研究課題/領域番号 |
22K04147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
芦原 佑樹 奈良工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (50511557)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 電離圏 / GNSS-TEC / トモグラフィ / 観測ロケット |
研究開始時の研究の概要 |
人工衛星―地上受信局間の電波伝搬特性を用いた従来手法の電離圏トモグラフィは,長期定常観測に適する利点があるが,観測対象とする電離圏の走査方向が地面に対して鉛直方向に偏り,水平方向の走査情報が不足する.そのため,原理的に高度分解能が低下する.本研究で提案する「ロケットGNSS-TECトモグラフィ法」は,観測ロケットを用いて水平方向の走査情報も取得することで,高度分解能の向上が期待できる.本研究では,観測ロケットS-520-32号機実験に受信機を搭載してGNSS-TECデータ取得とトモグラフィ解析に取り組み,高い高度分解能を持つ「ロケットGNSS-TECトモグラフィ法」を開発する.
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研究実績の概要 |
地球表面から高度60~800kmの領域は電離圏と呼ばれ、電離大気(プラズマ)と中性大気が混在し、宇宙空間の中では特異な領域といえる。電離大気は電磁場に拘束される一方、中性大気は電磁場に依存しない運動をする。電離圏擾乱に代表される特異な物理現象を解明するためには、電場、中性粒子の運動量に加え、プラズマ物理の基本パラメータである電子密度の観測が不可欠である。電離圏の電子密度構造は、観測ロケットに搭載した電流プローブ等を用いたその場観測で詳細な観測が可能である。しかし、プラズマ輸送過程の解明には、その場観測だけでは不十分で、より広い面的な観測が必要となる。そのため、本研究では電離圏水平・鉛直構造を観測可能な新たな計測法であるロケットGNSS-TEC法を提案、S-520-32観測ロケットに搭載して実証実験を行った。観測ロケットは、地上観測で中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)が発生していることを確認できた2023年8月11日23時20分に、鹿児島県肝付町にある内之浦宇宙空間観測所から東南東に向けて打ち上げられた。最高到達高度は279km、太平洋に着水するまでの522秒間にGNSS-TEC観測を行った。観測ロケットはスピンするため、単一アンテナでは指向方向の変化によって衛星追尾が中断される。そのため、常にGNSS衛星を受信できるように、ロケット側面に6つ、開頭部に8つのパッチアンテナを搭載し、ノーズコーンの開頭前後でアンテナを切り替えるアンテナシステムを採用した。ロケット側面の6つのアンテナでは衛星捕捉が難しかったが、開頭部に搭載した8つのアンテナでは安定してGNSS衛星を補足することができ、複数衛星でTEC観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飛翔中に取得したデータのサイクルスリップの除去方法を検討し、適切に取り除くことができた。更に取得データの解析を進め、複数のGNSS衛星で得られたTEC値をある高度での水平面図にマッピングした。一般にF領域のピークを持つと考えられる高度350kmの水平面図から、水平方向での電子密度の濃淡を捉えられていた。このロケットGNSS-TECで得られた水平面図と地上に展開されたGEONET電子基準点をつかった水平面図を比較したところ、相関がみられた。以上から、今回提案したロケットGNSS-TEC観測で水平方向の電子密度分布を捉えられたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
S-520-32観測ロケットでは、ロケット側面に6つ、開頭部に8つのパッチアンテナを搭載し、ノーズコーンの開頭前後でアンテナを切り替えるアンテナシステムを採用した。実験結果では、ノーズコーンの開頭後に使用した開頭部搭載8つのパッチアンテナで必要なデータを取得できた。しかし、開頭前に使用したロケット側面の6つのアンテナでは殆ど衛星を捕捉できていない。より広範囲の観測を行うためには、ロケット打ち上げ直後からノーズコーンの開頭までのデータを取得する必要がある。また、2つのアンテナシステムの構成では複雑かつやや大型なシステムとなるため、標準的な測定手法とするためには現状よりもコンパクトなシステム構成が望まれる。これら2つの問題を解決するため、ロケット側面に搭載でき、なおかつ安定受信できる新アンテナの開発を行う。
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