研究課題/領域番号 |
22K04241
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘明 静岡大学, 電子工学研究所, 助教 (00380113)
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研究分担者 |
猪川 洋 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (50393757)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 熱光学空間変調器 / SOI光導波路 / メアンダ型電熱回折格子 / 光フィルタ / 熱光学変調 / 回折格子 / 電熱線 / 集積回路 |
研究開始時の研究の概要 |
液晶分子を利用する既存の空間変調方式に対して、温度によって材料の屈折率が変化する熱光学効果を利用した空間変調器を検討する。研究代表者らが独自に研究してきた電熱線金属回折格子付SOI(silicon-on-insulator)光導波路の構造を空間的に配列し、所望の映像やビーム形状を出力できるような熱光学空間変調器を開発する。一般的な液晶ディスプレイと比較すると、25 倍の高速化が見込める。SOI集積回路技術が適用できるので、電熱線の駆動回路も含めた熱光学空間変調器の設計や作製が容易である。計画通りに進捗すれば、シリコンベースの新しい半導体デバイスを創出できる重要な研究課題と考える。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、代表者らが独自に研究してきた金属回折格子付SOI(silicon-on-insulator)光導波路構造における光学特性を発展させ、金属回折格子を電熱線として利用することで、光強度と位相の両方を空間的に変調できる熱光学空間変調器を開発することである。構造が簡素で標準的な半導体集積回路の作製技術を利用できること、変調器単体をチップ内に多数配列すると光強度や位相に空間分布を持たせられること、各材料の熱的材料定数によって予測される動作速度が速いことから、液晶分子を利用した既存の空間変調器に代わる新しい標準になりうる。従来の光学技術を飛躍的に高度化するような革新的な熱光学空間変調器の開発に挑戦している。 今年度は電磁界シミュレーションによって変調器単体のデバイス寸法や光入射条件等、光学的な条件について変調効果の性能を最大限に引き出す構造最適化を中心に検討した。その結果、温度100 Kの上昇に対して、変調器からの反射や透過のON/OFFを切り替えられる解析結果が得られ、位相としても最大で約250度の制御が可能と予測された。 また、デバイス試作の検討も進めた。デバイスに対して熱を効率的に供給するためには、熱散逸を抑制する構造が必要で、特にSOI光導波路構造の薄膜化が重要となっていた。今年度はこの薄膜化に関する作製条件を中心に検討し、深堀可能な反応性イオンエッチング装置を利用することで、適切な加工の条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きく分けて2つの成果が得られ、おおむね順調に進展したといえる。以下にその概要を示す。 (1)電磁界シミュレーションによるデバイス構造最適化と性能評価 変調器単体のデバイス寸法や光入射条件等、光学的な条件について変調効果の性能を最大限に引き出す構造最適化とその性能評価を行った。その結果、温度100 Kの上昇に対して、変調器からの反射や透過のON/OFFを切り替えられる解析結果が得られ、位相としても最大で約250度の制御が可能と予測された。
(2)デバイスの薄膜化に関する作製条件の検討 デバイスに対して熱を効率的に供給するためには、熱散逸を抑制する構造が必要で、特にSOI光導波路構造の薄膜化が重要となっていた。今年度はこの薄膜化に関する作製条件を中心に検討し、深堀可能な反応性イオンエッチング装置を利用することで、適切な加工の条件を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)動作速度とデバイス面積 矩形状パルス波形の電流を印加し、透過光や反射光の変調効果を測定する。周波数特性を分析し、動作可能な速度を明らかにする。想定しているデバイス寸法と材料の熱的定数によって予測した動作周波数は1.5 kHz である。目標達成度を明らかにするとともに、課題抽出やさらなる高速化への検討を行う。また、最初はデバイス面積を50 × 50μm^2 と設定して検討する。おそらくはデバイス面積と動作速度はトレードオフの関係にあるので、動作周波数の目標を1 kHz 以上と設定し、デバイス面積をどこまで縮小化できるかについて整理する。その上で、本研究の空間変調器としての解像度を明示する。 (2)動作可能な波長範囲 本デバイスは回折格子のピッチを変えることにより、導波モード共鳴が起こる波長を自由に選択できるので、三原色の熱光学空間変調器を実現するためのデバイス設計方法を検討し、実際に作製して目標達成度を明示して、課題抽出を行う。 (3)アレイ配列と電流駆動回路の設計 熱光学空間変調器を実現するために最も重要な項目である。SOI基板上に作製されたMOSFETの基本特性を測定し、回路シミュレーションに測定結果を組み込むことで、より高精度な設計を実現する。電流駆動回路に走査機能を与えることで、強度分布や位相分布を入力できるようにする。その上で単体の変調器をアレイ配列し、かつ電流駆動回路を同一基板上に組み込む。実現可能な解像度など、空間変調器としての目標達成度や潜在能力を明らかにした上で、今後の課題抽出を行う。
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