研究課題/領域番号 |
22K04067
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
門脇 一則 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (60291506)
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研究分担者 |
野澤 彰 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (30432800)
弓達 新治 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 助教 (40380258)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 水柱放電 / 誘電体バリア放電 / 高導電性水溶液 / 殺菌 / 水耕栽培 / 水柱電極 / 高電圧 / 放電 / 菌類 |
研究開始時の研究の概要 |
水耕栽培における高導電性の養液中に残存する菌類を,オゾンを発生させない放電技術で不活化させることが本研究の目的である。本手法が菌類を死滅させる効果を有する一方で,生産物である野菜類がオゾンによる成長阻害を引き起こさないことを実験的に明らかにする。肥料を含む栽培養液は高い導電性を有するがゆえに,養液中で放電プラズマを進展させることは困難である。そこで本研究では,放水用ノズルから細線状に吐出された養液を水柱電極として用い,これとガラスバリアとのギャップ間で放電を引き起こすという手法を提案する。
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研究実績の概要 |
水耕栽培における高導電性の養液中に残存する真菌や細菌を,オゾンを発生させない放電技術で不活化させる。本研究では,放水用ノズルから細線状に吐出された養液を水柱電極として用い,これとガラスバリアとのギャップ間で放電を引き起こすという手法を提案する。2年目,大腸菌(JM109)を含む塩化ナトリウム水溶液と,同じく大腸菌を含む硫酸アンモニウム水溶液に対する,水柱放電の殺菌処理能力を実験的に調査した。塩化ナトリウム水溶液,硫酸アンモニウム水溶液のいずれにおいても,安定して誘電体バリア放電を引き起こすことに成功した。また,導電率の上昇とともに消費電力は上昇し続けるのではなく,数mS/cm付近で消費電力は極大値を迎え,それ以上に導電率を上昇させると消費電力は低下するという逆V字特性を示すことがわかった。また,電解質濃度の上昇に伴い大腸菌殺菌に要する時間が短縮されるという興味深い実験事実も得た。遺伝子発現解析による大腸菌殺菌機構の解明にも取り組んだ。放電処理された大腸菌に対するRNA-seqによって検出された遺伝子の発現量変動と統計的効果との関係を調べた結果,DBDによる光刺激や活性酸素種によって大腸菌の細胞質膜や外膜,すなわち脂質が損傷を受けることで生理活性へ関与することが困難となり,結果として大腸菌の殺菌につながっている傾向が認められた。一方,放電処理時間と殺菌率との関係のグラフから,塩化ナトリウム水溶液と硫酸アンモニウム水溶液との間で,殺菌機構が異なる傾向が認められた。両機構の詳細な違いについては現在調査中である。大腸菌を用いた実験と並行して,クモノスカビに対する放電処理の効果についても検証した。予想していたとおり,カビの胞子を不活化させるのは大腸菌と比べて極めて難しいことから,過酸化水素の微量添加による促進酸化法に基づく短時間殺菌を試み,カビを不活化させ得ることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請段階での計画における2年目の実施項目を以下に示す。 処理システム構築と過酸化水素アシストの効果確認 水耕栽培システムの設計においては,研究協力者から育苗のノウハウについての指導を受け,大学内に装置を構築する。第一段階として,システム内で放電処理を施した場合と施さない場合との間で,カビの繁殖状態を比較する。もしも放電処理による不活化効果が不十分とみなされた場合,第二段階として,過酸化水素水(オキシドール)を水槽内に微量添加して,促進酸化法に基づく短時間殺菌の有効性をみる。 計画に対する実施状況を以下に示す。 上記項目は全て計画通りに実施できている。さらに,当初は3年目に実施する予定であった遺伝子解析についても,大腸菌を対象として2年目に実施することができた。以上より,本研究は当初の計画以上に順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
先にも述べたように,塩化ナトリウム水溶液と硫酸アンモニウム水溶液との間で,殺菌機構が異なる傾向が認められた。この結果は,計画当初に予想できていなかった事実である。本手法の実用化を目指す状況において,溶液中に溶け込んだ不純物の組成が殺菌処理に及ぼす影響を明らかにしておくことは極めて重要である。したがって,研究計画を修正し,3年目においては電解質組成が殺菌機構に影響を及ぼす理由の解明に取り組むこととする。さらに研究協力者である育苗メーカーの開発担当者から,水の殺菌だけでは不十分であって,むしろ植物種子そのものが保菌していることが大きな問題であるとの指摘を受けている。このことから,水の殺菌処理に加えて,電気刺激による種子殺菌の可能性についても探究する予定である。
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