研究課題/領域番号 |
22K04140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
増田 浩次 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (60583127)
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研究分担者 |
北村 心 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (60549179)
長瀬 亮 千葉工業大学, 工学部, 教授 (40570685)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 光ファイバセンシング / 増幅自然放出光 / 非線形 / 帰還回路 |
研究開始時の研究の概要 |
光ファイバセンシングにおける温度などの測定パラメータの検出に関し、検出感度の顕著な向上を可能とする増幅自然放出光帰還回路(ASEFC)を有する高性能光ファイバセンシング方式(ASEFC方式)を提案する。ASEFCは、励起された増幅媒質と、その増幅媒質から出射する増幅自然放出光(ASE)を増幅媒質に帰還する経路を有し、レーザ発振閾値近傍で動作する。具体的には、自作のASEFCを用いた実験、およびモデリングおよびシミュレーションによる理論検討を実施し、ASEFC方式の特長および性能の明確化、また設計技術の確立とシステム最適化を行う。
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研究実績の概要 |
我々が提案している増幅自然放出光(ASE)を用いた「非線形回路方式」について、実験および理論検討を実施した。それらの検討結果は、ジャーナル論文1編、査読付きの国際会議予稿1編、研究会技術報告3編、国内学会発表(電子情報通信学会)6編により具体的に報告している。 その「非線形回路方式」として、増幅自然放出光帰還回路(ASEFC)、および、増幅自然出光回路(ASEC)を提案している。ASEFC方式では、光パワー分解能(OPR)改善の指数(IF)として、120が得られ、その時の出力光の線幅は、約7.8GHzであった。一方、構成がよりシンプルなASEC方式では、IFとして9.8が得られた。ASECに関して、出力光のスペクトル特性の解析結果から、波長1532.5nmにおける入出力特性のスロープSが最大(9.8)であることがわかった。一方、ASEFCに関して、出力光パワースペクトルを実験評価した。ASEFCの動作がレーザ発振に近づき,スロープが最大Smaxに近づくにつれ,3dB低下帯域が小さくなるという特徴を、定量的に明らかにした。この値は、通常のレーザ光の線幅に比べ、顕著に大きいことから、ASEFCの出力光は、低コヒーレンス特性を有し、干渉雑音に起因するOPRの低減に、大きな寄与を有することが明らかになった。 また、光ファイバの曲げを利用したひずみセンサを作成し、ひずみと損失変動の関係を調べると、約30microεのひずみに対して0.1dB程度の損失の増加が認められる場合と、ほとんど変化しない場合があった。後者の場合は変動量が0.01dB以下であるために変化の傾向が見えないため、ASEFCを用いて変化を拡大して測定した結果、3dB程度の損失変化量が認められ、ひずみと損失変動の関係は変化が大きい場合と同じ傾向であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案方法に関し、実験及びシミュレーション検討を行い、それらの検討結果として、ジャーナル論文1編、査読付きの国際会議予稿1編、研究会技術報告3編、国内学会発表(電子情報通信学会)6編を達成した。実験検討において、実際の市販の光通信用光源の光パワー測定に、本提案技術を適用し、従来技術の約100倍以上の光パワー分解能が得られることを実証した。実際に光測定器としての応用における有効性を検証できたことは、大きな成果である。また、ASE方式では、改善の指数(IF)として、9.8という高い性能が得られるという、基本特性の実験確認に成功した。 さらに、ASEFC応用技術として、光ファイバの曲げを利用したひずみセンサを作成し、ひずみと損失変動の関係を実験兼検証した。約30microεのひずみに対して、損失がほとんど変化しない場合について、変動量が0.01dB以下であるために変化の傾向が見えないため、ASEFCを用いて変化を拡大して測定した結果、3dB程度の損失変化量が認められ、ひずみと損失変動の関係は変化が大きい場合と同じ傾向であることが確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の検討を踏まえて、以下の検討を実施する。まず、当初の検討内容の概要および目標を再掲すると、以下の通りである。光ファイバセンシングにおける温度などの測定パラメータの検出に関し、検出感度の顕著な向上を可能とする増幅自然放出光帰還回路(ASEFC)を有する高性能光ファイバセンシング方式(ASEFC方式)を提案する。また、波長多重などの光多重技術を用いた多点センシングシステムを検討する。ASEFCは、励起された増幅媒質と、その増幅媒質から出射する増幅自然放出光(ASE)を増幅媒質に帰還する経路を有し、レーザ発振閾値近傍で動作する。本提案のASEFC方式は、ASEFCの前段または内部にセンサヘッドを設置する構成を有し、ファイバレーザセンシングなどの先行報告方式に比べ、ASEFCの顕著な非線形応答特性により、約10倍~100倍の検出感度向上が予想される。具体的には、自作のASEFCを用いた実験、およびモデリングおよびシミュレーションによる理論検討を実施し、ASEFC方式の特長および性能の明確化、また設計技術の確立とシステム最適化を行う。 上記の実験検討および理論検討について、順調に進んでいるが、新たな知見も得られた。すなわち、前記の増幅自然放出光方式(ASE方式)において、顕著な非線形応答特性がみられることを実験により初めて確認した。その、ASE方式における改善の指数IFは、9.8という高い値であった。上記のASEFC方式およびASE方式では,前方向励起配置の実験結果を報告しているが、今後、前方向励起配置の実験結果,および,それら2つの励起方向の比較については,実験およびシミュレーションによる明確化を行う予定である。その他の申請書に記載した検討事項についても、引き続き検討を進めていく。
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