研究課題/領域番号 |
22K04244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
相馬 聡文 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20432560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 量子コンピューティングアルゴリズム / 半導体デバイス / シミュレーション / ナノスケール半導体デバイス / 量子機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
情報通信技術を支えるシリコンCMOSトランジスタの微細化限界を克服するための新規デバイスのシミュレーションによる素子設計という重要な課題の中で,このデバイスシミュレーションを今後中長期的に更に効率化して行くことを目的に,量子コンピューティング技術を援用した革新的な半導体デバイスシミュレーション手法の開拓を行う.特に,ナノスケールデバイスシミュレーションにおいて中核的な計算であるポアソン方程式や非平衡グリーン関数の計算のための量子アルゴリズムを量子推定アルゴリズム,変分原理,機械学習的手法を併用する形で確立し,デバイスシミュレーションに向けた量子コンピュータ利用の中期的,長期的な展望を提供する.
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研究実績の概要 |
電界効果型トランジスタなどの種々の半導体素子の性能向上に向けては、シミュレーションによる性能予測とそれに基づくデバイス設計が不可欠である。その目的の為に、近年の量子コンピューティング技術の進展を如何に援用するかという開拓的研究は極めて重要である。 本研究課題ではそのような目論見のもと、半導体デバイスシミュレーションを目的としたゲート型量子計算アルゴリズムの実装研究を検討しているが、2022年度は、代表的な量子アルゴリズムの1つであるHHL(Harrow-Hassidim-Lloyd)アルゴリズムを、特に電極境界で電場がゼロであるノイマン境界条件の下での半導体ナノワイヤpn接合のポアソン方程式の求解に適用する事について検討した。ノイマン境界条件を実装するために提案した量子ゲート回路のモデルは、容量行列Aの隣接する固有値の等間隔性が重要な役割を果たす4サイトモデルにおいて従来の方法によって得られた解をうまく再現することが示された。更に、4サイトモデルに対しての検討を通じて、この基本的なアイデアは、行列Aの下位の固有値が可能な限り等間隔になる事を可能にする不均一グリッドを適切に設計することにより一般に2^nサイトモデルに直接適用できる事が期待され、その1例として8サイトモデルに対して適用した結果、実際に従来解法で得られた結果を再現する事が示された。この際、電荷分布の空間変化が緩やかである場合にこの手法がより優位性を持つ事も明らかにした。この手法においては、不均一メッシュを用いる事によりより少ないレジスタ量子ビット数での可能にしており、この事から、ノイズ耐性の面でも優位性がある事が期待される。また、上記課題を実施する上で、電荷分布を表現する入力量子状態を生成するための量子機械学習的手法についても実装し、この部分は今後の研究の展開において有用な準備検討となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において提示していた3つの課題:1.不均一メッシュを用いたノイズ耐性の高い量子ポアソンソルバーの提案、2.デバイス系の遅延グリーン関数に対する方程式に対する量子アルゴリズム提案、3.開放系時間依存シュレーディンガー方程式に基づく電気伝導計算のための量子アルゴリズム提案のうち、課題1について研究実績の概要で述べた成果を得、これはこの分野における重要な知見となる事、この成果を中心に招待講演含む学会発表、国際会議発表、論文発表を行った事、また、この課題を実施する上で詳細検討、実装した電荷分布を表現する入力量子状態を生成するための量子機械学習的手法は今後の課題2、3を進める上で重要な準備検討となっている事などから、本研究課題について概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で掲げた3つの課題のうち、2023年度は、デバイスの電流計算への応用に向けて、2つ目の課題である「デバイス系の遅延グリーン関数に対する方程式に対する量子アルゴリズム提案」について主に取り組む。ここで、遅延グリーン関数に関する方程式も線型方程式の一種として捉えることが可能であるため、2022年度の研究で得られた知見を踏まえて実施する。しかしながら、デバイス系に対する遅延グリーン関数の場合、閉じた系に対するハミルトニアンの固有値問題とは異なり電極に接続されていることに起因する自己エネルギーを考慮することが必要となる。一般にこのことが開放系の問題としての難しさとなるが、これまでの予備検討の中でこの自己エネルギーを表現するための量子ゲート回路をすでに検討しているため、この着想についてのさらなる詳細な検討とプログラム実装および結果の検証を行う。この中で、2022年度に知見を得た量子機械学習手法の応用についても検討する。更に、第3の課題である「開放系時間依存シュレーディンガー方程式に基づく電気伝導計算のための量子アルゴリズム提案」についても並行して取り組む。
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