研究課題/領域番号 |
22K04070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
丸田 英徳 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00363474)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 電力変換器 / ディジタル制御 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,モデルベースの制御手法とデータ駆動による異常検知手法の融合による電力変換器の高可用化に関する提案と開発を行うことである。提案手法においては,電力変換器に用いるモデルベース制御の重要な問題点である、閉ループ状態における電力変換器モデルの内部パラメータの変動を高精度に推定するために、機械学習における異常検知手法を採用する。モデルベース制御での予測値や制御量について外乱起因か、モデルパラメータの変動に起因するかを定量的に分析し、システムの安定的な制御と推定パラメータに基づく故障診断・予測をオンラインで同時に行うことで、電力変換器の限界性能での運用と故障検知による高可用化を実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では、モデル予測制御により、電力変換器の性能を維持しつつ安定的な運用を可能とする制御手法を提案することを目的としており、前年度において、モデル予測制御の問題点である制御演算のコストを抑え、リアルタイムで制御入力を算出する手法を提案し、商用ベースの制御装置による実装を行った。モデル予測制御のもう一つの問題点として、モデルパラメータは正しい値であると仮定されており、その値が変化した場合、正しい制御演算が行えなくなる点がある。運用中にモデルに含まれるパラメータが変化した場合でも、その変化を検出し、正しい値を推測することができれば、本研究でのモデル予測制御では、リアルタイムで制御入力を計算することが可能であるため、その変化に追随する制御を行うことが可能となる。そこで、本年度は、モデルパラメータを推定する手法について検討を進めた。制御対象は前年度に引き続きDC-DCコンバータを採用する。DC-DCコンバータの状態空間モデルに線形近似を行い、観測されたデータや制御入力値を用いたモデルパラメータの推定手法を用いることで、素子のパラメータの推定を行ったが、さらに高精度な手法が望ましいことが判明した。そこで、物理系モデルが判明しているデータを用いる深層学習の手法であるPINNに着目し、パラメータ推定の精度の向上を目指した。この手法では、対象の物理系モデルと少ない数のデータを組み合わせることで精度の高い推定を可能とする。先行研究に基づきシミュレーションレベルでのパラメータ推定について検討した。その結果、より高精度なパラメータ推定結果が確認できた。一方、PINNには学習のための演算コストがかかるため、線形近似モデルと比較し、パラメータ推定の演算コストが大幅に増大する。よって、今後、推定手法を線形近似モデルとPINNの組み合わせにより工夫していくなどの検討が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案する電力変換器のリアルタイムなモデル予測制御のためのモデルパラメータの推定手法について、基礎的な検討をシミュレーションレベルでの確認を行い、推定手法についての目途ができたため、おおむね順調に進展しているといえる。線形近似モデルによる推定は、リアルタイムでの推定を可能とする反面、推定精度がやや悪い。一方、PINNによる推定では、精度は大幅に向上が見込めるものの、学習に演算コストがかかるため、線形近似モデルによる手法のように、リアルタイムでの推定の実現が難しい。また、DC-DCコンバータは、モデルがスイッチの状態で異なるスイッチングモデルであるため、PINNを用いるには、スイッチ状態に応じてデータをサンプリングする必要が生じる。よって、PINNには、学習用データのサンプリングについての工夫を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、まず、モデルパラメータの変動が起こった場合に、その変動に追随可能であるために必要なリアルタイムな制御演算を行うモデル予測制御を実現した。また、モデル予測制御において不可欠なモデルパラメータの変動を検出する手法について、精度と演算コストのそれぞれに長所・短所をもつ推定手法について検討を行った。今後、これらの手法をどのように統合していくかについての検討を進める。また、実機での運用を考慮した場合、外乱(ノイズ)などの影響を考慮する必要が生じる。外乱に対するパラメータ推定の精度や制御演算への影響を評価し、提案手法の改善を進める。
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