研究課題/領域番号 |
22K04242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山下 馨 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (40263230)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 圧電体 / 応力 / 座屈 / 変換効率 / 圧電 / MEMS / 歪み |
研究開始時の研究の概要 |
圧電体を検知部に用いるセンサや発電部として利用するエネルギー・ハーベスタ等,圧電効果を利用して機械・電気エネルギー変換を行う圧電MEMSデバイスにおいて,振動構造に静的座屈を導入することにより,非線形歪みの影響を拡大してエネルギー変換効率を向上することができる。本研究では,平坦な構造ではなく圧電体側が凸となる向きに静的に座屈することにより変換効率が飛躍的に向上するメカニズムを解明し,高性能化した圧電MEMSデバイスを自由に設計・作製するための手法を明らかにする。
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研究実績の概要 |
圧電効果を利用してエネルギー変換を行う圧電MEMSデバイスにおいて,振動構造に静的座屈を導入することにより変換効率が向上するメカニズムの解明と,高性能化デバイスの設計・製造手法を明らかにすることを目的とする。今年度は,ダイアフラム構造の座屈に際して生ずる圧電体への力学的負荷を考慮した新しい製造プロセスを試み,その新プロセスに対応して圧電層の形成途中に膜厚が段階的に増加することによる面内力の増加を考慮した座屈現象の定式化を進めた。 従来の座屈撓み量の算定式では平坦なダイアフラムが座屈する仮定で定式化されていたが,これを既に座屈している構造上へ積層する状況を扱うように定式化を拡張した。さらに下部電極の製膜条件を変更することで引張応力を低減できることを確認し,これを組み合わせることでさらに撓み量の増大が可能となることがわかった。一方で圧電体PZTの特性として,引張応力の強い(111)配向膜においてより高い圧電性が期待できることがわかっており,撓み量増大の観点と圧電体の性能向上の観点の両面から最適なプロセス条件を検討した。その結果,(111)配向比率が45%のPZT膜を用いることで最大約4.6倍の変換効率向上が見込めることが判明した。 これに対して,実プロセスにおいて座屈構造上への圧電体の追加製膜を実験的に実現するべく種々の条件により製膜実験を行ったが,スピンコート法を用いるゾル・ゲル製膜法では十分な歩留まりでデバイスを完成することができなかった。PZT薄膜は真空プロセスであるスパッタリング法による製膜も可能であり,これを用いると改良版プロセスでのデバイスを実現できる可能性がある。 また別の観点において,電圧を印加して電応力により変形したダイアフラムが,電圧印加停止後に形状が回復する時間が初期の座屈撓み量により異なる現象を発見し,この観点で,圧電薄膜の特性を評価できる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薄膜形成後の座屈により生じる圧電体への力学的負荷を考慮した新しい製造プロセスを検討したが,十分な歩留まりでデバイスを完成することができなかった点において,予定の進捗より遅れを生じている。一方で,外部からの電圧印加により生じる逆圧電応力を利用した評価方法についての知見が得られた点は当初予定していなかった観点であり,異なる方向での進捗が見られた。これらのことから,全体としてはやや遅れている状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
外部からの電圧印加により生じる逆圧電応力を利用した評価方法は今年度新たに得られた知見であり,デバイスの圧電体内部での状況を非破壊で検証できる可能性がある。また同様の考え方により,逆圧電応力によるデバイスの変形形状を評価することから,大撓みをもつ構造での変換効率低下の原因を追究する。
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