研究課題/領域番号 |
22K04246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
川又 修一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50211868)
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研究分担者 |
宍戸 寛明 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80549585)
石田 武和 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (00159732)
林 正彦 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60301040)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 磁束分布測定 / SQUIDセンサー / プローブ顕微鏡 / 磁束ベクトル |
研究開始時の研究の概要 |
走査型SQUID顕微鏡は、超伝導体を用いた磁束センサーであるSQUID素子に接続された検出コイルを試料表面上で走査し、磁束密度分布を高感度で測定できるプローブ顕微鏡の一種である。これまでの装置では、磁束密度のz方向成分の2次元分布測定に限定されていた。 本研究では、互いに垂直方向に感度を有する3個の検出コイルを装備したSQUID素子を独自に設計・製作することで、磁束密度ベクトルx,y,z方向3成分の3次元分布を決定できる走査型3次元SQUID顕微鏡を世界で初めての計測装置として実用化する。
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研究実績の概要 |
走査型SQUID顕微鏡は、SQUID素子に接続された検出コイルを試料表面上で走査し、磁束密度分布を高感度で測定できるプローブ顕微鏡の一種である。従来の装置では磁束密度Z方向成分の2次元分布測定に限定されていた。本研究では互いに垂直方向な3個の検出コイルを装備したSQUID素子を独自に設計・製作することで、磁束密度ベクトルX,Y,Z方向3成分の3次元分布を決定できる走査型3次元SQUID顕微鏡を立ち上げる。従来の装置では測定に大量の液体ヘリウムを消費し測定時間も限られていたが、本研究では制振対策を施したGM冷凍機を用いて長期間にわたり連続計測ができるシステムを目指している。 今回、GM冷凍機を用いたクライオスタットの立ち上げ冷却試験を行い、素子および試料温度を3 K程度で維持し長時間測定ができることを確認した。クライオスタットは試料交換が容易になるようGM冷凍機を倒立させた設計にしている。独自に設計・製作して用意した2つの素子、すなわちXYZピックアップコイルがそれぞれ1巻コイルで構成されている素子とそれぞれが2巻コイルで構成されている素子について、クライオスタットに装着してI-VおよびV-Φ特性を測定し素子の動作確認を行った。さらに1巻コイルおよび2巻コイルそれぞれの素子を使用し、Nb薄膜を試料として磁束分布の測定を試みることにより、渦糸磁束を観測することができた。 一方、測定データから高解像度の磁場発生源画像を得るために、数値計算による逆問題解析処理を行うための計算プログラム開発も行っている。走査型SQUID顕微鏡の画像データからピックアップコイルの形状因子の効果を除いた磁場像を求めることは高解像度化における重要な問題である。3 次元ベクトル測定を目指す3個のピックコイルによる測定に対応できるように、従来の逆変換プログラムを改良しより効率的なアルゴリズムの開発を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クライオスタット冷却試験では、運転開始9時間後には素子ステージおよび試料ステージとも温度3.3 K程度まで冷却され長時間測定ができることを確認した。XYZピックアップコイルがそれぞれ1巻コイルで構成されている素子とそれぞれが2巻コイルで構成されている素子について、3CHのflux locked loop (FLL) 制御回路(Magnicon社)を用いて、I-VおよびV-Φ特性を測定した。試料ステージの走査にはAttocube社のピエゾ駆動ステージを用いている。測定はLabViEWプログラムにより自動化した。 その結果、1巻コイル素子ではXおよびYピックアップコイルの素子で、臨界電流が観測されるI-V 特性を確認し、磁束量子の周期で振動するV-Φ特性を確認され、素子の正常動作を確認することができた。しかしながらZピックアップコイルの素子では正常動作が確認されなかった。2巻コイル素子ではX、YおよびZ、3つのピックアップコイルの素子において、I-V 特性をおよびV-Φ特性の測定により素子の正常動作を確認することができた。 さらに各素子のV-Φ特性においてバイアス電流値を調整することにより動作点を設定した後、FLLモードにて1巻コイルおよび2巻コイルそれぞれの素子を使用し、Nb薄膜を試料として磁束分布の測定を行い、試料にトラップされた渦糸磁束を観測することができた。素子基板上におけるX、YおよびZコイルの間隔に対応してそれぞれのコイルによる渦糸磁束の観測位置がシフトしていることが確認された。冷凍機の振動による影響はほとんど見られず、防振対策は十分であることが確認された。 高解像度の磁場発生源画像を得るための数値計算による逆問題解析処理を行うための計算プログラム開発において、従来の計算を改良し画像の逆変換行列を特異値分解することで同等の逆変換アルゴリズムが得られることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
走査型3次元SQUID顕微鏡の装置開発において、引き続き独自に設計・製作することで用意した2つの素子、すなわちXYZピックアップコイルがそれぞれ1巻コイルで構成されているSQUID素子とそれぞれが2巻コイルで構成されている素子について、開発したクライオスタットに装着してI-VおよびV-Φ特性を測定することにより、素子の動作確認を行っていく。1巻コイル素子において、ZピックアップコイルのSQUIDの正常動作が確認されなかった原因を明らかにし、磁束分布測定に利用できるようにする。(川又、石田、宍戸 担当) Nb薄膜を試料として磁束分布測定を行うことにより、具体的に測定方法を精査する。一様なNb薄膜にトラップされた量子磁束を測定することにより、SQUID素子の校正を行うとともに、独立した1本の磁束量子における磁束密度ベクトルの3次元分布データを図式化する。また基板上にストライプ状のNb薄膜を用意し磁束分布測定を行い、Nbの分布を図式化できることを確認する。(川又、石田、宍戸 担当) 高解像度の磁場発生源画像を得るための数値計算による逆問題解析処理プログラム開発において、磁束の発生源である電流分布を再構成する数値解析により観測された磁場分布から発生源である磁化分布、および電流分布をより精密に決定できる逆問題解決型アルゴリズムの改良を行う。画像の逆変換行列を特異値分解することで,あるしきい値よりも小さな特異値を無視することによって、同等の逆変換アルゴリズムが得られることを示す。この方法では,逆変換行列は正方行列でなくとも良いので,複数のデータにも統一的に対応出来る利点がある。(林担当)
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