研究課題/領域番号 |
22K04124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
村田 頼信 和歌山大学, システム工学部, 教授 (50283958)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 超音波 / アレイ探触子 / 高分子圧電フィルム / フレキシブル / セルフセンシング / PVDF / フレキシブル探触子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,超音波を発信する開口面形状を圧電振動子膜自身で計測可能なセルフセンシング形フレキシブル超音波アレイ探触子を開発する.研究期間内において,このような探触子を実現するために,①フレキシブルな高分子圧電膜に対する電極のパターニング,②バイモルフ構造による曲げ変形量および曲げ方向の検出,③振動子内での曲率変化点の検出について研究を行う.これらの技術により,別途表面形状計測装置を用いることなく,曲面を有する被検体に対しても探触子を接触させて内部のより正確な超音波撮像が可能となる.
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研究実績の概要 |
本年度は,主に一次元セルフセンシング形フレキシブル超音波アレイ探触子を実現するための作製システムおよび曲げ変形を計測するシステムについて検討をおこなった.圧電フィルムには柔軟性を有する高分子圧電材料PVDF,また保護膜にはポリイミドをそれぞれ採用した.基礎実験として,アレイ探触子の素子数を4~8,振動子であるPVDFの膜厚を110μm,ポリイミドの膜厚を75μm,開口面積を5mm×30mm,素子間隔を2mmとしてフレキシブルアレイ探触子の作製をおこなった.各素子は2枚の圧電膜の残留分極方向を互いに逆向きにして積層させたバイモルフ構造とした.ここでは,大面積のPVDF膜上の電極に対しエッチング処理をおこなうことでアレイ素子を作製するシステムを構築し,それに係る設備を整えた.作製したアレイ探触子の曲げ変形計測をおこなう際,信号が電源ノイズに埋もれ,オシロスコープでの信号取得が困難であることが判明した.そこで,形状計測システムとして,波形に重畳する電源ノイズを除去することが可能なローパスフィルタ付きチャージアンプを新たに考案した.これをオシロスコープとフレキシブルアレイ探触子の間に用いた.加えて,提案回路で計測した信号波形には高周波ノイズが残っていたため,python上でFFT(高速フーリエ変換)を用いたディジタルローパスフィルタ処理を施し,さらなるノイズ除去をおこなった.以上のシステムを用いて作製したフレキシブルアレイ探触子の性能評価をおこなった結果,曲率半径60mmの計測時には20dB以上のSN比の改善を示し,いずれの曲率においてもSN比が向上していることが確認できた.これにより,計測可能な曲率半径の幅が広がり,曲率半径20~120mmの被検体に対して形状計測が可能なことを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子圧電膜を使ったアレイ素子の作製方法として,これまでの製膜後に電極パターンをマスク処理で圧電膜状に描く方法に加え,市販品のような全面電極を有する圧電膜に対してエッチング処理による作製システムを構築した.これにより,用途に応じたアレイ探触子の作製が可能となり,また素子作製の効率化もはかることができた.一方で,これまでの予備実験で,バイモルフ構造とすることで圧電膜の曲げ変形量と曲げ方向の両方が計測可能なことはわかっていたが,SN比が悪く計測範囲の拡大が課題であった.今回,電源ノイズを除去することが可能なローパスフィルタ付きチャージアンプを新たに考案することで,当初計画した計測範囲の以上の拡大をはかることができた.以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で得られた知見を元に,フレキシブルアレイ探触子の製作行程の見直しを行い,素子構成の最適化および素子性能の向上をはかる.また,作製した一次元フレキシブルアレイ探触子を曲率半径20~120mmの範囲で変形させ,各素子からの出力電圧の時間積分値と曲率半径との関係を調べ,校正直線を求める.なお,校正直線と各素子の実測値との間の決定係数については0.99以上を目標とし,フレキシブルアレイ探触子のさらなる最適化についても検討を重ねたいと考える.
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