研究課題/領域番号 |
22K04236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大平 昌敬 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60463709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | バンドパスフィルタ / 深層強化学習 / マイクロストリップ / マイクロ波フィルタ / 自動設計 / 深層Qネットワーク / 深層学習 / 逆設計 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、電磁波回路の代表格であるマイクロ波平面バンドパスフィルタ(BPF:Bandpass filter)の回路パターンの逆設計のために、設計仕様値のみ入力すれば瞬時に回路パターンを出力する逆モデル(ニューラルネットワーク)を、深層学習を用いて構築する。構築した逆モデルを用いてマイクロストリップBPFの回路パターンを逆設計することによって、本研究で開発した手法の有効性を実証する。
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研究実績の概要 |
マイクロ波帯域通過フィルタ(BPF)の形状自動設計を実現するために、昨年度提案した手法を改善すべく2023年度は強化学習アルゴリズム等の見直しを行い、以下の研究実績を上げた。 (I) 深層強化学習を用いたBPFの自動設計:昨年度は深層Qネットワークを用いて複数の仕様の設計過程を一つのニューラルネットワーク(NN)で学習する手法を提案した。しかし、この手法では構造調整量を離散値でしか表現することができず、構造調整の回数や設計可能なフィルタ構造が調整量の刻み幅に依存するという課題があった。そこで2023年度は、強化学習アルゴリズムとしてDDPG(Deep Deterministic Policy Gradient method)を導入した。DDPGを用いれば構造調整量を連続値で表現できるため、構造調整回数を大幅に減らすことができる。この手法と昨年度の提案手法を併用することによって、共振器3段のマイクロストリップBPFを例に中心周波数2.90~3.10 GHz、比帯域幅4~6%の範囲で自動設計が可能なNNを構築した。この範囲で2000通り以上の仕様についてBPFを設計した結果、すべての場合で設計に成功し、本自動設計は初期値依存性が低く高速設計が可能であることを示した。 (II) 高速特性計算のための代理モデルの構築:深層強化学習の学習時間短縮には高速にBPFの特性計算を実行するための代理モデルが必須である。しかし、それを構築するためには電磁界解析による教師データの生成が必要であり、それに要する時間が問題であった。そこで、解析時間は短いが解析精度の低いデータを用いてNNを一度構築した後、解析時間は長いが解析精度の高いデータを用いて出力を補正するという代理モデルを提案した。提案法の適用例として3段マイクロストリップBPFを対象に代理モデルを構築し、提案法の有効性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最終目標である深層学習によるマイクロ波平面フィルタの逆設計法の確立に向けて、深層強化学習を用いたBPFの自動設計法ならびにBPFの高速特性計算のための代理モデル構築において研究成果を上げた。進捗状況は以下のとおりである。 (1) 深層強化学習を用いたBPFの自動設計:マイクロストリップBPFの自動設計の高速化と効率化を目的に、連続変数を扱える強化学習アルゴリズムを導入した。この手法によって昨年度までの課題を解決し、自動設計の時間が一層短縮したことから、研究は当初の計画通り順調に進んでいると言える。この研究成果は2023年度電子情報通信学会ソサイエティ大会において発表を予定している。 (2) 高速特性計算のための代理モデルの構築:代理モデルの構築に必要な教師データの生成に要する時間を大幅に短縮する手法を提案した。よって、本課題についても当初の計画通り順調に進んでいるものと考える。 このように2023年度も概ね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
深層学習によるマイクロ波フィルタの自動設計技術の開発がおおむね順調に進んでいることを受けて、次年度はまだ解決には至っていない課題を中心に研究に取り組む予定である。特に次年度は以下の2点を推進方策とする。 (1) 深層強化学習を用いたBPFの設計技術の研究開発:2023年度は強化学習アルゴリズムDDPGを用いれば、構造パラメータの変化量を連続値で扱えることが確かめられた。しかし、設計仕様として扱える周波数範囲がまだ狭いという課題などがある。2024年度は、自動設計で扱える仕様の範囲を拡大するための技術を開発する。この課題は、高速特性計算に用いている代理モデルの計算周波数範囲とも関連するため、以下の(2)の手法と組み合わせて課題解決を図る。 (2) 高速特性計算のための代理モデルの構築:2023年度は代理モデルの構築に必要な教師データの生成時間を削減するのに有効な手法を提案した。2024年度は、その手法による効果を具体的に検討するとともに、代理モデルの計算精度向上や計算周波数範囲の拡大などを図り、(1)の課題解決に供する。
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