研究課題/領域番号 |
22K04266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐川 康貴 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10325508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アルカリシリカ反応 / コア / アルカリラッピング / 膨張 / ASR / 構造物診断 / 膨張率 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国では,主に高度経済成長期以降に建設された数多くのコンクリート構造物がストックされてきており,社会・経済活動を支えている.一方,アルカリシリカ反応(ASR)に起因するひび割れ等が数多く報告されており,補修の要否の判定や限られた予算での適切な補修工法の選定,補修順位の設定方法が課題となっている.そこで,本研究では,既存コンクリート構造物のコア採取によるASR診断法の確立に向け,膨張率の測定を主とする「物理的特性」に加え,ASRゲルの生成状況,アルカリ溶脱の影響などの「化学的特性」の評価の観点を取り入れ,ASR診断の精度向上に資する基盤的研究を行う.
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研究実績の概要 |
コンクリート構造物にアルカリシリカ反応(以下,ASR)が発生した場合,コアを採取し,促進膨張試験を行うことが多いが,現在の試験法にはコアの乾燥や膨張量の過小評価といった課題が残っている。これまでの研究で,アルカリラッピング(以下,AW)が供試体の乾燥とアルカリ溶脱の抑制に有効であることが示されている。上記に対する解決策の一つとして,コアの促進膨張試験にもAWを適用することが考えられる。そこで,コンクリート柱部材を模擬したブロックからコアを採取し,そのコアを用いて促進膨張試験を行い,AWや寸法等がコアの膨張挙動に及ぼす影響を調べた。結果の概要を,以下に示す。 直径100mmのコアを用い,AWの有無の影響を比較した結果,AW無しでは,密閉容器内で湿状態空に保存しているのにも関わらず,初期にコア表面が乾燥し,その後も十分な水分の供給が無く,膨張率が過小評価された。よって,既往の代表的な手法である JCI-S-011-2017ではコアが乾燥してしまう問題があるが, AWによりこの問題を解決できることが明らかとなった。また,直径100mmと50mmのコアを比較した場合,直径50 mmの膨張率が大きくなった。これは,50mmの方が相対的に表面積が大きく,ASRの反応に必要な水分がコアに十分供給されたことが要因の一つとして考えられる。一方,材料の不均一性に起因すると考えられる膨張率の測定値のばらつきが認められた。AWを用いたコアの促進膨張試験はASRの膨張特性の把握には有効であることが結論付けられたが,寸法や鉄筋拘束の影響,さらには,AWのアルカリ濃度の設定方法については引き続き検討を重ねる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASRが発生した構造物に行う試験の一つとして,JCI-S-011-2017があるが,この方法では,試験期間中のコアからのアルカリの溶出の影響を受けやすい,と言われているが,定性的な指摘にとどまっている。これに対して,今年度の研究の結果,コアの促進試験の結果,アルカリラッピングの有無による差が明らかとなった。促進試験により膨張率等の物理的特性を明らかにしたことは,当初の計画の通りであり,本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ASRを生じる(あるいは,生じている)コンクリートから採取したコンクリートの物理的特性について,劣化進行段階が促進膨張率に及ぼす影響,鉄筋の拘束度が解放膨張率に及ぼす影響,コア採取方向の影響について調べるとともに,コア内部のひび割れの定量化に取り組む。また,化学的特性について,アルカリシリカゲルの生成や流出の状況の把握に取り組む。これらを通じて,アルカリ溶脱を抑制したコア促進試験方法の提案ならびにASR診断の精度向上に資する研究を行う。
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