研究課題/領域番号 |
22K04153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩原 朋道 京都大学, 工学研究科, 教授 (70189463)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | サンプル値系 / 準ハンケル作用素 / 外部非負性 / 双対性 / サンプル値制御系 / 誘導ノルム / ハンケルノルム / 非負性 |
研究開始時の研究の概要 |
サンプル値系とは,ディジタル機器を用いたフィードバック制御系のことであり,その理論的扱いを高度化することは,制御性能の向上のために極めて重要である.そのような扱いには,連続時間信号と離散時間信号の混在した状況と,それに付随する周期的時変性を考慮すべきことに厄介さがあり,また現実の制御問題における外乱の性質やそれをいかなる意味で抑制することが所望であるかの数学的指標の違いに応じて,相互に関連する様々な理論上の問題が生じる.そういった問題に対して,双対性といった概念からの解釈がどこまで可能であるかを論じる他,非負性といった特別だが有用になり得る性質が厄介の解消にいかに寄与しうるかなどを論じる.
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研究実績の概要 |
外乱から制御出力までの入出力特性に関する性能評価は,ロバスト制御との密接な関係からも実用上極めて重要である.ディジタル機器を利用したフィードバック制御系であるサンプル値系においては,この入出力特性が周期時変となることに伴い,性能解析上のさまざまな難点や学術的興味が生まれる.とくに,申請者が世界に先駆けて提唱した準ハンケル作用素の視点は,さまざまな新たな性能指標の導入を示唆するが,それらの厳密な解析や相互関係の明確化など,未解決問題が数多く残っている.本研究課題に関する1年目の成果は,これらの課題のうち,L2空間からL2空間への写像と見たサンプル値系の準ハンケルノルムに関する新たな解析手法を確立したこと,ならびに,L∞空間からLq空間(ただし,q は 1,2,∞ のいずれか)への写像と見たサンプル値系の準ハンケルノルムに関する解析手法を与えたことが中心的なものと言える.とくに後者は,サンプル値系の外部非負性の定義とその条件について論じることと密接に関連しており,外部非負性をもたない場合には難しい問題となるq=1,2 の場合についての解析手法を与えている点に大きな意義がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,L2空間からL2空間への写像と見たサンプル値系の準ハンケルノルムに関する新たな解析手法を確立したことが大きな成果のひとつである.準ハンケルノルムを扱う際には,サンプリング区間 [0,h) の間の任意の点Θにおいてその区間を前後に分割した扱いが必要となる.これまでのサンプル値系における研究で標準的に利用されてきた通常のリフティング手法では,この分割を扱うことに困難を伴い,その結果,Θを含む特別なサンプリング区間だけはリフティング手法から切り離した個別的な扱いを要した.その結果,得られた準ハンケルノルム解析手法は,それが意味することの本質が必ずしも明確であるとは言えなかった.そこで,Θに応じて区間をシフトさせた形の新たなリフティング手法を導入して新たな解析手法について論じた.その結果,準ハンケルノルムの新たな計算手法が導かれ,それが,Θに応じた(準ハンケルノルムの意味での)制御対象の等価な離散化を通して解釈できることが明らかとなった.このことは,ハンケルノルム自体を性能指標とする制御器設計問題をなんらかの形で扱おうとする際に,重要な足掛かりとなることが期待されるものと言える. もうひとつの大きな成果のひとつは,L∞空間からLq空間(ただし,q は 1,2,∞ のいずれか)への写像と見たサンプル値系の準ハンケルノルムに関する解析手法を与えたことである.とくに q=1,2 の場合には,サンプル値系の場合より簡単な連続時間系の場合でも解析は困難なものとなっている.ただし,外部非負な連続時間系に関してであれば,その困難が回避されることも明らかにされている.このことに着目し,本研究課題ではサンプル値系の外部非負性の定義とその条件について論じることで,連続時間系の場合と同様の成果を得た.
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今後の研究の推進方策 |
準ハンケルノルムに関しては,L∞空間からLq空間(ただし,q は 1,2,∞ のいずれか)への写像と見た場合と比べて,その双対的な関係にあると予想されるLp空間(ただし,p は 1,2,∞ のいずれか)から L1空間への写像と見たサンプル値系の準ハンケルノルム解析が重要である.これに関しては基本的成果をすでに得ているが,その解析手法の数値計算に関して少々改善が可能ではないかとも考えられ,この点について検討をしたいと考えている.同時に,理論面からは,上述の「双対的」と予想される関係について,さらに踏み込んだ検討を進めたいと考えている.これらは,基本的には外部非負であるサンプル値系を対象とした議論になる. 一方,一般的なサンプル値系においては,これまでの研究で,L2空間からL∞空間への写像と見た場合の準ハンケルノルムやハンケルノルムに関する成果が得られている.また,H2ノルムに関する成果もすでに周知のものとなっている.これらと密接に,あるいは双対的な関係と予想される形で関連していると考えられる,L1空間からL2空間への写像と見た場合の議論をさらに充実させた上で,さらにこれを制御器設計に適用できる形に拡張することを今後検討する. なお,これらと密接に関連する問題として,離散時間系や連続時間線形周期時変系における同様の問題を検討することも,非常に役立ち,またそれ自身,意義深いことと考えられることから,それらについても並行的に進めていく予定である.
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