研究課題/領域番号 |
22K04243
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
陳 伝とう 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (50791703)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | Ag 圧粉材シート接合 / 低温短時間焼結 / 高放熱高耐熱実装技術 / 信頼性評価 / パワーモジュール構造 / 大面積基板接合 / Ag シート接合 / 短時間焼結 / 高放熱 / 低温低圧接合技術 / Ag粒子圧粉材 / 大面積接合 / 高放熱モジュール / 多素子実装 |
研究開始時の研究の概要 |
電気自動車用インバータをはじめとする高温高出力環境で使用されるパワー機器では、さらなる小型化省エネルギー化が望まれている。技術確立には、新たな高耐熱高放熱実装材料開発と実装プロセスのマッチングが鍵を握る。本提案ではAg粒子圧粉マイクロポーラスシートによる新たな低温低圧接合技術とプロセス開発を目指す。有機溶媒レスでAg粒子をポーラスシートに圧粉成形し、表面に一定の加工組織を導入し、新たな接合プロセスを開発する。多層多素子と大面積放熱構造接合まで適用し、次世代高放熱モジュールに適したデバイス設計、実装材料、モジュール化技術の高度化を図り、多素子多層モジュール化の理想的な実装技術を確立する。
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研究実績の概要 |
従来のSiデバイスの動作温度である150 ℃に比 べて大幅に高い極限環境の動作温度(~250℃)で信頼性を確保する必要がある次世代SiC超耐熱 実装において、新たな接合材料への開発が期 待される。特に、耐熱・放熱パフォーマンス が優れ、高電圧・大電流電力変換できる大面積チップ接合、セラミックス基板とヒートシンクとの大面積への接合材料の開発要求が高まってきている。 本研究では有機溶剤を利用せずにAg圧粉材シートを新規に開発し、低温短時間固体接合技術を実現する。2023年度にはミクロンフレーク状のAg粒子を用いて短時間熱圧で30mmx30mmのAgシートを作成し、その後にシートの両面に機械研磨することで、接合面にTi/AgスーバッタされたSiCと銅板に挟んで低温(200℃、250℃、300℃)短時間(1分、3分、5分)の熱圧プロセスで構造を実装した。結果としては、200℃、1分間の熱圧プロセスでもSiC/Agシート/Cu板の接合構造のせん断強度は40MPa近いになり、250℃、1分間実装する場合には、80MPa以上のせん断強度が得られた。 一方、EBSDで機械研磨されたAgシート表面と断面を分析した。Agシート表面に厚みがおよそ0.02mmの研磨層が形成され、結晶粒サイズが数100nmまで微細化されることが確認できた。また、XRDの分析で、研磨されたAgシート表面に20MPa程度の圧縮残留応力が検出された。この結果により、Ag圧粉材の表面にナノ結晶層と圧縮残留応力があるため、低温短時間でも界面相互拡散が進行でき、強固な界面形成できるとのメカニズムを解明した。また、大面積接合基板接合に向けて30x30mm2銅板と銅板の接合も行い、短時間で大面積接合でも接合界面が形成され、強固な接合が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、銀圧粉材の表面研磨により、200℃、1分間の熱圧プロセスでもSiC/Agシート/Cu板の接合構造のせん断強度は40MPa近いになり、250℃、1分間実装する場合には、80MPa以上のせん断強度が得られた。計画より非常に高い接合強度が得られた。また、EBSDやXRDなど研磨されたAg圧粉シートの分析を行い、研磨された最表面の結晶構造が微細化され、加えて表面に圧縮残留応力が形成されることにより短時間高強度接合可能となるとのメカニズムを解明した。これによって今後いろんな固相接合に対して低温短時間で界面接合が可能となり、新たな界面形成メカニズムの提案となり、実装技術に大きな参考となる。 また、大面積接合基板接合に向けて30x30mm2銅板と銅板の接合も行い、短時間で大面積接合でも接合界面が形成され、強固な接合が実現できた。計画通りに順調に進んでいる。今回新たに提案したAgシート接合技術は、耐熱と 放熱に優れるだけでなくコストパフォーマンスの魅力を有することから、SiCの能力を最大 限に生かすことが可能である。小型・軽量化・高出力モータ電源制御用インバータに向けて、 Agシートで低温大面積セラミックス基板への接合技術と最適化プロセス開発もできた。 今回パワー半導体が必要とする新たな実装に着手し、世界の他 のグループに先駆けて、 開発を進める基本的なアプローチが素材の各種現象の 根本を理解した材料設計であり、特に、大面積接合技術の開発においては、世界の 他 のグループより一段階早い先進性を有すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進め方について下記のように推進する。 1. 低温短時間接合されたSiC/Agシート/AMB基板構造の高温(250℃)信頼性と熱衝撃試験(-50℃~250℃)信頼性評価を行い、劣化特性を解明する。現在のAgペーストやCuペースト実装技術を比較し、優位性を証明する。 2. 銀シートでSiCチップと基板との接合、またセラミックス基板とヒートシンクとの接合も行い、短時間多チップの接合と多層接合プロセスと技術を開発する。 3. Ag圧粉シート表面研磨プロセスの手間が必要で、研磨なしのシートで接合を開発する。具体的には表面化学処理や、メッキなど実施することによりシート表面にナノ結晶構造を形成する。低コストの実装材料で大量生産が可能なシート接合技術を実現し、実用化にする。
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