研究課題/領域番号 |
22K04072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
乾 義尚 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70168425)
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研究分担者 |
平山 智士 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (70759274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 電力工学 / 電力貯蔵 / 二次電池 / リチウムイオン電池 / 非破壊検査 / 劣化診断 / 電気化学インピーダンス / 非破壊劣化診断 |
研究開始時の研究の概要 |
リチウムイオン電池を対象として,まず,負極材料は同じであるが正極材料が異なる2種類の電池を作製し,両電池の電気化学インピーダンスを測定する.次に,両電池の電気化学インピーダンスを素過程に分離し,それらの比較検討により,それらが電池内のどの素過程に起因するものであるのかを同定する.さらに,複数種類の電池を種々の条件で繰り返し充放電を行い,劣化状態が互いに異なる多数の劣化電池を調製する.最後に,全ての劣化電池の電気化学インピーダンスを測定し,劣化の進行にともなうインピーダンス変化を素過程ごとに総合的に検討して,非破壊の詳細劣化状態診断手法を確立する.
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研究実績の概要 |
研究目的は,リチウムイオン電池を対象として,その電気化学インピーダンスの各素過程が正負どちらの電極のどの素過程に起因するものであるのかを同定し,同定結果を用いて非破壊の詳細劣化状態診断手法を確立することである.具体的には,(1) 負極材料は同じであるが,正極材料が異なる2種類の電池を作製し,両電池の電気化学インピーダンスの測定,(2) 両電池の電気化学インピーダンスの測定結果を6個の素過程に分離し,それらの比較検討により,それらが電池内のどの素過程に起因するものであるのかの同定,(3) 複数種類の電池をそれぞれ多数個準備し,種々の条件で繰り返し充放電を行い,劣化状態が互いに異なる多数の劣化電池の調製,(4) 全ての劣化電池の電気化学インピーダンスを測定し,劣化の進行にともなう電気化学インピーダンスの変化を素過程ごとに総合的に検討して,非破壊の詳細劣化状態診断手法の確立,の4項目である.これまでに,上記の研究目的のうちの(1),(2)の全てと(3)の一部を遂行した.まず,電極材料が,負極がグラファイトで共通で,正極がNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系とNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)系の2種類のリチウムイオン電池を試験電池のメーカーに特注して作製した.次に,特注した電池および市販電池について,電気化学インピーダンスを測定し,それらの測定結果に対して,中周波数領域にはDRT(緩和時間分布)法を,低周波数領域にはDDT(拡散時間分布)法を適用した素過程分離を試み,中周波数領域に4個と低周波数領域に2個の合計6個の素過程に分離し,それらが電池内のどの素過程に起因するものであるのかを同定することに成功した.さらに,劣化状態が互いに異なる多数の劣化電池の調製にも取りかかることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本助成研究の1年目である2022年度は,当初計画では,リチウムイオン電池を研究対象として,(1) 負極材料は同じであるが,正極材料が異なる2種類の電池を作製し,両電池の電気化学インピーダンスの測定,(2) 両電池の電気化学インピーダンスの測定結果を6個の素過程に分離し,それらの比較検討により,それらが電池内のどの素過程に起因するものであるのかの同定,の2項目の研究を行うこととされていた.それに対して,まず,計画通りに正極材料が異なる2種類の電池を作製し,作製した両電池とそれらに加えて市販電池の電気化学インピーダンスの測定を実施した.さらに,それらの測定結果に対して,DRT法とDDT法を適用した素過程分離を試み,中周波数領域に4個と低周波数領域に2個の合計6個の素過程に分離することに成功した.この時点では,中周波数領域の4個の素過程が電池内のどの素過程に起因するものであるのかの同定について,まだ確定しきれれていない部分も残されていたが,2年目の2023年度に,正極がNMC系とNCA系の2種類のリチウムイオン電池の両方に対して中周波数領域の4個の各素過程の活性化エネルギーを実験的に求め,得られた結果を比較検討することにより,各素過程が電池内のどの素過程に起因するものであるのかの同定に成功した.さらに,劣化状態が互いに異なる多数の劣化電池の調製にも取りかかることができた.以上より,本助成研究は,ほぼ当初計画通りに遂行できており,おおむね順調に進展しているものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,(3) 複数種類の電池をそれぞれ多数個準備し,種々の条件で繰り返し充放電を行い,劣化状態が互いに異なる多数の劣化電池の調製,(4) 全ての劣化電池の電気化学インピーダンスを測定し,劣化の進行にともなう電気化学インピーダンスの変化を素過程ごとに総合的に検討して,非破壊の詳細劣化状態診断手法の確立,の2項目を遂行する予定である.まず,(3)に関しては,実際に劣化させる電池として,2022年度に作製した2種類の電池だけでは結果の汎用性に問題があるため,市販の電池も複数種類追加して,2023年度から劣化電池の調製を開始しており,2024年度の前半のうちには終了させる予定である.次の(4)に関しては以下の研究の実施を予定している.まず,全ての劣化電池の容量と電気化学インピーダンスを測定し,測定結果を用いて素過程分離と各素過程の同定を行い,劣化の時間進行を素過程ごとに定量的に数式モデル化する.さらに,得られた結果を総合的に検討して,非破壊の詳細劣化状態診断手法を確立する.なお,得られた診断手法の妥当性の確認にあたっては,電池の解体調査を適宜行うことも考えている.
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