研究課題/領域番号 |
22K04178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山内 智 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (30292478)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 選択成長 / 金属薄膜 / 化学気相堆積 / ヨウ化物 / 集積回路配線 |
研究開始時の研究の概要 |
大規模集積回路(ULSI)の配線材料として広く用いられる銅(Cu)の選択成長を実現する方法として、申請者が平成29年度~令和1年度の科研費基盤研究(C)(課題番号17K06339、研究課題名:CuIを原料とするCuの選択形成)により金属上へのみCuを堆積する方法を実現して第一原理計算によりその選択成長機構を解明したものを更に発展させて、Cu配線の微細化による抵抗率増加を抑制する一つの方法として単結晶Cuによるビアホールの埋め込みや数百μmの長粒径Cuラインの形成を実現する。更に、選択的に過剰形成したCu上へバリアメタルとしてのRuを選択形成する反転型の配線工程を検討する。
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研究実績の概要 |
・前年度に引き続きSiO2をスペースとするCuライン上でのCu選択形成の条件最適化を実施した。TEM観察結果から選択形成したCuはライン中のCuに粒子に対してエピタキシャルに成長していることがわかり、表面凹凸の増加の一因がメッキ埋め込みしたCuラインのCu粒子の粗大化であることを見出した。粗大化に伴う表面凹凸増加の抑制のため、Cu形成前に250℃での2プロパノール蒸気による還元処理を適用して、CMP形成後の表面粗さ(Ra~2nm)がCu形成温度の370℃に昇温後にはRaが16nmまで増加するのを、6nm程度まで低減することができた。その後に選択形成したCuもIPA処理無し時に比べてRaを10nm程度低減できることを明らかにした。ただし、形成Cu厚さの増加に伴うRaの増加は依然として生じており、XRD評価の結果CuラインのCuの配向性揺らぎが主原因であることが示唆された。 ・前年度でのRu上のCu形成についての知見を基に、Ruを下地とするSiO2ビアホール中へのCuの選択埋め込みを検討した。XPS分析結果からRIE加工した後のF残渣がCu成長を阻害することが明らかとなり、硫酸加水洗浄によるF除去後に下地Ruから平坦化された単結晶Cuがボトムアップ成長できるようになった。Cu粒形のばらつき抑制については、令和6年度でも引き続き前処理を含めた条件最適化により検討する。 ・本方法の実用化を見据えてRIE加工可能で且つCuバリアメタルとしても機能するTa上でのCu形成の検討を開始した。Ta-Oの結合解離エネルギーが800kJ/molと極めて高いにも関わらず、Ta表面処理を行わなくても比較的良好なCuの形成ができることがわかった。XPS分析結果からTa表面では最安定なTa-O結合が見られるがCu成長の阻害因子ではないことが示唆された。令和6年度は引き続きTa表面処理を含めて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、①ビアホールへの単結晶埋め込みや長粒径ライン形状の形成のうち長粒径ライン形状の形成と②RuI3を用いたRuの選択成長でのRu成長形態の制御、について研究を計画した。 ①の“ビアホールの単結晶埋め込み”については前述の研究実績の概要中の2のように、本方法を適用する上での阻害因子を特定してその除去を行うことで予定通りのボトムアップ単結晶Cu埋め込みが出来つつある。①の“長粒径ライン形状の形成”については前述研究実績の概要中1のようにラインの前処理方法を見出しCuライン上での選択形成が実現できているが、本方法により形成するCuがエピタキシャルに成長してしまい、その平坦性や粒径が下地Cuの平坦性、配向性揺らぎ、粒径に直接依存してしまうことが明らかとなり、より長粒径で且つ平坦なCu形成を実現するためには下地金属種の選定や表面処理法を次年度の検討項目に追加する。下地金属の候補の1つであるTaについては令和5年度から当初の計画に加えて検討を開始している。以上、①については“予定通り進行している”と判断する。 ②の“Ruの選択成長”については、原料であるRuI3気化部の構造の調整や種々の条件での気化実験を実施した。その結果、真空中でRuI3として安定的に気化することができずに、数回の加熱で主な気化種がRuI3から分解したI2であることが明らかとなった。この結果から本方法で使用可能な原料種の指針が見出され、その結果を基に令和6年度ではRuに代えて他のバリアメタルの選択形成を検討することとした。以上、②について“やや遅れている”と判断する。 以上の令和5年度実施状況として“おおむね順調に進展している”と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、Cuラインの選択形成で平坦性向上や粒径制御を令和5年度までの結果を基にさらに検討する。これに加えて当初の年度計画であった反転プロセスを検討するために、下地バリアメタルにTaを採用して実験を行う。また、ビアホールへの単結晶Cu埋め込みについては、令和5年度に得られた知見を基に、引き続きRuを下地とするパターンを用いて実験を継続する。 バリアメタルの選択性では、当初予定していたRuから他の2ヨウ化金属と3ヨウ化金属を原料として材料変更し基礎データの収集とCu上への選択性形成を検討する。
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