研究課題/領域番号 |
22K04227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
岩田 直高 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40708939)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | GaN(窒化ガリウム) / 環境発電(エナジーハーベスティング) / 低オン電圧 / 高耐圧 / 整流用ダイオード / GaN / ゲーテッドアノードダイオード / 高電子移動度トランジスタ / スーパー接合 / 環境発電 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、低電圧から高電圧までの電気エネルギーを高効率で整流する環境発電向けのGaNヘテロ構造ダイオードを創製する。この素子は、0Vのオン電圧と高耐圧特性を兼ね備えたp型GaNゲートを有するAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタとすべての正と負の空間電荷を厳密に平衡させた高耐圧スーパー接合構造を組み合わせた独自のゲーテッドアノード構造が特徴である。さらに、より高電流化を図るために空間電荷濃度を平衡させたドナーとアクセプタの追加ドーピングを行っても高耐圧特性が同時に得られることを示し、環境発電用の高効率なGaN整流ダイオードを創製する。
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研究実績の概要 |
持続可能な省エネルギー社会の実現に向けて、環境中にあるエネルギーの利用が注目されている。たとえば多数のIoT端末への電力供給は、電波や振動などを電気エネルギーに変換して端末ごとに貯蔵できることが望まれる。しかし、微弱な高周波信号や振動をピエゾ素子で発電した場合の大きく振幅が変わる交替電圧の利用は、Siを用いたダイオードでは困難である。極めて低い電圧からパルス状の高い電圧までを、低い損失で整流できる素子の実現が望まれる。本研究の目的は、低電圧から高電圧までの電気エネルギーを高効率で整流する環境発電向けのGaNヘテロ構造ダイオードの創製である。 研究対象の素子は、0Vのオン電圧と高耐圧特性を兼ね備えたp型GaNゲートを有するAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)と、すべての正と負の空間電荷を厳密に平衡させた高耐圧スーパー接合構造を組み合わせた独自のゲーテッドアノード構造が特徴である。さらに、より高電流化を図るために空間電荷濃度を平衡させたドナーとアクセプタの追加ドーピングを行っても高耐圧特性が同時に得られることを示し、環境発電用の高効率なGaN整流ダイオードを創製する。 2022年度は、AlGaN層上のp型GaN層を2領域に分けて、異なる厚さを有するp型GaNゲート構造を検討した。すなわち、カソードから遠いp-GaN領域(ゲートⅠ)でHEMTのしきい電圧を0V付近に制御して、カソードに近いp型GaN領域(ゲートⅡ)では、p型GaN層を薄層化することで2次元電子ガス濃度を高め、高電流特性を目論んだ。その結果、ゲートⅠ長4μmの素子で0.1Vの低オン電圧と1A/mmを超える高電流特性を獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境発電向けに、理想的な特性の整流用ダイオードが求められる。すなわち、0Vオン電圧(環境中の電波を受信した際の微弱な高周波信号の整流に必須)、低オン抵抗(0Vオン電圧と併せて、高い整流効率を実現するためであり、線形性も必要)、高耐圧特性 (逆方向に急激な高電圧が印加された場合の電流抑止と破壊防止のため)が達成すべき素子特性である。 2022年度は、0Vオン電圧と低オン抵抗(高電流)特性を示すスーパー接合(SJ)構造を融合した新しいゲーテッドアノードダイオード(GAD)を検討した。p型GaNゲートHEMTのゲートとチャネルの一方を接続したGAD構造において、HEMTで0Vのしきい電圧が得られるように、ゲートⅠ領域のAlGaN層上のp型GaN層の厚さとMgドープ濃度を厳密に設計、作製した。その膜厚は40nmと見積もられたので、ドライエッチングによるp型GaN層の薄膜化を精密に制御した。さらに、そのカソード側にあるゲートⅡ領域のp型GaN層の厚さは20nmと薄膜化した。これによって表面電位の影響でしきい電圧を深くすることにより、高電流化を狙った。このGAD構造の素子は、ゲートⅠ長4μmの素子で0.1Vの低オン電圧と1A/mmを超える高電流特性を示した。 一方、p型GaN層へのMgドープ濃度は、AlGaN層上下のヘテロ界面に生じる負と正の分極電荷に加えて、結晶成長時の残留不純物であるSiによるドナーを相殺し、素子表面や基板との成長界面の欠陥電荷も加味して厳密に釣り合わせる必要がある。すなわち、高耐圧化にはゲートⅡ領域の精密な設計と構造の作製が求められる。今回の試作では耐圧測定が行える素子の水準が少ないので、ウエハ構造の再設計と作製プロセスの改善を進め、2023年度でのSJ構造の検討につなげる。加えて、良好なオーム性接触を低温の熱処理で得ることの重要性を痛感したので、並行して進める。
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今後の研究の推進方策 |
環境発電向けには理想的な特性の整流用ダイオードが求められており、0Vオン電圧、低オン抵抗(高電流)、高耐圧特性が達成すべき素子特性である。 2023年度は、これまでの試作結果に基づいて、ウエハ構造と作製プロセスの改善をまず進める。次に、すべての正と負の空間電荷を厳密に平衡させた高耐圧SJ構造の検討を、表面と成長界面の評価を通して進める。なぜならば、アクセプタとドナー濃度が等しいSJ構造で逆方向のバイアス印加を進めると、完全空乏化が同時に達成されるため、空乏層内の電界は一定となり、耐圧電圧が最大化するからである。これを、先に示したHEMTのしきい電圧0Vを実現する厳密なMgのドーピングに加味して、すべての空間電荷(表面と成長界面を含む)との相殺が同時に実現するように設計し、GAD試作と評価により整流特性を確認する。 2024年度は、p型GaN層への低抵抗オーム性接触を有するGADを実現する。すなわち、p型GaNゲートとHEMTチャネルの両方へのオーム性接触が良好であることにより、HEMTのしきい電圧0Vからの低抵抗特性に加えてp型GaNゲートとHEMTチャネル間の正孔注入増大によるダイオード電流の増加を付加する。さらに、より高電流化を図るために空間電荷濃度を平衡させたドナーとアクセプタの追加ドーピングを行っても高耐圧特性が得られることを示す。そして、実用的な全波整流用ダイオードブリッジなど高効率なGaN整流用素子を創製する。
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