研究課題/領域番号 |
22K04284
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
深田 宰史 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (10313686)
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研究分担者 |
上野 敏幸 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30338256)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ケーブル / 張力 / モニタリング / 振動発電 / 張力部材 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで,ケーブル構造を有する既設橋梁において,ケーブル張力を日々管理してこなかったのが現状である.IoT技術が発達した現在,ケーブルなどの引張部材における張力を簡易に管理できる方法があれば地方自治体の維持管理に大きく貢献できると考えた. そこで本研究では,電源が容易に確保できない橋梁現場において,長期間,ケーブルなどの引張部材における張力をモニタリングできる振動発電デバイスおよび無線ユニットを開発する.また,地方自治体と連携し,道路管理者が維持管理に役立つ張力モニタリングシステムを構築する.
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研究実績の概要 |
今年度は,効率的な発電ができる対象振動数の検討および蓄電量の予測について検討を行った. ①効率的な発電ができる対象振動数の検討について 本研究では,モニタリングしたデータを無線送信するため,必要な電力を考慮してデバイスのサイズを検討しなければならない.ケーブル振動の場合,ケーブル長に応じて振動数が低いものから高いものまで振動が卓越する.本発電デバイスが効率的な性能を発揮する振動帯は15-20Hzであるため,どのような振動が日々の状況で卓越しているの調べることにした.その結果,車両走行時において,車両のばね下振動数に近い15Hz付近の卓越振動数が最も卓越しやすいことが明らかとなった.この振動数域で最も効率よく発電性能を発揮する本発電デバイスを選択し,対象振動モードの腹に設置できれば,発電効率をさらに上げることができることがわかった. ②蓄電量の予測について 橋面上を大型車両が走行しているときのケーブル振動の状態を予測できれば,振動発電デバイスが効率よく発電する設置場所を決めることができる.また,将来の蓄電量の予測にも活用することができると考えた.そこで,橋梁および車両を数値モデルに書き換え,橋梁モデル上に車両が走行した際のケーブル部材の振動状況を実験と解析で比較した.なお,車両走行による動的応答解析では,橋梁上の路面凹凸が再現性に大きな影響を及ぼすため,本研究では,3mプロフィルメータを用いて,実橋上の路面凹凸高さを計測した.また,走行車両の諸元(寸法,重量,ばね定数,減衰係数など)については,様々な車両が実際に走行しているため,パラメトリックに扱う必要があるが,ある程度,実測と類似したケーブル振動波形を解析的に得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における研究計画は,以下のようになっている. ①実橋梁におけるケーブル振動の計測(2022年度,深田),②ケーブル振動により発電,蓄電できる振動発電デバイスの開発(2022-2023年度,上野),③モニタリングした張力量の管理基準(しきい値)の検討(2023年度,深田),④地図上でアラートを表示できるシステムを構築(2024年度,深田).これに対して,各進捗状況は以下のようになっている. ①については概ね達成でき,本学の近くにある金沢市が管理するエクストラドーズド橋,朝霧大橋の斜材ケーブルを対象としたケーブルの振動実験を行った.ケーブルに加速度計を設置して人力による加振試験を行い,各ケーブルの卓越振動数を調べた.また,計測した1次の卓越振動数を用いて簡易推定式により張力を求め,5%以内の精度で張力を推定できることを明らかにした. ②について,効率的な発電ができる対象振動数の検討と蓄電量の予測の観点から研究を行った.効率的な発電ができる対象振動数の検討として,本発電デバイスが効率的な性能を発揮する振動帯は15-20Hzであるため,どのような振動が日々の状況で卓越しているの調べた.その結果,車両走行時において,車両のばね下振動数に近い15Hz付近の卓越振動数が最も卓越しやすいことが明らかとなった.また,蓄電量の予測については,橋梁および車両を数値モデルに書き換え,橋梁モデル上に車両が走行した際のケーブル部材の振動状況を実験と解析で比較した.その結果,ある程度,実測と類似したケーブル振動波形を解析的に得ることができた. ③について,対象としたエクストラドーズド橋の死荷重時の張力変動を監視することが有効であると考え,死荷重が分担する張力をもとにした段階的なしきい値を設定することにした.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の計画は,地図上でアラートを表示できるシステムを構築することになっている.この計画に対して,2024年度の推進方策およびその課題を以下に列挙した. <推進方策> 今後は実績を増やして地図上でアラートを表示できるシステムを構築することを計画している.これは,日々モニタリングしたケーブルの卓越振動数から算出した張力に対して,これまでに検討した管理基準に照らし合わせ,アラートを地図上で表示できるシステムを構築するものである. <課題> 運用上の問題点が生じている.常時設置したときの一般交通への安全対策について,道路管理者から求められているものである.ケーブルに設置した発電デバイスが,突風など何らかの予期せぬ外乱により,一般交通や歩行者に接触するかもしれないため,常時運用の許可が下りない状況となった.そこで,1-2日でも監視者を付けた状態でモニタリングすることで発電効率の評価を行う計画に変更した.また,場合によっては,歩道橋を対象とする場合も考えられ,ケーブル振動だけでは電力が賄えない場合は風振動とのハイブリッド化や太陽光とのハイブリッド化を検討する.
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