研究課題/領域番号 |
22K04071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
迫田 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (90310028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 水トリー / 残留電荷法 / インジェクション / 区間標定 / 残留電荷 / CVケーブル |
研究開始時の研究の概要 |
22kV用架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルでは,絶縁体中の水トリーの発生が散見されている。水トリーは残留電荷法により検出できるが,水トリーの位置標定はできない。健全ケーブルと水トリー劣化ケーブルが混在する配電線網において,水トリー劣化区間を特定することができれば改修コストを大幅に低減できる。そこで,残留電荷放出のための交流電圧が所定の電圧に達した時に正弦波状電流パルスをケーブルに誘導して残留電荷を計測できる新しい技術を開発する。加えて,同手法による新しい水トリー劣化ケーブルの位置(区間)標定技術を開発する。
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研究実績の概要 |
22kV地中線路において,乾式架橋方式のCVケーブルの絶縁体中の水トリーの発生が散見されている。現在,22 kV用CVケーブル中の水トリーは残留電荷法により検出しているが,水トリー劣化部の区間標定はできない。水トリーケーブルと未劣化の健全ケーブルが混在する配電線網において,水トリー劣化区間を特定することができれば改修コストを低減できる。これまでに,従来の交流ステップ昇圧残留電荷法による水トリー電荷検出時に,ケーブルにクランプしたインジェクション(IJ)コイルでケーブルに高周波電流/電圧パルスを誘導して,交流電圧によって水トリー部から放出される残留電荷の一部を搬送することで,水トリー長を反映した信号を計測できることを明らかにしている。 今年度は,実線路同様に,ケーブル用分岐材(Y分岐材)が含まれるケーブル構成での水トリー劣化区間の標定を,1)IJコイルにより電流パルスをケーブル遮蔽層へ伝搬させる方式と,2)IJコイルを用いることなく電流パルスを遮蔽層へ直接伝搬させる,2つの方式で比較検討した。その結果,以下のような結果を得た。 1) ケーブル遮蔽層に電流パルスを直接伝搬させる方式 水トリー劣化ケーブルと未劣化ケーブルの組み合わせを変え,水トリー区間をほとんどの条件で正しく標定した。なお,分布定数回路を満たす発振周波数でないと適切な伝搬速度を求めることができないことを明らかにした。また,正弦波パルスを複数発連続して発振することでSN比の向上が見込めることを明らかにした。 2) パルス電源を使用した場合の実験方法 水トリー劣化ケーブルと未劣化ケーブルの組み合わせを変え,全ての条件で水トリー区間を正しく標定した。ただし,信号強度は大きいものの,正弦波電圧/電流パルスは単発発振であるため,複数発振できるように改良できると,標定精度をさらに高くすることが必要との課題を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水トリーの検出並びに水トリー区間の標定に関する本研究提案手法を実線路に適用するためには,(a) 正弦波状電流パルスによる水トリー起因の残留電荷の搬送機構,(b) 残留電荷搬送における正弦波状電流パルスの周波数と電流値依存性,(c) 残留電荷を含む電流パルスの進行波と反射波の特性,を明らかにする必要がある。 (a)~(c)の課題の解決状況は,を以下のとおりである。 課題(a) :水トリー長及び水トリー分布,密度の異なる数種類の水トリー劣化ケーブルを用いて,誘導電流による残留電荷の搬送を比較している。その結果,残留電荷法と同様に,水トリー長や分布・密度が反映された残留電荷を本研究提案手法でも計測できることを明らかにできている。 課題(b) :周波数と誘導電流パルスの強度によって,残留電荷信号の強度が左右されることを確認している。また,水トリー区間の位置標定のためのインジェクション(IJ)コイルによる発振周波数及び電流値の最適値を検討し,周波数が高い,例えば5MHzの場合は1MHz発振時に比べて信号強度が大きくなることを確認している。 課題(c) :劣化ケーブルと長さの異なる健全ケーブルとの組合せで残留電荷を含む電流パルスの進行波及び反射波の特性に鑑み,水トリーケーブルの区間標定が行えることを明らかにした。現在は,実線路と同様に,ケーブルの接続材が存在する場合でも位置標定できるか検証している段階である。なお,既に,接続材が1箇所ある場合の実験は終了しており,今後,分岐材を複数含む場合での検証を予定しているところである。
以上のことから,研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在,22 kV用CVケーブル中の水トリーは残留電荷法により検出しているが,この測定はケーブル用分岐材を複数含んだ数kmにおよぶ線路長で行われている。実際の線路に,本研究提案手法を提案するためには,IJ発振パルスの発振強度を高くすることのみならず,IJパルスの発振方法の改善と信号の積算計測によるSN比の向上,減衰しながら伝搬するIJパルス,残留電荷信号の減衰特性をさらに明確にする必要があると考える。具体的には,以下の項目について研究を推進する。
(1)実際の線路に本研究提案手法を提案するためには,標定精度(SN比)をさらに高くすることが望まれる。そのために,短パルス発振のパルス電源を複数発振できるように現有のIJコイル発振システムを改良する。 (2)これまでよりさらにケーブル亘長が長い条件,接続部の数がさらに多い条件下での試験を行い,減衰しながら伝搬するIJパルス,残留電荷信号の減衰特性を明らかにする。
最後に,研究の更なる発展(応用展開)を目指して,水トリー劣化区間の標定のみならず,重度に水トリー劣化した位置を細かく標定可能か検証する。ここでは,現有の22kV水トリー劣化ケーブルの一部分(0.5m前後を想定しえいる)を重度に水トリー劣化(人工水トリーの作製)させて,同箇所の標定を試みる予定である。
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