研究課題/領域番号 |
22K04131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
林 忠之 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (80310978)
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研究分担者 |
立木 実 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (50318838)
何 東風 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (60391223)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 走査磁気顕微鏡 / 磁気インピーダンスセンサ / プローブ / アモルファスワイヤ / 磁気像 / 走査トンネル顕微鏡 / 空間分解能 / 磁場分解能 / 走査プローブ顕微鏡 / MIセンサ / 磁気インピーダンス効果 |
研究開始時の研究の概要 |
磁気インピーダンス(MI)センサによる磁場分布と走査トンネル顕微鏡(STM)による試料表面形状を同時に計測できる新奇な走査プローブ顕微鏡を創成する。 MIセンサのFeCoSiBアモルファスワイヤの先端をマイクロ化学研磨法で探針(プローブ)化し、その導電性を生かしてトンネル電流を得る斬新なアイデアを採用する。プローブ先端で試料の磁束を局所的に集束するため、その先端径であるナノメートルオーダの空間分解能が実現できる。 従来の磁気プローブ顕微鏡では未踏の、高磁場分解能・高空間分解能・室温から極低温までの温度レンジ・高磁場中測定というハイスペックな微細磁場測定が可能となる。
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研究実績の概要 |
磁気記録の高密度化やスピントロニクスの新たな発展にともなう磁性材料研究分野や、高温超伝導低損失電力ケーブル開発、量子コンピュータ・粒子加速器といった最先端超伝導デバイス研究分野において、ナノメートルオーダの微細磁気評価の重要性が高まっている。 微弱な磁場分布を、定量的に高空間分解能をもって評価でき、かつ試料の極低温までの温度スキャンと測定中の磁場スキャンを可能とする新奇な走査プローブ顕微鏡の開発を進めた。 磁気インピーダンス(MI)センサによる磁場分布と走査トンネル顕微鏡(STM)による試料表面形状を同時に計測できる走査プローブ顕微鏡(STM-MI顕微鏡)である。 MIセンサのFeCoSiBアモルファスワイヤの先端を探針(プローブ)化し、その導電性を生かしてトンネル電流を得る。プローブ先端で試料の磁束を局所的に集束するため、その先端径に匹敵した空間分解能が実現できる。 2022年度の実績は、① マイクロ化学研磨法によるFeCoSiBアモルファスワイヤのプローブ化の検討、② MIセンサエレクトロニクス開発、③ MIセンサ製作、④ MIセンサのSTMアタッチメント製作、⑤ STM-MIの基本動作確認である。 粗研磨と微細研磨を組み合わせた研磨法により、ナノメートルの空間分解能を得るために必須とされる、ナノメートルオーダの先端径をもつプローブを作成できた。MIセンサを現有の走査プローブ顕微鏡にマウントし、ニッケル磁性薄膜で作成したドットパータンを試料として、STMによるドットパターンの形状像とMIセンサによる磁気像を同時検出する基本動作を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2022年度の研究計画は、STM-MI顕微鏡の基本動作を実現し、ナノメートルの空間分解能をもつ磁気イメージング技術を確立に向けてキックオフするということにあった。 濃硫酸と濃硝酸をベースとした研磨液による粗研磨と、過塩素酸をベースとし光学顕微鏡でモニタしながらの微細研磨を行うマイクロ化学研磨法による、MIセンサのプローブ化ができた。 小型・可搬のMIセンサ回路を製作し、その動作を確認した。この回路は独自の方法である。コイルに流れる交流と直流の電流を用いて交流変調磁場と直流バイアス磁場を発生させる。適切な直流バイアス磁場を印加し、アモルファスワイヤを飽和磁化状態に近づけると、B-H曲線の非線形性によりコイルの交流電圧の振幅が外部磁場とともに変化する。この変化量が検出対象磁場である。 コイルにプローブを挿入し、アタッチメントによってSTMにマウントした顕微鏡ヘッドを作成した。ピエゾスキャナーに試料をマウントし、室温におけるSTM動作とMI動作の双方を確認した。試料は、シリコン基板に蒸着したニッケルのドットパターンとした。均一な導電性を得るために、表層に薄く金を蒸着した。この試料のSTMによる形状像とMI顕微鏡による磁気像を検出した。ドットパターンを示す形状像と、ドットパターンのエッジ部における磁場の変化の様子が見られる磁気像を得ることができた。その後、表面に凹凸をもたないガーネット薄膜のSTM-MI測定を行った。STMによる表面のトレースは確認できたが、ガーネットの磁区構造は描出できなかった。 以上のトライアルにおいて、磁場分解能の改良が課題にあがった。アモルファスワイヤへのコイルのマウント方法を改善する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
MIセンサによる磁場分布とSTMによる試料表面形状を同時に計測できる走査プローブ顕微鏡、STM-MI顕微鏡を開発し、検出感度(磁場分解能)と空間分解能の評価実験を進める。 2022年度に行った、室温試料を用いたSTM-MIの動作確認試験で課題にあがった、磁場分解能の改良を検討する。アモルファスプローブ先端からコイルまでの長さが問題となっている。コイルをできる限りプローブ先端に配置して、コイルまでの部分で漏洩する磁束を低減させるために、コイル形状とコイルへのプローブの挿入方法ならびにアタッチメントを検討する。 走査プローブ顕微鏡用の標準試料を採用し、的確に試料の凹凸像を得る。往復電流路の薄膜パターンを試料として、形状像と磁気像の同時計測を確認し、有限要素法シミュレーションにより、試料に換算した磁場分解能を定量評価する。 室温における性能評価ののち、6Kの極低温までの温度スキャンと10mTまでの磁場スキャンを可能とするSTM-MI顕微鏡の動作を確認する。イットリウム系およびビスマス系高温超伝導線材の微細磁気構造評価を試みる。のちに、超伝導共振器で用いる高純度ニオブの微細磁気構造評価を試みる。ボルテックスの振る舞いについては、実験とシミュレーションの両面から評価できるようにする。
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