研究課題/領域番号 |
22K04089
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
仲地 孝之 琉球大学, 情報基盤統括センター, 教授 (00628472)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エッジAI機械学習 / プライバシー保護 / ガウス過程 / スパースモデリング / 秘匿演算 / ランダムユニタリ変換 / 機械学習 / エッジAI |
研究開始時の研究の概要 |
近年、機械学習は急速に進歩し、さまざまな分野へ応用が進んでいる。その実行にはエッジ・クラウドの利用が拡大しているが、信頼性欠如や事故によるプライバシー情報の流出の問題が指摘されている。本研究では、プライバシー情報を保護しつつ1)少量データでの学習、2)低い演算量、3)説明可能なAI、といった特徴を持つエッジAI機械学習の提案を目的とする。具体的には、スパースモデリングならびに深層ガウス過程と呼ばれる機械学習モデルに着目し秘匿演算手法を提案するとともに、応用例を通して、秘匿性能や予測性能を検証する。
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研究実績の概要 |
近年、AI機械学習は急速に進歩し、画像処理、自然言語処理などさまざま分野へ応用が進んでいる。これらの実装においては機器の保守にかかる手間の少なさや計算コストの利点から、エッジ・クラウドの利用が拡大している。しかし、エッジ・クラウドの利用はサービス提供者の信頼性を前提にしており、その信頼性欠如や事故によるデータの不正利用や流出によって、プライバシー侵害の問題が危惧されている。本研究では、プライバシー情報を保護しつつ 1) 少量データでの学習、2)低い演算量、3)説明可能なAI、といった特徴を持つエッジAI 機械学習の提案を目的としている。 初年度はプライバシー保護を考慮したエッジAI 機械学習として、1)秘匿スパースモデリングの収束性能向上、2)入出力信号の秘匿化に対応した秘匿ガウス過程回帰について検討を進めた。秘匿スパースモデリングでは、近年注目されている深層展開と呼ばれる手法を導入することで、観測信号を秘匿した場合でも高い収束特性を実現した。秘匿しない場合と比較して理論的に収束性能が劣化しないことを証明し、人工生成データに対するシミュレーションにより有効性を検証した。秘匿ガウス過程回帰については、観測信号を秘匿するだけでなく、予測結果の秘匿も可能なモデルを新しく提案した。糖尿病の臨床データを対象としたシミュレーションにより有効性を検証した。本成果は、信号処理分野のフラッグシップ国際会議IEEE ICASSPへ採録となり発表を行った。さらにガウス過程の教師なし機械学習モデルであるガウス過程潜在変数モデルの秘匿演算の検討を進めた。 以上の研究結果に際して、上記の国際会議を含め4件の対外発表を達成した。それ以外に、研究課題に関連して2件の招待講演を行い、1件の解説記事を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、プライバシー情報を保護しつつ 1) 少量データでの学習、2)低い演算量、3)説明可能なAI、といった特徴を持つエッジAI 機械学習の提案を目的としている。その実現のために、スパースモデリングに加え深層ガウス過程と呼ばれる非線形の機械学習モデルに着目し秘匿演算手法を提案し、応用例を通して秘匿性能や予測性能を検証する計画で進めている。 初年度は、1)秘匿スパースモデリングについては応用事例を見据えた性能評価、2)秘匿深層ガウス過程については基礎となる単層モデルの提案を目標に進めてきた。秘匿スパースモデリングについては、画像処理など応用事例を検討しつつ、並行して従来の秘匿スパースモデリングの収束性能を改善する手法の検討を進めた。結果として、深層展開と呼ばれる手法を導入することで、秘匿領域でも従来法を大幅に上回る高い収束性能が実現できた。深層ガウス過程の秘匿演算については、入出力信号の秘匿化に対応した単層モデルの秘匿ガウス過程回帰を提案した。観測信号と予測結果の秘匿は、異なる鍵でそれぞれ秘匿するか否かを制御することができる。なお提案の秘匿ガウス過程回帰を多層化モデルへ拡張することで、深層ガウス過程の秘匿演算が実現できる可能性がある。 提案した秘匿スパースモデリングならびに秘匿ガウス過程回帰は、エッジAI 機械学習の持つ優れた特徴を保持している。以上より、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得られた成果をもとに、1)秘匿スパースモデリング、2)秘匿深層ガウス過程、についてアプリケーション応用ならびにモデル拡張を進める。 秘匿スパースモデリングについては、初年度に深層展開と呼ばれる手法を導入することで、秘匿領域でも従来法を大幅に上回る高い収束性能が実現できた。今後は画像処理や生体情報解析など具体的なアプリケーションへの適用を検討する。アプリケーションごとに秘匿化の適用法や要求される秘匿強度が異なるため、メリットやデメリットを評価しつつ最適化を行う。秘匿ガウス過程回帰については、単層を多層モデルへ拡張することで、秘匿領域での演算を可能とする秘匿深層ガウス過程を検討する。実現できれば、深層学習で到達している高い予測性能を保持しつつ秘匿演算が実現できる。またブラックボックスとされる深層学習について、深層ガウス過程に基づいた設計を行うことで、秘匿演算においても理論的解釈を与えることができる。なおガウス過程の場合、データ量に対して演算量が3乗のオーダーで増加する欠点を持つが、エッジAI機械学習としての使用が想定される少量データの場合は、演算量は低く抑えられると推測される。秘匿深層ガウス過程のデータ量、演算量と予測性能のトレードオフについても評価を進める。 最終的にエッジAI機械学習としてのスパースモデリングとガウス過程の秘匿演算について、演算量・秘匿強度・予測性能・機能性ならびにアプリケーションの観点からメリットやデメリットなど特徴をまとめる。
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