端子間の電圧と電流の波形計測情報から電動機の軸トルクを高精度に推定すると同時に各種の故障を検知できる方法を開発するものである。 本年度は、誘導電動機に対して申請者らが提案してきたエアギャップトルク演算に基づく高精度な軸トルク推定法を改良し、誘導電動機と永久磁石同期電動機に対して全く同じアルゴリズムで高精度に軸トルクを推定できる方法を開発した。この方法は、電動機の回転子パラメータの変動にロバストであり、正弦波電圧駆動、方形波電圧駆動、パルス幅変調制御駆動のいずれの場合にも適用可能であることを実機実験によって明らかにした。 前年度に製作した自作のかご形誘導電動機(①健全時、②固定子巻線のターン間短絡故障時、③回転子バー切れの故障時、④回転子エンドリング損傷の故障時、⑤固定子と回転子の双方に故障を有する時、これら①~⑤のいずれの状態も具現可能)に対し、各状態における提案法に依るトルク推定結果の周波数解析手段を検討した。その結果、提案するエアギャップトルク演算に基づくトルク推定法を用いると、前述の②~⑤の全ての状態における固定子もしくは回転子の故障の有無を検知可能であることを理論的裏付けとともに実験によって明らかにした。なお、トルク検出器による実測トルクの周波数分析では、固定子巻線のターン間短絡故障の検知が困難であることが知られており、本研究でもこれを裏付ける実験結果を得ていることを付記する。 提案する手法による故障検出では、直流信号として検出されるトルク推定値の周波数分析結果を利用する。このため、交流信号として検出される線電流の周波数分析による一般的な方法と比較して、ノイズの影響を受けにくい。また、回転子故障の検出に際して必要となる電流計測データ長を短くできることを実験によって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、工場における電動機ユーザに有益な技術を主眼としている。電動機ユーザは必ずしも電動機設計や解析技術に精通しているわけではない。このため、交流電動機の種別によらず共通の方法で高精度トルク推定を行える手法を開発できたことは、電動機ユーザが従来よりも容易に工場内試験や常時状態観測を行うことに寄与するという当初目標の重要な項目を達成できたと考えている。この成果は、後述する電気機械とシステムに関する国際会議(The 26th International Conference on Electrical Machines and Systems ICEMS-Zhuhai 2023)で発表し、Best Paper Awardを受賞した。 誘導電動機の故障検出についても、従来の欠点をカバーしうる機能を持った新たな手段を開発できた。固定子と回転子の複合故障をの検知が可能であり、正弦波駆動、方形波駆動、パルス幅変調制御駆動のいずれのケースにも対応できることから、これも電動機ユーザにとって扱いやすい手段を開発できたと考えている。 電圧と電流を計測する際のサンプリング周期が、安価なマクロコンピュータ等で実現できる100マイクロ秒程度でもトルク推定と故障検出を精度よく行えるようにするための手段については、既にいくつかの解決策を考案しており次年度実験検証する予定である。 これらの考察から、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
トルク推定と並行して回転速度そのものについても高精度リアルタイム推定がおこなえる手段を開発する。申請者らが開発したトルク推定アルゴリズムでは、電動機の回転速度情報を必要としている。現時点では、印加電圧、軸トルク推定値、定格銘板値から推定される回転速度推定値を利用している。この方法は、回転子パラメータが不要であり、誘導電動機と永久磁石同期電動機の双方に共通の推定アルゴリズムを適用できる。この方法において、誘導電動機に対する回転速度の推定精度は必ずしも十分ではないながらも、トルク推定精度に及ぼす影響は小さかった。これによって、回転速度計を取り付けずに工場に出荷されている電動機に対して、回転速度も同時に高精度にモニタリングするという要求に応えることができるようになる。 誘導電動機に適用できた新しい故障診断法が永久磁石同期電動機の故障診断にも適用可能であるかを検証する。固定子巻線ターン間短絡を発生できる永久磁石同期電動機(固定子)を自作することが必要になる。負荷試験による検証を通して、誘導電動機と永久磁石同期電動機の双方に対して共通のアルゴリズムで「高精度軸トルク推定」「高精度回転速度推定」「固定子と回転子の単体/複合故障検出」を具現できる手法を開発する。
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