研究課題/領域番号 |
22K04218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
和田 修 神戸大学, 産官学連携本部, 非常勤講師 (90335422)
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研究分担者 |
小島 磨 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00415845)
海津 利行 京都大学, 産官学連携本部, 特定研究員 (00425571)
原田 幸弘 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10554355)
南 康夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60578368)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | InAs量子ドット / 量子ドット超格子 / 電気光学係数 / 光導波路構造 / 電界増強構造 / 電界センサ / テラヘルツ波検知 / 電気光学効果 |
研究開始時の研究の概要 |
電界センサは、テラヘルツ波検知器などへの応用に向けて、高感度化が望まれている。本研究では、半導体量子ドットの電気光学効果を用いた高感度化と半導体基板上での集積化を目指した新しいデバイス構造を提案し、基本的デバイス構造の実現を目指す。 具体的には、量子ドット超格子を有する光共振器による電気光学効果増強構造とプラズモニックアンテナによるテラヘルツ波電界増強構造を融合した集積化電界センサを提案する。この実現に向けて、量子ドット超格子による電気光学効果の増強機構の解明、動作波長を含む光共振器設計の最適化、電界増強アンテナ構造の集積化、等の検討を行い、高感度電界センサの実現可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、本研究プロジェクトの核となる量子ドット(QD)超格子構造における電気光学係数の評価を目指し、QD導波路構造素子の製作と基礎特性の評価を重点として研究を進めた。 素子製作については、低温成長GaAs層を含むInAs量子ドット超格子を有する導波路素子の設計・製作を行った。上部電極層と導電性基板との間に39周期のQD層からなるQD超格子が挟まれた構造をMBE法で結晶成長し、このウエハを用いて縦方向電界印加が可能なリッジ型導波路構造を形成することにより、導波路素子を得た。さらにこの素子の基礎特性を評価し、基本的なI-V特性および発光特性が観測できることを確かめた。 本素子のEO係数の評価を行うためのEO効果計測光学系を新規に設計・構築した。本系ではQD導波路に1500 nm帯の光を導入し、逆方向電圧印加時の導波路内でのEO効果によって生ずる偏光変化を計測することにより、EO係数特性を評価することが目標である。光学系の基本構成としては、ファイバ出力型レーザ光源を用い、偏光子、試料、λ/4板、偏光ビームスプリッターを用いて、偏光変化成分のEO検出を行うものである。本年度はこの系の基本的構成の構築を開始し、基本的な光信号の入出力特性を確かめることができた。 QD超格子のEO係数の評価を行うためには、EO効果を含めた導波路偏光特性の解析法が必要である。これに向けて、リッジ型導波路構造における光閉じ込め係数を等価屈折率法によって求め、基本的な解析法の準備を行った。 新たな導波路素子の製作に備えた設計・作製プロセスについての基礎的検討として、光リソグラフィとウエットエッチングを用いた作製プロセスにおける条件出しなどを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QD超格子によるEO係数の増強効果の発現を目指して、QD超格子導波路の偏光特性評価に向けた導波路素子の製作と偏光計測光学系の構築に重点を置いて研究を進めた。 素子製作については、39周期のQD層からなるInAs/GaAsQD超格子をAlGaAs光閉じ込め層で挟み込む導波路構造を製作し、p型電極層とn型基板の間に電界を印加できるリッジ導波路素子を形成した。この素子の基礎的電気・光特性を評価し、順方向電流による発光と低電圧の逆方向電圧印加の可能性を確認できたことにより、本素子の電気光学(EO)係数評価への適用が期待できることが明らかになった。 EO係数評価のための光学系構築については、ファイバ出力型レーザ光源を用い、偏光子、試料、λ/4板、偏光ビームスプリッターを用いて、偏光変化成分のEO検出を行う構成を設計し、構築を開始した。導波路の断面積が3μmx5μmと小さいため、光の導波路への入射・出射を効率良く行うため、精密ステージ上に偏光信号検出のための微小光学系を設置することとした。また、ファイバー光源からの入力光は自由空間伝搬可能な構成とし、高消光比偏光子や光チョッパーの挿入などによる高感度・低雑音化の方策が実施しやすい実験系を得た。本年度はこの系における1500 nm波長の光入出力信号の観測ができるところまでの確認を行うことができた。 一方、新たなQD超格子を用いた導波路素子の製作に備えた設計・作製プロセスについての検討として、導波路を挟む横型電極を持つリッジ導波路構造の製作可能性の検討を始めた。またこれに用いる光リソグラフィとウエットエッチングを用いた作製プロセスにおける条件出しなどを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、QD超格子導波路におけるEO効果の評価と物理機構の解明を重点として研究を進める。 本年度に構築した光学系を用いて、導波路試料へ実際に1500 nm帯の光を導入し、電圧印加時のEO効果を計測する。GaAs基板のみの場合のEO変調度は10E-4のオーダーと小さいため、GaAs基板のみの場合のEO効果と導波路の超格子構造を有する場合のEO効果を比較するのは容易でないと予想される。これを克服するため、印加電圧や入射光強度に対する依存性の検討をはじめ、光学系の高感度化などの方策によって、正確な偏光特性評価実験の方法を確立する。また、偏光特性データから正確なEO係数評価ができる解析法を確立することにより定量的なEO係数の評価を行う。これを通じて超格子構造に起因するEO効果の増強現象の解釈、およびQD超格子の超高速光物性との相関、などに対する議論に進めていく。 一方、新たなEO効果評価用の素子として、導波路を挟む横型電極を持つリッジ導波路構造の設計・製作プロセスの検討を進める。また電界センサ応用で重要となる外部電界増強のための構造として、ブルズアイ型を一例とするアンテナ構造の適用可能性についての理論・設計法の検討を行う。 これらの研究を通じて、QD超格子の高感度電界センサへの適用可能性に対する情報を明らかにしていく。
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