研究課題/領域番号 |
22K04237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
角嶋 邦之 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50401568)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 強誘電体 |
研究開始時の研究の概要 |
高い残留分極を示す強誘電体AlScn膜のスイッチング回数を改善するために、まず劣化原因である金属電極界面の原子挙動を明らかする。また、電極材料の選択や、AlScN膜が半導体でもあるという性質に着目してドーピング技術を駆使したエネルギーバンドの制御を行う。
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研究実績の概要 |
100uC/cm2以上の高い残留分極を示す強誘電体AlScN膜は次世代強誘電体メモリの材料として期待されている。強誘電体スイッチングに必要な抗電界が高く、動作に高い電圧を印加する必要がある。そのためAlScN膜の薄膜化を行うことで動作電圧を下げることになる。ところが、薄膜化とともに抗電界が高くなることが実験的に観測されているため、動作電圧の低電圧化が困難である。一方、スイッチング回数が現状104回以下であり信頼性に課題がある。2023年度はAlScN膜の薄膜化に伴う膜中の歪みについて顕微ラマン分光を用いて観測を行ったところ、AlScN膜と下部電極との界面に圧縮歪みが存在することを明らかにした。またSc濃度が低い組成を使うと歪みの効果は少なくなることを確認した。一方、酸素を適切に導入してAlScON膜とすることで効果的に抗電界の低減ができることを確認し、更に電圧によって強誘電体スイッチング量の制御を容易化できることを見出した。高い残留分極量を利用できるこの特性は不揮発性アナログメモリとして期待できることを示している。また、AlScN膜の堆積時に水素を導入し、残留酸素量を減らした場合はスイッチング回数を飛躍的に延ばすことができた。特にSc濃度の低いAlScN膜では、AlとScの組成比が0.85:0.15の場合に107回までの強誘電体スイッチングを確認することができた。このことは残留酸素によるSc-Oの結合が信頼性を損なう原因となっていることを示唆している。以上より、抗電界は高くなってしまうが、信頼性を確保するためにはAlScN膜のSc濃度を低減し、残留酸素も同時に低減する必要があるといえる。以上の成果より膜中の酸素とSc濃度のプロファイルを制御して低い動作電圧と高い信頼性を両立する構造を示していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的であるスイッチング回数の向上に関して、酸素原子とSc原子が関与していることが明らかになったため、さらに向上するための道筋が明らかになった。一方で薄膜化に伴って抗電界が高くなると信頼性を損なう原因となる。今回明らかとなったAlScN膜の下部界面付近における圧縮歪みの特定によって歪みを緩和する堆積プロセスを工夫する方針を構築することにつながるため、膜厚によらない一定の抗電界が実現できる可能性がある。ドーパントとして酸素原子をAlScN膜へ導入することで抗電界を低減できたことは動作電圧を下げるのに必要な技術である。高信頼性と低抗電界を両立するためには界面付近と膜中で酸素、あるいはSc濃度を変化させることにつながっており、本研究で目指す耐スイッチング特性を有するAlScN膜の実現に向けて前進したと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を元に、水素を導入した成膜や、酸素およびSc濃度を膜中で変化させたAlScN膜を試作して抗電界の低減技術とスイッチング回数向上技術の効果を確認し、10^9回を超える信頼性を得ることを目指す。
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