研究課題/領域番号 |
22K04133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
湯浅 哲也 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30240146)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | CT画像再構成 / 反射型 / THz波 / SS-OCT / OCT |
研究開始時の研究の概要 |
THz-SS-OCTを用いて,内部構造を正確に反映した屈折率分布を再構成する反射型CTイメージング方法を考案する.データ収集方法はX線CTと同じであるが,屈折率が 1 よりも顕著に大きい対象を計測する場合,光線が直進することを前提としたX線CTアルゴリズムは適用できない.そのため,光線経路を推定するアルゴリズムを再構成プロセスに組み込む必要がある.本研究では,光線伝搬経路と屈折率分布を交互に繰返し推定するCT再構成アルゴリズムを確立することを目指す.シミュレーションによりアルゴリズムの妥当性を確認したのち,実際の反射型CTにより取得された実データに適用しその有効性を確認する.
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研究実績の概要 |
THz波を用いた断層イメージング法の1つとして提案されているTHz-CT (computed tomography) は,X線CTと同じように透過波を測定する透過型CTである.透過型THz-CTでは,検出器をサンプルを挟んで光源と反対側に設置するため,全体の光学系が大型になる.これに対し,サンプルで反射波を測定する反射型THz-CTであれば,サンプル下流側のスペースが必要ないため小型化が可能である.反射波取得のためにOCT (optical coherence tomography) を利用することで比較的小型な反射型THz-CTを実現する. 本年度は,反射型CTを実現するための検出系であるSS-OCT (swept-source OCT) を構築した.光学系を構築し,サンプルの位置にミラーを設置し,干渉信号が発生することを確認した.次に,光学系の精度を確認するためにビームプロファイルを測定し,横分解能を評価した.さらに,サンプル位置に物理ファントムを測定し,深さ分解能の評価をした. ビームプロファイルの測定とファントムを用いたSS-OCT撮影実験により,深さ分解能はおよそ理論値通りの 3 mmを実現できたが,横分解能が CT撮影にはいまだ不十分であることが確認できた.横分解能の向上には,サンプルステージ前に新たにレンズを設置し,サンプルに入射するビーム径を小さくする必要がある.また,光軸のずれが見られたため,光学系の調整が必要である.今後は,新たにレンズを設置し,光軸のずれを調整するなど,光学系の改良を課題として研究を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,構築した光学系でビームが平行光となっているか,また,設計上想定した光軸とのずれがないかを確認するために,ナイフエッジ法を用いてビームプロファイルを計測した.ビームプロファイルは複数の位置において水平方向および鉛直方向で計測した.実験によりビーム径は 15 から 20 mmの範囲内であり,ほぼ平行光に保たれていることを確認した. 次に,サンプルステージに評価用の測定サンプルとしてHDPEファントムを設置してSS-OCTで計測した.HDPEファントムは,5段の段差構造(厚さは1,2,3,5,10 mm)をもつ高密度ポリエチレン (HDPE) 製であった.光源から出射されるTHz波周波数は,600-660 GHzの範囲を0.107 GHzステップで掃引した.HDPEプレートの厚さが1, 2, 3, 5, 10 mm の部分を測定した.計測された干渉信号は,まず,平滑化のために窓関数 (ハニング窓) を適用した.さらに,解析後の分解能を改善するために,データに0の配列を追加するゼロフィリング処理を施した後,逆フーリエ変換することで断層の深さ情報を求めた.実験より,厚さ3, 5, 10 mmでは,実際の厚さと計測上の厚さの差は1 mm 以下であり,CT計測に十分な分解能を有することがわかった.また,厚さ1, 2 mm では,計測はできなかった.ここで,このSS-OCTの深さ分解能の理論値は2.48 mm である.よって,構築したSS-OCTではほぼ理論値と同じく,深さ分解能は約3 mm 程度と確認できた. 光学系の評価実験により,ビーム径により規定される横分解能はCT計測には不十分であることがわかったものの,深さ分解能は目標とする2.48 mmに近い値を実現できている.以上に鑑み,研究はおおむね順調に進展していると結論した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の具体的な推進方策は主に以下の2点である: (1)光学系の改善 まず,深さ方向はすでに目標値に到達しているが,横分解能がいまだ不十分である.横分解能の向上には,サンプルステージ前に新たにレンズを設置し,サンプルに入射するビーム径を小さくする必要がある.ビーム径を8 mmまで小さくすることを第一の目標として設定する.次に,反射型CT装置のプロトタイプを構築するために,サンプル位置にXステージと回転ステージを組み入れる必要がある. (2)CT撮像実験 物理ファントムを作成しCT撮像実験を行い,得られた投影からCT画像を再構成する.
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