研究課題/領域番号 |
22K04103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久門 尚史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80301240)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 無反射終端 / エネルギー収穫 / 時変システム / コンバータ |
研究開始時の研究の概要 |
伝送線路の終端を無反射にするためには,線路の特性インピーダンスに等しいインピーダンスで整合する必要があるが,無損失線路については,時不変線形に限ると抵抗素子となり,電気エネルギーは熱エネルギーに変換されてしまう.そこで,時変システムの自由度を用いることにより,電気エネルギーのままで,エネルギー収穫できる無反射終端を実現することを目的とする.時変システムとして双方向コンバータを用いることにより,自由度の高い2ポート特性を実現する.
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研究実績の概要 |
無損失の伝送線路に対して、整合終端は抵抗性になるため、時不変線形素子を用いて無反射を実現しようとすると、伝送されたエネルギーは熱に代わる。このような問題に対して、時変の自由度を用いることにより、無反射かつエネルギー収穫の実現をすることがこの研究の目的である。初年度は ハーフブリッジの双方向コンバータを用いてRaised cos波のような正の電圧をもつ滑らかなパルス形状の波形に対して時変素子による無反射かつエネルギー収穫の実現を確認した.しかし,より一般の正と負の両極性をもつ交流のような信号に対する無反射かつエネルギー収穫は,このままでは実現できない.そこで,ハーフブリッジをフルブリッジに拡張することにより,正弦波に対する無反射かつエネルギー収穫の可能性について検討を行った. 回路のフルブリッジ化においては,PWM(Pulse Width Modulation)の方式やフィルタの特性,グラウンドの扱いなど重要な要素について,GaNのMOSFETを用いたシミュレーションと実験により検討を行った.特にグラウンドの扱いに関しては,交流の信号成分である差動モードだけでなく,コモンモードについても考慮した上で回路を構成する必要がある.そこで,コモンモードに対して発生を抑えるとともにインピーダンスを高くすることで,効率の良いエネルギー収穫を実現する方法について検討を行った. 無反射の特性については,500kHzの正弦波に対して,ケーブルにおける定在波比を用いて確認したところ,電圧に関して位置による依存性がほぼ消滅したため,ほぼ無反射が実現できていることが確認できた.一方で,エネルギー収穫については,キャパシタに蓄えられたエネルギーを実測することにより確認を行ったところ,ハーフブリッジの場合と比較してやや収穫率が下がるものの,十分な量のエネルギー収穫が実現できていることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フルブリッジによって交流を扱えるようにすることは,エネルギー収穫においては不可欠な要素である.その意味で,これが実現できたことは大きな進捗といえる.PWMについては,ハーフブリッジの場合と同様の10MHz動作を実現するとともに,スイッチング回数を抑える形のPWMを採用することにより,損失の少ない形で双方向コンバータを実現することに成功した. GaNのMOSFETの動作特性に関しても,その寄生素子の振舞や損失への関与など,初年度から大きく知見が増えている.また,コモンモードの発生やインピーダンスに関しては,フルブリッジ動作においては不可避の条件となるが,種々の取り組みにより,十分動作させられる環境を構築できた. 結果として,ハーフブリッジの場合からはやや減少するものの,十分な量のエネルギー収穫が実現できたことは大きな進歩といえる.この課題に関しては,原因部位を明らかにすると同時に,電圧を上げることで収穫率の改善が見込めることは分かってきているため,大きな障壁にはならないと考えている. このように,フルブリッジに拡張しても,時変の自由度を活かした双方向コンバータにより無反射かつエネルギー収穫が実現できたことは大きな進捗といえる.
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今後の研究の推進方策 |
損失の発生源について,詳細な検討を行う.回路シミュレーションと比較しながら,各MOSFETの寄生素子も含めた実際の動作を詳細に検討し,損失の原因を明らかにする.また,コモンモードの影響も考えられるため,コモンモードも含めた検討により,損失の少ない双方向コンバータの実現を進める. 従来は評価ボードを用いていたが,新たに基板を設計しなおすことにより,より高速な動作を実現することも視野に入れる.これにより,測定ポイントを増やせるため,損失の原因の探索もしやすくなるため,できれば適切なゲートドライバを選択することにより50MHz程度のPWM動作を目指したい. エネルギー収穫率が上げられれば,次のステップとして,ゲートドライバの駆動やPWMを発生するマイコンも収穫したエネルギーを用いて行うことが上げられる.これにより,現実的な応用も視野に入れたエネルギー収穫による自力駆動が実現できる. また,マイコンにより制御することで,送られてくる正弦波に適切に反応することにより収穫率を上げる仕組みを考えることがあげられる.収穫率を指標にしてPWMの振幅や位相を調整する仕組みを実装することで可能になると考えられる. 理論的なアプローチでは,2ポートの写像としての特性を検討することにより、時変の自由度を用いてより一般の特性を設計する手法についても検討する.ポート間の写像を縮退した形で設計するのか,縮退を回避して設計するのか,両方面から検討することにより,両ポートに接続されるデバイスの誤差も含めて,その検討を行う.
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