研究課題/領域番号 |
22K04160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
漆原 史朗 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (90311092)
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研究分担者 |
吉岡 崇 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 講師 (40824412)
高橋 洋一 香川高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70442473)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 熟練技能データの獲得 / へら絞り / LSTM / 深層学習に基づくデータ圧縮 / 熟練技能データの特徴解析 / 卓上スピニング加工機 / 熟練技能 / データ圧縮技術 / スマート加工システム / 深層学習 |
研究開始時の研究の概要 |
熟練技能の大容量の作業データや時系列データを入力変数として取り扱うことのできる時系列データ特化型の深層学習モデルであるLSTM(Long Short-Term Memory)を用いて熟練技能データの圧縮化を図る。さらに、従来の力覚センサと同等の計測精度を有するセンサレス力覚フィードバック系を構築し、加工システムの低コスト化と小型化の実現を図る。最終目標として提案するセンサレス加工システムにおける熟練技能の再現性に対して、実際の成果物の仕上がり具合に基づいて定量的に評価するなどスマート加工システムの基本技術を確立する。
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研究実績の概要 |
令和4年度においては先ずへら絞りにおける熟練技能データの獲得と特徴解析を行った。検証対象とするスピニング加工機は,市販の卓上旋盤の回転部分に設計した成形型を取り付け半径50mmほどの円形アルミ板を加工できる。アルミ板を固定する治具なども併せて設計して製作した。これらの製作部品については,分担者高橋の専門的なアドバイスに基づいて機械的設計を行い,さらに加工対象へのへらの力データを収集できるように定格200 Nの力センサが内蔵されているへら棒を設計開発した。へら台座の軸には分解能2000 P/Rのロータリーエンコーダを取り付けており,成形物とヘラ先との接触角度を測定できる。これらの試作機を用いてアルミ材の加工を行い,データ収集と得られた力覚の時系列データをFFTなどのデータ処理を行うなどの特徴解析を行った。低周波帯域の成分を細かく見るために,短時間フーリエ変換(STFT)のFFT長を5000 サンプル(1 秒),オーバーラップをFFT長の50 %とし,ハミングウィンドウをかけて解析を行った。その結果から,熟練技能のデータの主成分としては約1 Hz以下の周波数成分が主体的であることが分かった。 一方で深層学習の一手法であるLong Short-Term Memory (LSTM) を用いた熟練技能データの特徴を獲得方法について検討を行った。取得した時系列の力覚データとへら先の位置データをLSTMモデルの重み係数として圧縮する方法について検証した。LSTM モデルは勾配降下法に基づいて重み係数を更新し,工具位置の過去10ステップの時系列データを入力信号,次ステップの力を教師信号として与え,LSTM モデルの学習を行った。中間層は50ユニット,最適化アルゴリズムとしてAdaptive Moment Estimation(Adam)を用いて最適化を図るシステムを構築して検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の令和4年度の目的であったへら絞りにおける熟練データの獲得と特徴解析については,令和3年度作成したデスクトップ型スピニング加工機(W433×D255×H270,出力150W)の改良を行い,厚み06mmのアルミ材まで加工できるようにへらの再設計を行った。そのため,従来の設計仕様に対して約2倍の厚みの加工データを取得することができ,厚みによる技能データの特徴を解析することができた。 また,電気学会産業応用部門大会参加中の空き時間に東京都大田区に所在している(株)北島絞製作所を訪問し,へら絞りの熟練技能者に直接話を伺うことができた。アルミなどの金属を均一に伸ばすには,周囲の温度などの環境にも大きく影響を受けることから高精度な成形を行うには2~5年ほどの経験が必要があることが分かった。さらには,加工物の振動も工作精度に大きな影響を与えることから,アルミ材の加工精度(真円)にも気を配る必要があるなど有意義な情報を得ることができた。 令和4年度は専攻科生の実験補助を得て,令和5年度で実施予定のLSTMを用いた熟練技能データの学習と検証の一部を実施した。この学習システムにおいて厚みをパラメータとしたLSTMの汎化能力について検証を行った。この成果より当初の計画より進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる令和5年度は試作した実機を用いて取得した時系列データの計測ノイズ除去などを行い,教師データとなるデータセットを数多く生成する。さらに,分担者高橋と学生1名によって成果物の厚みや外形を測る寸法測定器やレーザー変位計などを選定し,製造物の加工精度の評価方法を検討する。これらの結果により,加工精度の評価と技能データを紐付けしてより効率の高いLSTMの学習方法を検討する。具体的には工作精度の高い技能データほど重み係数に与える影響を大きくする学習方法を提案して,データ検証を行う予定である。 これらを実施するために,令和5年度はLSTMを構築する数値解析用高性能PCとして300千円,解析ソフトの年間ライセンスとして200千円,製造物の加工精度を計る高精度超音波厚み測定器のレンタル代金として100千円を計上する。実験補助の学生に対する謝金として60千円,研究成果の発表講演の国内旅費として240千円を計上する。
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